2002年5月24日(金)「しんぶん赤旗」
日本商社などが国内種苗会社(タネ屋)から購入し、中国に輸出したネギ種子(タネ)の輸出量は、二〇〇〇年度で一万九千数百キロ(十九トン強)、翌〇一年度で五千キロ弱(五トン弱)にのぼる――農水省が実施した特別調査の結果で、このことが明らかになりました。
この特別調査は、昨年四月に暫定セーフガード(緊急輸入制限)が発動されるなど、最近急増しているネギ輸入の原因の把握を目的に、国内の種苗会社などを対象にして二〇〇〇年一月分から毎月実施しているもの。
同省によると、日本の商社は「開発輸入」の一環として、まず、日本人向けに品種改良されたネギの種子を種苗会社から購入。それを中国に輸出するとともに栽培技術の指導までして、中国の農家にネギを生産させます。そのネギをまた日本に逆輸入させています。(図)
種苗会社関係者の説明では、二〇〇〇年度に中国に輸出されたネギ種子一万九千数百キロは、仮に国内農家がそれだけのタネを使って生産すれば、通常三十四万トン程度のネギが収穫できる分量といいます。
中国を含む海外からのネギ輸入量は、二〇〇〇年が三万七千トン、〇一年が三万トン。輸入量の十倍前後の生産が可能な種子を日本から輸出している計算になります。
今回の農水省の特別調査の結果は、国内の野菜農家を苦しめている中国などからの野菜輸入急増が、実は日本商社の自作自演であることを物語っています。
中国から輸入されるネギの約十倍のネギ生産に必要な種子が輸出されていたということは、輸入されているネギのもとになった種子は、ほとんど全部、日本商社が日本から輸出したものということになります。
ネギの種子は、ネギ生産の前提条件です。しかも、種子の品種改良や増殖は、長い研究開発が必要で、日本国内では開発者の権利(育成者権)は法律で保護されています。ところが、中国に種子が輸出されると、法的保護もなくなり、輸出された種子の増殖も野放しになります。
大商社は、国内の種苗技術者や農家が何十年もかけて育てあげてきた優良な品種の種子や農業技術に“ただ乗り”し、もうけのために「開発輸入」を推進しているのです。セーフガードの本格発動などで、日本の商社の横暴を規制することは、日本の主権に属する当然の権利ではないでしょうか。(今田真人記者)