2002年7月30日(火)「しんぶん赤旗」
二十九日に政府が示した沖縄・辺野古沖の米軍新基地の基本計画案は、「基地のない平和で豊かな沖縄を」という県民の切実な願いを踏みにじるものです。(田中一郎記者)
今回の基本計画案が示す基地は、全長約二千五百メートル、幅約七百三十メートル、面積百八十四ヘクタール。九七年の名護市民投票でノーの審判がはっきりと下されたときの政府案の二倍以上もの大きさです。東京ドームと比較すると、約四十個分にあたります。
政府が昨年六月に示した三工法八案の基地建設案には、基地建設容認派の地元・辺野古区の行政委員からも「こんなに大きいとは思わなかった」と異論が続出。昨年十二月に開かれた前回の「代替施設協議会」で、岸本市長は規模について「縮小の検討をしてほしい」とのべましたが、実際には三工法八案よりわずか約百四十メートル短くなっただけ。巨大なことに変わりはありません。にもかかわらず、稲嶺知事や岸本市長は今回、なんの抗議もしないどころか、「ぎりぎりの線」(稲嶺知事)とのべ、政府側の「努力」を評価し、政府追随ぶりを示しました。
政府が示した建設位置は、サンゴ礁の浅瀬であるリーフ(環礁)の真上。そこを埋め立てようというのですから、とり返しのつかない最悪の環境破壊をもたらす恐れがあります。
防衛庁が今回示した資料でも、九七年調査で確認されたサンゴの約九十七ヘクタールが、埋め立てによる「人工地盤」をつくるために死滅する危険があるとされています。
さらに懸念されるのは藻場への影響です。
藻場は、国際保護動物で天然記念物のジュゴンや付近の魚などのえさ場です。辺野古沖は、沖縄本島でも有数の藻場が豊かなところです。
防衛庁の資料でも、約四ヘクタールの藻場が死滅するおそれがあるとされています。その「保全措置」として政府が示すのは、藻場の移植ですが、防衛庁資料でも、その方法について「確立された手法がない」といわざるをえません。つまり、現在の技術では、失われる環境を維持する方法はないのです。
建設位置は、地元の辺野古集落からわずか二・二キロしか離れていません。
昨年十二月の同協議会直後、岸本名護市長は、建設容認派を含む地元の要望について「できるだけ遠いところにという意見が圧倒的」といわざるをえませんでした。それは沖縄県民のだれもが、基地ができれば、米軍機の墜落事故や騒音が絶えないことを知っているからです。
しかし、集落の中心からわずか二・二キロ、一番近い所からは約一キロの場所に巨大基地が建設されるのでは事故や騒音の危険は現実のものとなりかねません。今回の基地計画には、政府も県も市も、いかに地元住民に耳を傾けるつもりがないかが、あらわれています。
今月にも名護市では、農作業中の男性の至近距離に米軍演習の銃弾が撃ちこまれた事件が発生したばかり。
基地が過密する沖縄には、これ以上、新基地を建設する場所などありません。