日本共産党

2002年7月3日(水)「しんぶん赤旗」

有事法案

韓国で強い警戒心

日米の“軍事分業”がアジアの平和壊す

ソウル大学教授 金晋均さん


 有事法制を整備し「戦争ができる国」づくりに突進しようとする日本政府の動きは、かつて日本による侵略と植民地支配を受けた韓国で強い警戒心を呼んでいます。軍縮・平和問題の専門家として知られる金晋均・ソウル大学教授がこの問題で、本紙インタビューに応じ、また韓日民間共同フォーラム「米・日の覇権戦略とアジアの平和」(六月二十一日、ソウル)で発言した要旨はつぎの通りです。(ソウルで面川誠)

 日本の軍事力強化は、米国を頂点として日本と韓国を北東アジアのミサイル防衛(MD)網で結びつける軍事体制の一環です。MD体制に北朝鮮、中国などが抵抗し始め、こうした対立が朝鮮半島周辺に戦争の危機を作り出しています。

 日米軍事同盟の共同作品となるMDは、中国と北朝鮮の領空をカバーするでしょう。したがって、アジアの空を支配するための日米軍事共同体と中国の対立が予想されます。すでにアジアには、十万人の米軍が駐留し、中国と北朝鮮に銃口を向けているのです。

 日本の有事法制は、資本・軍事・政治の要求にしたがって進められています。海上の輸送ルートを確保するために、「グローバル化(世界化)した日本資本を常備軍としての自衛隊が守らなければならない」ということです。

平和憲法を脅かすもの

 自衛隊はブッシュ政権が進める「戦争のグローバル化」を後方支援するだけでなく、積極的に参戦し、集団的自衛権を行使することが日本の資本と国家権力にとって有利だと判断しているようです。

 日米軍事同盟を米英軍事同盟のレベルに引き上げたいブッシュ政権は、有事法制を望んでいるでしょうが、これは戦後日本の民主主義のとりでだった平和憲法とアジアの平和を同時に脅かします。日米の覇権によるアジア平和の破壊を阻止することは、韓国民はもちろん世界平和をめざす人々の課題です。

 日米資本の協業と日米“軍事分業”が、アジアの人々の平和的生存権を脅かしています。私たちは、中国・北朝鮮脅威論よりも、全地球的な規模の新自由主義の脅威と韓米日の軍事体制の脅威を深刻に憂慮すべきでしょう。

米軍のいない平和地帯に

 韓国政府は、北朝鮮との和解・交流を進める「太陽政策」を掲げていますが、米国のアジア戦略と深刻な矛盾が生まれています。

 こうした脅威から脱するためには、アジアを米軍のない地域にすること、アジアを非核・平和地帯にすること、日米同盟による戦争危機と軍備拡大を阻止することなどが必要です。

 米国は昨年九月十一日の同時テロ後、反テロ戦争を掲げてアフガニスタンに侵攻し、さらにフィリピン反政府勢力に対する作戦に関与するなど、戦争拡大にのりだしました。「ならず者国家」論も戦争拡大の口実にしようとしています。日本に対しては有事法制を要求し、自衛隊を戦争危機の日常化にそなえた国際常備軍にしようとしています。

 日米同盟が朝鮮半島周辺に戦争危機と軍備拡大の日常化をもたらしています。朝鮮半島の分断を悪用し、軍拡をあおることで、東アジア地域に連鎖的な軍拡の危機と戦争の危機が訪れているのです。


 金晋均教授 1937年生まれ。ソウル大学社会学科、同大学院卒。著書に『社会科学と民族の現実』、『軍神と現代社会―現代軍社会の論理と軍需産業にかんする研究』など。

 


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