日本共産党

2002年7月8日(月)「しんぶん赤旗」

「5増5減」案 審議始まる

「一票の格差」是正いうが

小選挙区制が持つ弊害


 政府が今国会で成立をめざす衆院小選挙区の区割りを見直す公職選挙法「改正」案、いわゆる「五増五減」案の審議が五日、衆院倫理選挙特別委員会で始まりました。二〇〇〇年の国勢調査にもとづく衆議院議員選挙区画定審議会の答申を受け、一票の格差是正を目的にするもの。同日の審議では、小選挙区制の弊害が浮かびあがりました。(鈴木誠記者)

致命的欠陥―二倍以内の目標達成できず

 政府案の致命的な欠陥は、一票の格差を「二倍以内」とする目標が達成できなかったことです。一人一票の原則を守り、「法の下の平等」を担保する最低限の基準が守れなかったのです。

 一九九〇年の国勢調査をもとにつくられた現行の区割りは、二〇〇〇年調査でさらに格差が拡大しました。最大格差は二・五七三倍で、格差二倍以上の選挙区は九十五に増えており、是正は待ったなしの課題でした。

 ところが、政府案では兵庫六区と高知一区との間の格差が二・〇六四倍。格差二倍以上の選挙区は九にのぼりました。

 五日の委員会で、日本共産党の大幡基夫議員は、二十都道府県・六十八選挙区という大規模な見直しをおこないながら、目標が達成できなかったことをあげ、「小選挙区制のもとでは、二倍以内の格差是正ができないということを示している。小選挙区制の破たんを示したのが今回の区割り法案だ」と指摘しました。

 もともと、小選挙区制を衆院に導入した際、政府は「政権交代が可能になる」「政治にカネがかからなくなる」ことと同時に、「一票の格差是正が容易」を理由の一つにしていました。ところが、実際には十年ごとの国勢調査のたびに区割りの大規模な見直しを迫られ、それがまた別の矛盾を引き起こしているのです。

格差是正と市区分割せずの原則が衝突

 衆院選挙区画定審議会の区割り作成の基準は(1)格差二倍以内(2)市・区町村、郡は分割しないというもので、これが大原則でした。

 しかし、この両原則が各地で衝突。新たに相模原市など全部で十六市・区が分割され、前回の十五市・区を上回りました。

 生活圏、交通圏、歴史的事情を無視した区割りには各地で大きな批判がまきおこっています。

 五日の審議で総務省の大竹邦実選挙部長は「数字合わせのご批判はあるかもしれない」。片山虎之助総務相も「いろんな問題点があることは事実」とのべるなど、区割り案に問題があることを認めました。

 たとえば、議員一人あたり人口が全国最小となる高知県。三選挙区を二十七万人台で均等に分けないと、全国との格差がますます拡大するため、高知市南部を切り離し、二区と合体させました。地元紙は「身勝手な数合わせ」「区割り変更に戸惑い、憤り」と批判しました。

 高知の次に最小の徳島県でも、「格差縮小」を名目に一選挙区あたり人口が均等になるよう、美馬郡が吉野川を境に南北に分断されました。徳島県議会は「地勢、交通、地域間のつながり等を無視し、1票の格差是正に重きをおくだけでは、各選挙区における有権者の連帯感を益々阻害し、ひいては政治不信にもつながることが懸念される」と全会一致で意見書をあげました(二〇〇一年十二月)。

 北海道では道北圏が三つに分割。新たに、北端の礼文島から知床半島のある斜里町まで、距離にして「六百キロ。東京から新神戸まで」(自民党議員)という広大な選挙区が生まれました。

 結局、小選挙区制のもとでは、格差二倍以上の是正と、市・区分割はしないという原則が両立しません。矛盾の根本には、民意を正確に反映しないという小選挙区制の制度自身が持つ致命的な欠陥があるといえます。

 


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