2002年6月26日(水)「しんぶん赤旗」
ブッシュ大統領は演説で、アラファト・パレスチナ自治政府議長の交代を条件にパレスチナ「暫定」国家樹立を支持しました。パレスチナ国家の樹立は当然のことですが、領土も画定しない「暫定」国家が何を意味するかは、イスラエル軍によるパレスチナ自治区再占領を見れば明らかです。
イスラエル政府は二十一日の治安閣議で、十八、十九日と連続して起きたパレスチナ過激派による自爆テロへの「対策」を口実にパレスチナ自治区の再占領を決定しました。
イスラエル国防省のヤロン審議官は二十二日、イスラエル放送で「軍は自治区に必要なだけとどまる」と主張。三月末から六週間にわたったパレスチナ自治区への大規模な軍事攻撃を「不十分」と指摘し、これまでにない「決定的な対応」を準備しているとのべました。パレスチナ完全自治区のベトニアが、イスラエル軍の完全な監督下に入ったとの報道もあります。
イスラエルのダリア・ラビン副国防相が二十三日、「オスロ合意はもはや存在しない」と断言したように、イスラエルの軍事行動は、一九九三年のオスロ合意がとりきめた占領地からの段階的な軍撤退とパレスチナ自治区の拡大という和平プロセスを完全に否定するものです。
ブッシュ大統領が、再占領状態を直ちにやめさせず、暫定国家樹立の条件に自治政府指導部の退陣を迫ったことは、再占領を認めるものです。同大統領は二十一日、「イスラエルは自衛権をもっている」と侵攻を擁護。アラブ側が「すべてのパレスチナ領土占領への米国の黙認」(ハーレツ紙)と受けとめるのも当然です。
ブッシュ演説にアラファト議長は表向き「歓迎」しましたが、パレスチナやアラブ諸国では否定的な意見が支配的です。
エジプトのムバラク大統領とヨルダンのアブドラ国王は十九日に会談し、暫定国家に反対を表明するとともに、イスラエル軍による占領終了の期限設定を要求しました。パレスチナ自治政府のシャース国際協力相も十九日発行のアラブ紙で「境界のない暫定国家の樹立は宣言しない」と表明しています。(小泉大介記者)