2002年6月24日(月)「しんぶん赤旗」
小泉純一郎首相は国民世論の支持離れが激しい政権の態勢立て直しに懸命です。「いったん落ち出した内閣支持率を持ち直すのは至難のこと」(自民党元閣僚)といわれます。小泉内閣の今、を担当記者で探ってみました。
A 「小泉政権の命運がかかった一週間だったが、紙一重で乗り切れた」。自民党の橋本派閣僚経験者はほおを緩めていた。通常国会会期末―四十二日間の会期延長をめぐる与野党の攻防は小泉内閣・自公保三与党にとって綱渡りだった。
B たしかに一歩対応を誤ると、政権は立ち往生しかねない局面だった。重要法案と位置付ける四法案がすべて未成立のまま。通常国会百五十日間で予算成立以外何もできなかった無能内閣という汚名を着ることになり、小泉・自公保連立政権の弱体ぶりをさらすことになる。
C ただ、有事法制、健保法「改正」案など四法案は、どれ一つ成立させようとしても国民との厳しい対立を覚悟しなければならないものではあった。
B さらに鈴木宗男衆院議員逮捕、防衛庁リスト問題報告書の隠ぺい事件、福田康夫官房長官の非核三原則見直し発言など、自民党政治構造から発した事件が重なった。内閣支持率は支持・不支持の逆転が相次ぎ、小泉政権にジリ貧傾向が見えてきた。
A 小泉首相周辺と連立与党首脳陣は二十五、二十六の両日にカナダのカナナキススで開かれる主要国首脳会議(サミット)をきっかけに政権態勢の立て直しをはかりたい考えだ。世論の支持回復が見込めないだけに「ブッシュ米大統領」頼み、「財界」頼みの政権浮上作戦だ。
C 経済財政諮問会議(議長・小泉首相)がまとめた経済財政運営と構造改革の基本方針(第二次「骨太の方針」)が、その“切り札”というわけだ。自民党本部政策担当者は「王手(ブッシュ)飛車(財界)取りをねらった一手」と自賛している。
B 中身は、不良債権の最終処理を二年以内に一挙に進めながら、他方で税制、福祉で新たな重い負担を国民に求めているものだ。アメリカや財界向けの答案だ。
A ブッシュ政権は小泉内閣の経済運営に不信感を強めている。小泉首相への親書などで再三、不良債権の早期処理を促してきた。ブッシュ米大統領とサミットで顔を合わせる前にアピールできる政策を用意したかったのだ。
B 二十四日に小泉首相が自ら出て衆院有事法制特別委の審議再開へメドをつけるのも、有事法制の早期成立を求めるブッシュ政権の信頼をつなぎとめる狙いもある。
C 小泉「構造改革」を支持してきた財界内にも不満が募っている。経済同友会の六月の景気定点観測アンケート調査結果では、小泉改革の現状を評価する回答は25%以下。経済同友会経済政策委員会(五月)は「方向性の段階は過ぎつつあり今後は具体策である。従って、小泉改革が問われるのはまさにこれからである」と注文を突きつけていた。
A 小泉首相は、ここにいたってブッシュ政権や財界の支持取りつけを最優先に位置付けて政権立て直しを図る立場を明確にした。
B 鈴木宗男議員が逮捕されても自民党内の「政治とカネ」をめぐる風景は変わらない。自民党各派閥は競い合って資金集めのパーティーだ。高村派一・二億円、堀内派一億円以上、森派二億円以上、橋本派三億円以上、河野グループ〇・五億円以上、山崎派一億円以上。七月に小里グループ(旧加藤派)、十一月に江藤・亀井派。各派合わせて十五億円以上の水揚げを見込む。パーティー券購入先は企業、業界団体、官庁関連の公益法人がほとんどだ。政財官癒着構造に「改革」のメスは入らない。
C 「自民党を壊さない小泉政権」とわかった自民党内にも、国民の小泉離れとともに冷ややかさが増してきた。堀内派会長代行の池田行彦元外相は十八日夜の同派若手議員の会合で、「小泉さんもメッキがはげたといってはなんですが、切れ味が鈍ってきた」と辛らつだった。
B 小泉首相に近い元閣僚も「九〇年から十年で首相が八人、一年そこそこで交代した。発足後一年二カ月経った小泉内閣が政権末期といわれても不思議なことではない」といっていた。小泉首相には内憂外患の政局運営が続く。