日本共産党

2002年6月1日(土)「しんぶん赤旗」

防衛庁主導で軍事産業

78細目の秘密保全教育

"身内の外国居住報告せよ"

内部文書で判明


 配偶者から祖父母、孫まで米国以外の外国に居住したら防衛庁に報告せよ―。日本の軍事産業でこんな指示や労働者の思想調査まで含む「防衛秘密保全教育」が行われています。本紙が入手した軍事産業や防衛庁の内部資料などで判明したもの。情報公開請求者リスト作成問題にあらわれたような人権無視の防衛庁の体質がその背景にあります。


 この「教育」は、兵器生産や維持管理・補修に携り、秘密文書に接する防衛庁の資格をもった「秘密業務従事者」を対象としたもの。本紙が入手した資料では、十一項目七十八の細目((1)秘密保全(2)立ち入り禁止区域(3)文書等の閲覧・借用(4)伝達・送達・輸送(5)文書の記録・保管(6)外国旅行・国際的会合と外国人との接触(7)物件の製作と複製(8)施設保全(9)文書等の破棄・返却(10)秘密情報の漏えい・紛失の措置(11)非常の際の措置)にわたって実施されています。

■外国旅行

 このなかで、外国旅行・国際的な会合への出席に関しては、「関係職員の二親等以内の直系親族、配偶者が米国以外に居住した場合、防衛庁に報告しなければならない」と指示。具体的に(1)自分の父母、祖父母、子ども、孫、配偶者の父母、祖父母に適用される(2)本人が米国人以外の外国人と結婚した時も同様(3)本人には秘密保全の趣旨を理解した旨の証拠文書を提出させる(4)帰国すれば防衛庁へ報告書を提出する―としています。

 他方、防衛庁側は「防衛秘密関係者が外国旅行する場合等に関する規程」を定め、企業に通知しています。同規程によると、秘密業務従事者が米国以外の国に旅行する際には、旅行目的、日程、過去二年以内に取り扱った秘密の種類、訪問した国名、出席した会合等を三十五日前に企業の総務部長に報告。総務部長は三十日前に防衛庁に報告することになっています。

■関係団体

 各企業は、秘密業務従事者の選抜にあたって本人の身上調査(人格、資産、生活態度、過去の居住地、職歴)だけでなく、二親等まで対象に調査しています。とくに、関係諸団体の項では、団体、会、クラブ、連盟、運動等との関係(入会目的と理由、脱会の理由)まで報告させています。企業によっては、三親等まで範囲を広げ、労働組合の活動家や政党の党員、支持者など思想・信条まで調査し、「左関係の整理」名で関係者を排除しています。

 秘密業務従事者に選抜されると、防衛庁は「任命書」と「適格証」を発行。さまざまな規定・規則の順守を義務づけさせます。

 こうしたことが実施されているのは、防衛庁が日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法、同施行令に基づいて、軍事産業に兵器や文書等の秘密保全を義務づけているからです。各企業は、社内規則として「防衛秘密保全規則」等を作成。この規則に基づいて対象者に具体的な教育を繰り返し実施しています。

 軍事産業に勤務する労働者は「米ソ冷戦時代に作成された規則が今もまかり通っている。海外旅行の規定などはまったく時代錯誤も甚だしい。機密漏えいやスパイ事件は軍事産業の労働者ではなく、防衛庁・自衛隊関係者が起こしているではないか」と語っています。

 


もどる

機能しない場合は、ブラウザの「戻る」ボタンを利用してください。


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp