2002年5月26日(日)「しんぶん赤旗」
郵政公社法案など郵政関連四法案が国会で審議入りしました。同法施行法案では第四種郵便物のうち、郵便法で「盲人用郵便物を無料とする」と定めた条項が削除されました。障害者向けの小包割引制度についても廃止されるのでは、と障害者団体などに不安が広がっています。(浜島のぞみ記者)
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点字図書館や公共図書館では、視覚障害者のために点字図書や録音図書の郵送貸し出しをしています。
「盲人用点字・録音物は障害者の生活の一部です。その盲人用郵便を有料化するなんて基本的人権にかかわる大変なことです」。社会福祉法人日本点字図書館の田中徹二理事長(67)は語ります。
全国に三十万人いるといわれる視覚障害者のうち点字図書館を利用している人は七万一千人います。全国に七十三館ある点字図書館の中央館の役割を持つ日本点字図書館は、全国一万一千人以上に点字・録音図書の無料貸し出しをおこなっています。点字図書の貸し出し数は約一万五千、録音図書は約八万七千(二〇〇〇年度)。毎日二トントラックで郵便局へ運んでいます。
原書を点字に訳したり、朗読しテープに録音する作業は三百人にのぼるボランティアの協力で成り立っています。
点字の本は普通の小説でも原書の数倍の厚さで、それが辞書になると情報量が多いため、英和辞書一冊が百冊分にもなります。
点字本や録音図書は市販されていないため、ほとんど点字図書館を通じてしか利用することができません。
田中理事長は「点字図書館は盲人の読書の自由を保障する所ですが、郵便の有料化は利用料がとられるのと同じ。もし図書館が有料になったら利用者は減るでしょう」と語ります。
日本図書館協会の障害者サービス委員会委員長で、都立中央図書館の視覚障害者サービス係の田中章治さん(56)も怒ります。「障害者への貸し出しは、資料(本やビデオ、CD、テープなど)の公開という図書館の原則に基づいています。図書館を利用することは知る権利の保障ですが、在宅の障害者は郵送されてはじめて資料を手にするわけです。盲人用郵便の有料化は、生存権の文化的な側面の否定と言えます。今年は十年間にわたる『アジア太平洋障害者の十年』の最終年です。障害者施策の点検の年にこんな仕打ちは、逆立ちしている」
日本図書館協会は先月、片山総務大臣に対して盲人用郵便物の無料制度、ならびに障害者用冊子小包の割引制度の存続を求める要望書を提出しました。
前出の日本点字図書館の田中理事長は「国際的にも万国郵便条約で、盲人用郵便を無料としている中で有料化は恥ずかしいこと。法律に無料制度継続を明記してほしい」と話しました。
今回の郵政四法案では公社化とともに信書への民間参入に道が開かれます。これによってダイレクトメールなどもうけの大きい部分に民間業者が進出し、公社との経営競争が激化。盲人用郵便物無料制度の廃止や割引きされている定期刊行物(第三種)の値上げ・廃止に拍車がかかることになります。
総務省郵政事業庁郵便企画課は「これまで無料だった盲人用郵便物の有料化については、第一種より安くすることは規定されていますが、具体的な料金は公社が決めること」としています。