日本共産党

2002年7月21日(日)「しんぶん赤旗」

原爆症の認定が少ないのは?


 〈問い〉 被爆者手帳を持つ被爆者が三十万人近いのに、原爆症に認定されたのは二千人しかいないと聞きました。どうしてこんなことが起こるのですか。 (愛知・一読者)

 〈答え〉 原爆被害者の被爆による負傷や疾病を国の責任で治療することは、旧原爆医療法やいまの被爆者援護法に定められています。ところがこの治療を受けるには国に認定を受ける必要があり、その枠が厳しいためにこれまでごくわずかしか認定されていません。昨年、政府は認定にあたっての新しい指針を決めましたが、いぜん多くの被爆者が認定を却下されています。

 この厳しい認定は、非人道的な兵器を使用したアメリカの国際法上の責任も問わず、原爆投下に至る戦争を遂行した日本政府が被爆者に国家補償することも拒否してきた、歴代自民党政府の姿勢と一体のものです。

 これまで多くの被爆者が、原爆症の認定を却下されましたが一人ひとり理由は示されませんでした。裁判などを通じて、とくに近年の政府は原爆症の認定を、爆心地から二キロ以内の被爆者の、特定の疾病に限定してきたことが分かっています。二キロ以遠の被爆や原爆投下後の入市被爆は切り捨てるうえに、爆風・熱風・放射線の影響が複合して爆心地からの距離だけでは決まらない原爆被害の実態とかけ離れたものです。

 二〇〇〇年七月、国の認定のしかたの不当性を告発した長崎原爆松谷裁判の最高裁判決は、原爆被害の実態を見ず一つの方式を機械的に適用する国を批判し、国の上告を棄却しました。

 これに対し、昨年五月に政府がきめた新しい認定の指針は、「原因確率」という統計的数値を用い、一定の値に達しない被爆者を切り捨てるものです。二〇〇一年度の原爆症認定率は26%と、前年度の54%から大きく低下しています。

 いま政府に求められるのは、二度と原爆の使用を許さない被爆国の決意を示し、被爆者救済を基本に「疑わしきは認定」の立場で認定方法を抜本的に改善することです。

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 〔2002・7・21(日)〕

 


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