日本共産党

2002年6月30日(日)「しんぶん赤旗」

どうなってるの?――…

コメ政策の見直し


 日本の米と水田農業にたいする政策の抜本見直し作業が行われています。舞台は、農水省の「生産調整に関する研究会」。二十八日、同研究会としての中間とりまとめをおこない、秋には最終的にまとめるとしています。方向を誤れば四割に落ち込んだ日本の食料自給率をさらに下落させかねません。問題点と議論の方向をみてみます。

なぜいま「研究会」

輸入米の受け入れのために作った「食糧法」の体制に矛盾がふきだしているからです

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米政策を議論した「生産調整に関する研究会」=28日

 米の国内消費量が減りぎみのなかで、外国産米が大量に流入しています。中国地方六県の生産量にも匹敵する水準です。一部は援助用にしていますが、大部分は国内で業務用にブレンドされたり、加工用に使われています。

 一方で、米の価格保障制度を廃止し、自主流通米の入札価格の値幅制限をなくしたため、価格の下限が取り外され、大手量販店などによる買いたたきをやりやすくしてきました。

 減反を拡大しても、他の作物に転換できれば問題はないのですが、転作条件が悪く所得も麦や大豆は米の半分以下にしかなりません。多くの作物が輸入と競合したり、転作作物がない状態におかれています。

 こうしたもとで昨年秋に「改革素案」を食糧庁が提案しました。同「改革案」は、弱肉強食の小泉「構造改革」にそったもの。“生産量を割り当て、それ以上にとれたら自分たちで処理する”“経営安定対策は二百万からの兼業農家をのぞき、四十万経営体だけを対象にする”などが提案されていました。生産調整を担当する自治体担当者や農協関係者からは「兼業農家を排除して集落全体で実施する生産調整はできない。農業後継者も生まれない」など、厳しい批判が続出しました。

 今回の生産調整研究会は、この素案をベースにして検討するため、一月に発足したものです。高木勇樹元農水次官を部会長にすえました。農協関係、大規模農家、流通業者、財界団体、婦人団体から委員を選任、パブリックコメント(国民の声)を聞くという形をとっています。

輸入米の影響棚上げ

「中間取りまとめ」の最大の特徴は、矛盾の大本である輸入米(MA米)について盛り込むことを避けたことです
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 「MA米の影響評価については、委員の意見を聞いて公表する」(座長=生源寺真一東大教授)としています。公開された一月からの議論では「心理的な影響を一部で認めたものの、全体としては影響ない」というもの。しかし、MA米が販売先の加工用需要を無視しています。国内産米の需要を圧迫していることは関係者が一様に指摘しています。

 政府自身それを否定できず、WTO交渉日本提案にも「輸入量の削減」を提案しています。同研究会の現地研究会でも“影響がないというなら、輸入を削減しなくても良いことか”との批判の声が出ています。

打ち出した検討課題は

中間とりまとめは、米と水田農業政策の全般にわたっていますが、矛盾と批判が出ており、肝心な部分は「検討課題」となっています

 減反に参加するか「選択可能なシステム」をかかげ、減反参加者にたいし米価下落分を一定程度おぎなっている稲作経営対策は「廃止する」としました。しかし「需給調整への参加者メリット(利益)の明確化を前提」とし、このメリット措置は検討課題です。

 農水省がねらう大規模経営体に限定しようとする「経営安定対策」(生産者たいする所得の補てん)構想にたいし、全中代表は兼業農家も参加した「集落営農」も対象に含めるように要求。明記はしないものの、これも秋までに農水省と与党などが調整する「検討課題」です。

 生産の「自己責任」という言葉には不安が続出しました。

 減反配分する町村や全中の代表、大規模農家から「自己責任、自己責任をいうと“作る自由、売る自由”が一人歩きして生産調整で現場が混乱した新食糧法の二の舞いになる」「全体の需要は個々の農家はわからない。みんな自分の米が一番良いと思っている。表現には配慮が必要」。「自己責任」の表現は削除したり修正になりました。

 「消費者重視の観点」といいながら、品質表示やトレーサビリティ(生産・流通の履歴)などの検討が必要としただけで、具体策はほとんどありません。

どう対処したらいい

主食のお米に国がきちんと責任もつことが必要です

 稲作が再生産できる水準で、暴落している米価の下支え策を緊急にとるとともに、義務でもない外国産米の輸入を縮小・廃止するようWTO農業協定を改正することです。

 空いている水田を有効利用して、麦や大豆、飼料作物の生産を振興する手厚い助成をします。

 輸入の小麦や大豆は、収穫後に使うポストハーベスト農薬や遺伝子組み換え作物が多くなっています。食料自給率の向上のためにも、安心・安定供給する条件をつくるうえでも必要です。

 欧米では、農産物への価格保障、生産者への所得補償に多くの農業予算をさいています。


◆米生産と水田は荒廃◆

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 稲作の現状は、大変苦しい状況に立たされています。

 生産農家は価格暴落で所得が激減しています。米輸入を自由化するWTO(世界貿易機関)農業協定を受け入れた1995年から下がり続けています。価格の決め方は、入札、産直、直売などさまざまですが、「指標となる価格形成をする」ための入札価格は、95年が60キログラム2万円を超えていたものが2001年産は1万6000円台まで下がりました。

 さらに、稲の作付を減らす水田の減反(生産調整)は次第にふえています。95年時点から比較すると68万ヘクタールから101万ヘクタールと拡大しました。空いた水田に他の作物を植えつけることができればいいのですが、採算にあわないため不作付農地がふえています。94年の12万ヘクタールから2000年には24万ヘクタールにふえています。

 「このままでは後継者は出ない」「水田は荒れるだけだ」との声が生産現場から出ています。

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◆日本共産党はこう考える◆

 米作りと稲作経営を守る米政策に転換する――「米政策の見直し」の1つである稲作経営安定対策からの小規模農家の除外は集落での米作りを困難にします。生産調整の配分を米の生産数量に変更することは米べらしの確実な達成を最優先し、豊作時の青刈り、エサ処分も農家の負担に押しつけるものです。生産意欲を奪い、水田をいっそう荒廃させずにはおきません。このような「米政策の見直し」は中止し、ミニマムアクセス米輸入の削減・廃止、米価の下支え制度の確立、減反おしつけをやめ、転作作物に手厚く支援するよう要求します。

 (農業委員会選挙についての政策から 2002年3月 日本共産党農漁民局)

 


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