日本共産党

2002年8月1日(木)「しんぶん赤旗」

脱線事故重ねる アムトラック(全米鉄道旅客公社)

財政難で保守作業削る


 【ワシントン30日坂口明】二十九日午後にワシントン郊外で起きたアムトラック(全米鉄道旅客公社)の列車脱線事故は、国家運輸安全委員会(NTSB)が事故原因の調査を開始しました。発足以来最大の危機で運行停止や経営破たんの恐れに直面するアムトラックに、度重なる脱線事故は暗雲を投げかけています。


 今回の事故では、列車は時速六十―七十マイル(九十六―百十二キロ)の制限速度以下で走っていたとされており、三六度の猛暑によるレールの変形が脱線を招いたかどうかに関心が集まっています。列車機関士は事故直前に前方の線路の損傷に気付いたといいます。

2階建て車両

 事故現場は四十五分前に、重さ九百トン近い九十両編成の貨物列車が通過していました。脱線した列車は、機関車や荷物車を含め十四両編成。先頭のディーゼル機関車二両や後部の一階建て車両は、脱線したものの横転を免れており、横倒しになった六両はいずれも、寝台車などの二階建て車両です。

 四月にフロリダ州で起きたアムトラックの列車脱線事故でも、重量の大きい長大貨物列車が通過した後に二階建て寝台客車が脱線し、四人が死亡、百六十人以上の負傷者が出ました。

 各国の二階建て車両の多くは中二階的な高さですが、アムトラックのスーパー・ライナーと呼ばれる二階建て客車は、極めて背の高い車両。重心が高くバランスを崩しやすい可能性が考えられます。今回の事故では乗客の六割強の百一人が負傷しました。二階建て車が横転していなければ、犠牲者は減った可能性があります。

事故車直せず

 アムトラックは財政難で事故車両も修理できない状態。この事情が安全確保に影響したかどうかも問われることになりそうです。ノートン下院議員は、アムトラックの脱線事故が一九九七年から26%増加したと指摘。保守点検作業の縮小や貨物列車の長大化を要因として示唆しています。

 アムトラックは財政破たんで列車本数の削減を強いられる事態に直面していますが、脱線車両の増加で客車のやりくりがつかなくなり、財政破たん以前に、編成短縮や列車本数削減をせざるをえない状況に追い込まれています。

 


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