2002年7月16日(火)「しんぶん赤旗」
携帯電話を悪用した「〇九〇金融」とよばれるヤミ金融が福岡県など九州北部で横行しています。出資法の上限金利(年利29・2%)を超え、週一割〜五割といった法外な利息を取り立てます。「ヤミ金融のまん延は暴力団の資金源につながる」(福岡県警)ものであり、対策にあたる弁護士らも「貸金業者というより犯罪者集団」と、警戒をよびかけています。(西部総局 藤原 直記者)
「即日融資」「法定金利」「ブラックOK」こんなうたい文句に太字で書かれた携帯番号―。福岡市内のあちこちで見られる張り紙や看板です。営業所の所在地はおろか、社名も書かれていないものがざら。大半が無登録や出資法違反の違法業者です。
こうした〇九〇金融の業者は、店舗を使いません。電話を受けると、路上などで客と落ち合い、車に乗せて、書類に借り手や親類の連絡先などを書かせる仕組みです。
ほとんどが数万円の小口融資ですが、「手数料」「前利息」といった名目で、当初から何割かの金が引かれ、そのうえ、十日で三割(「トサン」)などの違法な暴利を取られるため、一度借りると返済額は雪だるま式に増えてしまいます。
「福岡クレジット・サラ金被害をなくす会」(ひこばえの会)の相談では、ヤミ金融だけで十社以上という人は珍しくなく、八十社から借りている人もいるといいます。
取り立ても暴力的。相談に来る人のなかには、カッターナイフを首筋に突きつけられた男性や、車で連れ去られそうになり、飛び降りて逃げた女性も。弁護士らの話では、深夜の取り立ても当たり前で、自宅のカギを取り上げられているケースもあるといいます。
同会に寄せられたヤミ金融にかかわる相談は、昨年六十六件でしたが、今年は、六月末時点ですでに百三十件を超えています。
県経営金融課の貸金業係でも、無登録金融にかんする相談が二〇〇〇年度の六十三件から〇一年度の二百二十件まで急増。同係は「県登録業者にたいしては、苦情があった点について事実を確認したり、指導もしている」といいますが、無登録業者についてはほとんど警察任せです。
その警察は「現場によって対応はバラバラ」(多重債務問題に取り組む弁護士ら)で、暴力的な取り立てをうけた被害者からは「民事不介入」を理由に警察官がまともに対応しなかったという苦情も。
被害者団体や、それと協力する弁護士、日本共産党県議らは、県警本部総務部長の「違反行為は事件化を図る。事件化にいたらない相談でも真しに受けとめる」(三月十九日、日本共産党の八記博春県議の質問で)との県議会答弁も引用しながら、各署に取り締まりの強化を求めています。
ひこばえの会相談員の亀川陽子さん(62)は「ヤミ金融はもともと違法な業者。少なくとも法定金利以上は、まったく払う必要はない。すでに過払いになっている人も多く、お金を取り戻すとりくみもすすめています」と話します。