日本共産党

2002年7月8日(月)「しんぶん赤旗」

航空業界 企業再編加速へ

規制緩和の“旗振り役”エアドゥ破たん

安全低下、リストラを促進


 「道民の翼」として登場したエアドゥ・北海道国際航空が負債総額五十八億円を抱えて破たんし、六月末に東京地裁に民事再生法適用を申請しました。九八年十二月の就航からわずか三年半。自由競争の名のもとにスカイマークエアラインズとともに規制緩和の“旗振り役”を担ったエアドゥを破たんに追い込んだ原因と背景を追いました。(米田 憲司記者)

 道内の中小企業経営者らがエアドゥを創設したのは九六年十一月。北海道の自立意識を背景にベンチャー企業として札幌を中心にした道民の期待を担っていました。

 札幌〜東京間は年間九百万人の利用者があり、世界有数のドル箱路線です。エアドゥは当時、大手の二万五千円に対し、航空法では認められない36%安の一万六千円の低運賃を設定。が、業績が好調だったのは、大手三社が対抗措置として低運賃で追随してくるまでの三カ月程度にすぎませんでした。その後、運賃は二万円になり、現在は二万三千円です。

整備を委託

 東京〜福岡間を運航しているスカイマークエアラインズも、経営状態はエアドゥと同様です。ただ、スカイマークは旅行会社のエイチ・アイ・エス(HIS)が親会社として存在しています。

 航空産業はいわば「装置産業」です。一定の機材や路線網とともに、整備、運航、営業等のノウハウを駆使して成り立っています。競合路線を低運賃にしても全体で採算は合います。そこに機材はリース、整備は他社まかせ、社員の多くは契約、営業だけは自社という企業が参入したもの。かつての航空法ではできなかったものですが、法改正してまで参入させたことが根本問題としてあります。運航トラブルも多く、国土交通省(旧運輸省も含む)から三回も厳重注意されています。

 エアドゥ破たんの原因については、大手に対抗できない企業体力のなさや経営者の見通しの甘さが指摘されています。さらに、空港の発券カウンターの場所が分かりづらい上、バスに乗らなければ航空機に搭乗できない、整備を他社に委託しているために定時発着が守られないなど、乗客が遠のいた要因もあげられています。

運賃の自由化

 扇千景国土交通相は、“弱者いじめ”として大手の対抗値下げ策を批判していますが、自由競争の名のもとに運賃の自由化を促進させてきたのはほかならぬ政府自身です。空港施設を公平に利用させる行政指導も不十分でした。

 航空労組連絡会の役員は「破たんは初めから予測されていたこと。航空各社は競争力強化と効率的経営をめざして規制緩和を進めてきましたが、その中身は低コスト政策による徹底した人べらし『合理化』であり、安全規制の緩和と相まった安全性の切り下げでした。結果として、新規参入社は規制緩和の先導役として航空全体の安全性を後退させ、リストラ促進の環境づくりを担わされた」と指摘。「破たんは規制緩和路線の一つの破たんですが、企業再編の一過程にすぎないでしょう。今後は国内でも本格的なコードシェア(共同運航)や運航業務の『管理の受委託制度』(親会社と子会社間での路線や機材の移管、乗員の出向で効率をあげる方法)が拡大されていくことになるのでは」といいます。

 道内ではエアドゥに対して、利用しない地域の道民や経済界の反応は概してクールです。新社長を送りこんだ道は、すでに三十八億円の支援をしていますが、議会も今では「会社の体をなしていない一企業を道が丸抱えで面倒を見るのはおかしい」という意見が大勢を占めています。

責任大きい道と経営陣

 日本共産党の大橋晃道議の話 ぜい弱な経営基盤の上に道などの支援に依存してきたやり方が破たんしたことになります。経営陣と道の責任は大きいし、道民の税金から融資された部分については再生計画において保全すべきです。

【注】エアドゥ再生計画

 今後三カ月をめどに「再生計画」を裁判所に提出。資本金七十二億円を九割以上減資した後、三十億円程度増資。支援を表明している全日空は、エアドゥとの「覚書」でコードシェアや販売提携、予約システムの共通化、機体整備、乗員の訓練等を受け持つ予定。資本参加は20%未満でエアドゥ新会社の資格を失わない範囲としています。

 


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