日本共産党

2002年7月4日(木)「しんぶん赤旗」

パキスタン・ムシャラフ政権

対米協力 深まる矛盾

対インド イスラム勢力を利用

アフガンで対テロ戦争に参加


 【ニューデリーで小玉純一】インドと開戦前夜になったパキスタンのムシャラフ政権。「仲介」役の米国に、イスラム武装勢力のインドへの越境を恒久的に止める約束をして、危機を回避しました。米国の「反テロ」戦争協力=親米路線に対する国内の反発ともあいまって、ムシャラフ政権の骨格が揺さぶられ、米=パキスタン連携体制そのものに大きな影響を与えかねない情勢です。


 パキスタンのムシャラフ政権にとって、インド側カシミールでインド軍支配とたたかうイスラムの人たちへの支援は、譲れない一線です。イスラム武装勢力の越境阻止という対米公約は、米国の圧力のもと、カシミール問題を「反テロ」と位置づけたインドの要求をのんだ格好になりました。急進的なイスラム団体から、「ムシャラフは反イスラム」というらく印を押されかねない事態です。

 ムシャラフ大統領は六月二十八日、防衛学校で将校らを前に「カシミール問題に妥協はない」「国益がかかる問題だ」と強調。米誌『ニューズウィーク』七月一日号では、イスラム武装勢力の越境を恒久的に止めるとは言ってない、と発言しました。国内の反発を避けたい思惑がうかがえます。

 もともとパキスタンの軍や情報当局については、イスラム過激派・武装勢力とのつながりが指摘されてきました。最近でも、パキスタン軍がイスラム武装勢力のインド側支配地域への越境を阻まなかったという報道もあります。

 他方、ムシャラフ政権はアフガニスタン国境方面・部族地域で、国際テロ組織アルカイダやタリバンの残党が潜んでいるとして、米軍を後ろ盾に掃討作戦を強化しています。これに対してイスラム原理主義の指導者が、「米軍との作戦が続くなら現地住民の反発が手に負えなくなり、暴動の可能性もある」として政府に警告したとの報道があります。また、ムシャラフ政権は六月十四日のカラチの米領事館付近のテロ事件などから、アルカイダとつながるイスラム過激派の取り締まりを強化。これへの反発もイスラム過激派に強まっているともいわれています。

 ムシャラフ政権は、昨年九月の同時多発テロで、米軍の「反テロ」戦争協力の道を選択。その際の取り決めは、兵たんと負傷兵輸送での空港の使用、領空通過、情報協力などでした。米軍との共同作戦を、パキスタン領土内で行うことは、対米軍協力のいっそうの拡大とみなされるでしょう。しかも、報道によれば、近く、米軍とパキスタンの陸・海・空軍との共同演習も行われます。果てしない対米軍協力の道が国内世論の反発を招くことは必至です。

 ムシャラフ政権は六月二十六日、大統領の権限を強化し議会と首相の弱体化をはかる憲法改定案を発表しました。今年十月の総選挙後の軍事政権の安定化が狙いですが、思惑通りすすむかどうか、パキスタン国民の平和と民主主義擁護のたたかいが行方を決めます。

 


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