2002年5月26日(日)「しんぶん赤旗」
【モスクワ24日北條伸矢】米国のブッシュ、ロシアのプーチン両大統領は二十四日、「互いに敵あるいは戦略的脅威とみなす時代は終わった」と宣言しました。
しかし、この「新しい戦略的関係」のもとでの新条約について、プーチン氏は記者会見で、「米ロ以外に核兵器を持ち、これから持とうとしている国が存在する」として、米ロの核兵器保有を合理化し、それ以外を脅威と決め付けました。
一九八〇年代の米ソ交渉で耳にした「究極の目標」としての核廃絶さえ聞かれず、米ロ間の「信頼関係」を優先したもので、核戦争の脅威にさらされる各国民の声は耳に届いていません。
ロシアだけでなく、欧州の同盟国からも批判を受けてきた米国のミサイル防衛構想についても、ロシアはなし崩し的に容認する態度を明確にしました。
プーチン大統領にとって「新戦略関係」とは、米国の「反テロ」連合戦略に同調して、米国の経済支援を受け、北大西洋条約機構(NATO)との軍事同盟関係をとり結ぶことです。
共同宣言では、十四日のNATO外相会議が決めた共同意思決定機関「NATOロシア評議会」の設置を歓迎し、NATOとロシアが「共通の利益の分野では対等のパートナー」として行動するとしました。ロシアは、バルト三国などへの東方拡大には反対するものの、NATOの役割を容認しています。
米国が「悪の枢軸」と呼ぶイラン、イラク、北朝鮮との関係で、プーチン氏は「悪の枢軸」戦略そのものに何の言及も批判もしませんでした。イランの「テロ支援」「大量破壊兵器獲得」が危険だと語るブッシュ氏の評価には、「同意」してみせました。
ただし、ロシアは兵器輸出など各国と経済的関係が密接で、原子力支援などの凍結を求める米国の要求をそのままには受け入れていません。
二十四日の会見でも、プーチン氏が、イランへの「原子力技術供与は、エネルギー分野に限定されたものだ」と反論する場面もありました。