ここを語りたい 〈下〉 編集局長関口 孝夫 世界をどう見るかの「目」  「テロという地球的脅威とのたたかいで地球的連帯があったのに、ブッシュ氏は超大国米国の独走を選び、連帯の機会を葬り去った」  「赤旗」でも紹介した仏紙「ルモンド」の論者の一節です。現状をズバリついているこの指摘は、同時多発テロ以後、二度にわたって各国政府によびかけたわが党の書簡が警告していた懸念、軍事報復ではテロ反対の国際世論に亀裂をもたらすだけ、を裏付けた正論です。  ブッシュ大統領を真似てさっそく無謀な独走をはじめたのはイスラエルのシャロン首相で、テロへの報復を口実にするなら何をしてもいいとばかりに、パレスチナ自治区を蹂躪(じゅうりん)、中東諸国はじめ世界の非難をあびています。  ブッシュ氏は年頭教書でさらに「戦争は始まったばかりである。計画に従ってたたかわなければならない」と危険な新段階を予告しイラク、イラン、北朝鮮を「悪の枢軸」と名指し で攻撃対象にあげていま す。  まるで軍事強行作戦を背景とした米国内世論の高支持率に味をしめ、「テロ撲滅」を口実に、次の大統領選挙まで戦争をひきずりたい、が本音ではないかと疑念を抱かせるようなむきだしの覇権主義です。 ブッシュ氏に 世界から批判  当然ながら反対の世界世論が起き、「アメリカに誰が悪だ善だと判決する権利を与えたというのか」と中東、アジア、EU各国から強い批判、非難の声があがっています。独、仏外相などは強い調子の米政策批判の声をあげ、アメリカ国内からも元政府首脳や米議会内部から「とんでもないまちがいだ」「破局的な事態をもてあそんでいる」の批判の声があがっています。  世界の代表的なメディアも激しい表現でブッシュ氏の危険な計画を批判しています。  「ことば遣いが変わってきている。NYタイムズが暴いた米核戦略戦術見直し案秘密文書の記事でも、『危険なバカ騒ぎ』というふつう使わない強いことばで書いている。しかもこちらは社説の最後のことばだが、仏紙ルモンドにいたっては『アメリカは“気がちがった”(『フー』)のか』と、もう反対なんてものじゃない。『そんな無責任なことをやられたらたまったもんじゃない』と激怒している様子が伝わってくる論調だ」――欧米のジャーナリズムに詳しい著名な評論家の感想です。  英国ではブッシュ政権の戦争政策に賛成し、協力するブレア首相にたいし国内から「米国の飼い犬のように追随している」と痛烈な批判が浴びせられ、首相がBBC放送で「私はブッシュ米大統領のプードル犬ではない」と釈明の反論をする有り様です(十七日付「毎日」)。  この伝でいくと、ブッシュ氏のやることになんでも「理解する」を連発する日本の小泉首相あたりは、「ポチではない」とどう釈明するのでしょうか。  同時テロ事件後、カイロ、ドバイ、アブダビなど中東を訪れた橋本元首相は、帰国談で「日本がテロに狙われる国の上位にランクされるとの評価を受けていたことに驚かされもした」(『日経ビジネス』〇一年十二月十七日号)と語っています。  米軍への補給作戦のため、インド洋に派遣した自衛艦を半年も延長する軍事貢献国、日本の危険なツケともいうべきものです。  アメリカのイラク攻撃作戦の協力へと連動しかねない危険が現実化しているだけになおさらです。  日本をブッシュ作戦の応援国として自衛隊参戦法の成立を急がせるキャンペーンをしてきた日本のメディアの責任は重いものがあります。 商業メディアの 懲りない姿勢  日本の新聞は先の大戦で国民を誤導した痛苦の反省と責任を思えば、戦争報道には慎重、且つ時流と時勢、既成事実に流されないように、十分検証して報道にあたるべきです。ドイツのように戦前、戦争協力した新聞は戦後すべて退場した経緯にならえば、戦後も継続しつづけた日本の新聞は、せめて憲法の平和条項遵守は最低限の国民にたいする倫理的義務であるはずです。にもかかわらず、テロ特措法に名を借りた自衛隊参戦法の成立を急がせ、武力攻撃をよしとする有事法制に反対もしないとは、どういうことか。  「一部の左翼野党や、左派マスコミに引きずられて、テロ特措法の国会審議が手間取り、日本政府が自衛艦をインド洋に向けて出航させたのは…同時多発テロ発生後二カ月半もたってから  日本の商業メディアのこうした懲りない姿勢はどこからくるのか――。ズバリ自民党政治とおなじように、日米安保条約のもと、政治外交、軍事、経済の基本・日米同盟支持を編集方針の「不動の枠組み」にしているからです。  いま、(1)有事立法報道で(2)アメリカの一国覇権主義を許さない報道で、日米同盟を社是とする商業新聞と、世界では多数派である非同盟の目で世界を報道する「赤旗」報道との二つの見方のちがいがはっきりとでています。二つの目の対決です。  世界世論の良識が道理にそくして力を合わせれば、どんな大国の横暴の壁も打ち破れる、これが民主主義と人権、民族独立、平和秩序、核兵器廃絶はじめ各分野で逆流をのりこえてきた二十世紀の人類進歩をめざしたたたかいの歴史です。「赤旗」の歴史はまさにそのたたかいとともにあり、逆流に抗してきた報道の歴史でした。  世界の平和を傍観者としてではなく、積極的にかちとっていく。そのためのたたかいの宣伝、行動提起、組織者としての使命にたっています。いまの時代を能動的に生きている証が「しんぶん赤旗」にはあります。 (おわり)  先にあげた評論家の「しんぶん赤旗」への期待のことばを紹介します。 情勢を正確に 伝える「赤旗」  いまほど「しんぶん赤旗」の役割が重要になっているときはないというのが私の実感である。いま多くの人たちの間では、現実に世界で起きている事柄、国内のあれこれの問題をどうみるかについて、その実際、本当のことがよく分からない状況が広がっていると思う。  それはあえていえば、なにがなんだかわからない状況といってよい。それだけいま生起している問題や状況が複雑であるばかりでなく、歴史的背景をもっているということである。また、これまでの常識の枠組みのなかでの物差しは通用しなくなっているように思う。  重大なのは、これに一般メディアがまるで対応できていないことである。いまの激動する情勢に真正面から切り込み、唯一正確に伝えているのは「赤旗」だけである。  大衆のなかに広がる「なにがなんだかわからない」という現象は、かなり以前からあったと思う。そこに小泉首相が現れ、短く、単純なフレーズで語りかけ、それをテレビをはじめ、マスコミが異常に持ち上げた。これによって小泉内閣の高支持率が九カ月にわたって続いたのである。しかし小泉首相が叫ぶ「改革なくして景気回復なし」がいかに空しい掛け声にすぎないかは、もはやだれの目にも明らかになり、国民にとっては、日本経済の見通し、自分たちの暮らしと将来がどうなるのか、なにがなんだか分からなくなってきている。  一方、ブッシュ米大統領は、「悪の枢軸」を叫び、イラクを攻めようとしているが、ブッシュ政権内でも矛盾がでてきている。  国会では有事三法案を有無をいわせず押し通そうとしている。メディアは、こういう状況について、ちゃんと批判するどころか、これを支持・推進するものもあり、多くの人たちは一体どうなっているのか、なにがなんだか分からなくなっている。  したがっていま大事なのは、世の中がどうなっているのか、世界の状況がどうなっているのか、世界の歴史がどうなっているのか、二十一世紀の新しい世界と日本はどうあるべきか、そしてそのために自分たちは何をなすべきかについて、すっきり胸に落ちるように分かるようにすることであり、それをこそ多くの人々は切望している。いま、それができるのは「赤旗」しかない。