日本共産党

2002年7月11日(木)「しんぶん赤旗」

700万年前ごろの人類祖先

アフリカ中央部 化石をチャドで発見


 アフリカ中央部のチャドで、七百万年前ごろ生きていた最古の人類祖先のものとみられる頭骨などの化石が発見されました。同国やフランスの人類学者らのグループが、十一日発行の科学誌『ネイチャー』に発表しました。

 発見したのは、フランス・ポワティエ大学のミシェル・ブルネ博士を代表とする「フランス―チャド古人類学調査隊」の研究グループ。チャド北部のかつて湖だったところで堆積(たいせき)した砂岩の中から、ほぼ完全な頭骨一つと、下あごの断片二つ、それに三本の歯を発見しました。いっしょに見つかったカバやゾウなどの化石の進化の様子から七百万年前ごろのものと推定されました。

 脳の容量は約三百五十ミリリットルで現在のチンパンジーとほぼ同じでした。しかし、歯や顔の形などがチンパンジーやゴリラよりも、後の時代に出現する人類祖先により近い特徴をもっているとして、グループは新属新種の人類祖先と判断しました。この化石は、現地のことばで生命の希望を意味する「トゥーマイ」と名づけられました。従来、古い時代の人類の祖先の化石は、アフリカ東部のリフトバレーで見つかっていましたが、チャドは二千五百キロメートルも離れており、この点でも注目されています。


頭骨など特徴人類に近い

 諏訪元・東京大学総合研究博物館助教授の話 この時代の頭骨がほぼ完全な形で見つかったこと自体、すばらしい大発見といえる。頭骨などの特徴が、チンパンジーやゴリラのような類人猿側でなく人類側だという判断も正しいと思う。二足歩行をしていたかどうかを判断する決め手になる化石がまだ出ていないので、今後の発見に期待したい。

 年代については、動物の化石をもとに判断しているが、この時代の動物化石の年代については、まだ議論が確定していないので、ほんとうに七百万年前なのか、それとも六百万年前なのか、もっと若いのか、ある程度の幅をみて考えた方がよいだろう。


解説

700万年前の人類祖先化石 初期人類の分布広く

 人類の進化に関する研究は、最近の相次ぐ化石の発見によって大きく進展しています。とくに、原人より前の時代にさまざまな種類の猿人が存在していたことがわかってきました。

 近年、特に顕著なのは、人類が類人猿から分かれたばかりのころの発見です。東京大学総合研究博物館の諏訪元・助教授らが一九九四年、エチオピアで四百四十万年前に生息していたラミダス猿人を発見。それ以後、二〇〇〇年にフランスなどのグループがケニアで六百万年前のオロリンを、二〇〇一年にはエチオピアや米国、日本などのグループがエチオピアで五百七十万年前のカダバ猿人(ラミダス猿人の亜種)を、それぞれ発見しました。

 今回の発見は、それよりさらに古い時代に、しかもこれまでオロリンやカダバ猿人が発見されていたアフリカ東部のリフトバレーから西へ二千五百キロメートルも離れたところで人類が出現した可能性を示すもので画期的です。

 諏訪助教授は、「今回の発見で、人類がチンパンジーの祖先から分かれて出現したころには、すでに相当広い範囲に生息していたことが明らかになった」と話しています。(間宮利夫記者)

 


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