2002年6月23日(日)「しんぶん赤旗」
米軍機の低空飛行回数が減る傾向にあるなかで、危険な飛行訓練はいぜん各地でおこなわれています。地上をかすめ、市街地や山間地で爆音をまき散らす横暴勝手が、相変わらずまかり通っています。広島、群馬などにその実態をみてみました。
今年二月六日、広島県作木村を車で走っていると、表現できないほどの、ごう音が鳴り響き、フロントガラスからEA6Bプラウラー電子偵察機が約五秒で目の前を通過。機体を約四五度傾斜、テレビ塔のある山を直前に左旋回しました。目測で約二百五十メートル前後であろうか。
一瞬、「ぶつかる」と心の中で叫び、九八年、目撃同型機がロープウエーのケーブルを切断、二十人の犠牲者を出し、現地にも調査に行ったイタリア・カバレーゼの事故現場の風景が脳裏をよぎります。
「ブラウンルート」と呼ばれる中国山地沿いにある低空飛行訓練航法ルート下の作木村では、少なくとも延べ十八日、二十九件を確認(昨年度)。広島県北西部から島根県西部の「エリア567」訓練空域下で米軍機の目撃情報の要綱を定め、四地点で監視する芸北町では延べ百三十九日、七百七十八回にもなります。そのたびに住民は爆音と墜落の不安にさらされ、戦争との隣り合わせの危機感を背負います。
米軍機の飛行訓練下の住民は、平時でもすでに「有事」を日常生活の中で体験しているのです。
広島県は五月二十三日、昨年度の県内における米軍機と見られる目撃情報集約を発表。目撃実日数百七十二日、目撃件数九百九十二件。目撃件数では九七年の調査開始以来最多です。
広島県は五月二十八日、政府と駐日米大使館に、米軍機の低空飛行訓練の中止を求めました。政府には、実に十二回目、駐日米大使館へは五回目の要請です。
隣の島根県では、二〇〇〇年度で十二市町村百五十回以上が昨年度は十三市町村三百九十三回以上(県総務部)と飛来回数が増加。
しかし、住民は「最近は、以前に比べて回数も減った。高度も高くなったようだ」と述べます。
飛来が減少しているにもかかわらず目撃回数が増えているのは、監視体制を強めてきた運動の反映にほかなりません。
日本の航空法適用除外で理論上、どこでもどんな高度でも勝手に傍若無人に飛行することができる米軍機。米軍の運用にかかわる問題には承知しないとする日本政府。
日本政府と米軍との「日米合意」後も、広島県内で休日の飛来が延べ二十五日、百四十二件と守られず、また、目撃自治体数が二十三と広がっています。(昨年度、広島県発表)
「米軍の低空飛行の即時中止を求める県北連絡会」の藤原清隆会長(君田村長)ら三村長が外務省へ要請。役人に「(米軍機が飛行する)そんな谷間に人が住んでいるのですか」と言われ「いったいだれに顔を向いているのか」と怒りました。
「日米合意」を順守しているはずの米軍機が、推定高度二百二十五メートルで機影を撮影された場所は、「配慮」すべき芸北町の八幡小学校上空です。 (岡本幸信・県北連絡会事務局次長)
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群馬県内の米軍機低空飛行訓練は、県中部から南部(渋川、前橋、高崎の各市)、県北西部(中之条町)、県東部(桐生市)など、ほぼ全県にまたがっています。
低空飛行による、家屋、器物破損などの被害は四十三件(一九九五年〜九七年)に達し、全国最悪の被害件数をだしたことがあります。平和委員会や住民の粘り強い運動で自治体を動かし、県も横田(東京)の米軍司令部に抗議しています。
しばらく被害が出ていませんでしたが、二〇〇〇年二月中ごろ、渋川をはじめ前橋、高崎などで県中―南部一帯にジェット衝撃音への苦情が殺到しました。その後、低空飛行はかげをひそめていますが、時々発生します。普段は高い所を飛ぶジェット機の爆音です。
昨年十二月三日、県北西部の山間地・中之条町周辺で、夕方の一時間余り、ジェット機の低空飛行と空中戦らしい訓練があり、役場や消防に問い合わせが殺到しました。米軍は一カ月後に「同日同時刻に飛行を行った」というだけの、木で鼻をくくったような回答です。以前とくらべて、対応が極端に悪くなっています。
渋川市で九五年から米軍機の監視記録をとり続けている相川晴雄さん(78)は、いまでも爆音がすると、戸外に出て観察します。
今年一月〜五月の記録では四十一日、九十九回の飛行です。昨年の同時期には五十三日、二百十三回でしたから半減しています。
相川さんの経験では、「集中して飛ぶのは夜が多い。多い時は一時間に八回くらい、ごう音をたてる飛行もある」と語っています。
一方、群馬には、昨年三月から自衛隊ヘリコプター部隊・相馬ケ原12旅団が発足。数カ所で同旅団の動きを監視し記録をとっています。
県東部・桐生市の山間地寄りに住む山口行夫さん(51)は、爆音がすると外に出て機影を追います。この四月のヘリコプター、プロペラ機、ジェット機の記録は合わせて百五十六回。このうち七十回がジェット機でした。以前にはなかったことです。
高崎市の角田凡夫(つのだ・つねお)さん(62)も爆音を聞くと戸外に機影を探し、カメラを向けます。四月は二十七日間の記録のうち、十七日がジェット機の爆音で、四十四回となり渋川市を上回る頻度です。
ジェット機音は夜も、時には明け方近くにもあり、「夜の方が音が大きいのは、低い所を飛んでいるのではないか」と話し合っています。 (小田暁夫・群馬県平和委員会事務局長)
敵レーダー電波の届かない山や丘の陰を飛んで敵地へ飛び込み、戦場では高度三〇メートルぐらいを高速で蛇行して対空砲火を避け、敵レーダーや対空ミサイルなどの防空システムを破壊し離脱する――ことを目的に訓練する、と言われる。その他、飛行技量の維持や対地攻撃訓練の際にも低空飛行を行う。
国内法の航空法第八一条は、航空機は人口密集地域で三〇〇メートル(それ以外一五〇メートル)以下を飛行してはならない最低安全高度を設けている。しかし、在日米軍機は、日米地位協定に基づき、最低安全高度などが航空法適用除外となっている。
九九年、日本政府と在日米軍が初めて公に日本における米軍機の低空飛行に関する合意を発表したもの。最大限の安全性の確保をうたい、最低安全高度の順守、学校などの公共施設へ配慮し、原則として休日には飛行しないとしているが、発表して一週間の内に、高知県、岩手県と二日連続、低空飛行訓練中に米軍機が墜落し、なんら実効性のないことを早くも証明した。