2002年5月18日(土)「しんぶん赤旗」
自民、公明、保守の与党三党は、通常国会の会期末(六月十九日)まで一カ月余となった十五日、党首会談を開き、体制固めをはかりました。“ムネオ疑惑”をはじめとした「政治とカネ」の問題にケリをつけ、海外での武力行使に道を開く有事立法三法案や、健保本人三割負担などを盛り込んだ健康保険法「改正」案など一連の悪法の会期内成立をめざすことを確認したのです。
“司令塔不在”といわれた国会運営ですが、党首会談を契機に「(与野党協調が)ダメなら強行をやるしかない」(自民党国対関係者)と、強硬論もちらつかせ、一気に法案の出口を決めてごり押しする構えを見せています。
こうしたなか与党筋から十四日夜、約五十日という大幅延長説が流れました。これを受け、一部マスコミ(十七日付朝刊)は、政府・与党が、五十日程度の延長方針を固めたと報じました。
会期末まで一カ月余の時点で延長話が出るのは異例のこと。審議への影響を懸念した自民党は直ちに報道を否定。しかし、山崎拓幹事長は十七日の会見で「現時点では」と前置きしたうえで、「会期延長は一切論じない」とのべ、会期延長に含みを残しました。
「(会期末まで)実質(土日を除いて)二十八日しかない。この間に重要法案の成立を期すということは並々ならぬ努力がいる」
実際、週初めの政府・与党連絡会議(十三日)では、与党幹部からこんな発言が飛び出すほど、政府・与党内には重要法案処理を危ぶむ声がありました。
鈴木宗男議員の公設秘書や側近の逮捕、中国・瀋陽の総領事館事件などで、政府・与党の思惑は狂いっぱなし。そこで、体制を立て直し、“反転攻勢”に出たのが十五日の党首会談です。
与党合意は、政治とカネの問題でも、“ムネオ疑惑”にはひとこともふれず、「政治倫理関連法案」をもちだして、幕を降ろしたいという姿勢がありあり。「いろんなスキャンダル解明も大事かもしれないが、司直の手が入っているものはそちらにおまかせする」(野田毅保守党党首、十三日)という姿勢です。
一方、党首会談を契機に、与党の強硬姿勢が目立ちはじめました。
「もう、いけいけですよ。有事(三法案)は二十二日に公聴会。その日なら、予算委はできる」。「じゃ、採決は二十四日か」。「早ければね」――。
こんな会話が自民党議員の間で交わされたのは、十五日の党首会談に先立つ衆院本会議後のこと。
同日の有事法制特別委では、自民党が採決に向けた“環境整備”となる公聴会の実施を突然、主張。週明けにも公聴会の日程採決の話が与党側から出ています。
「重要法案」の一つ、健保改悪案も、採決を意識した攻防となっています。
有事法制も健保改悪案も、ともに国民の命と暮らし、日本の平和にかかわる重大法案です。徹底した審議で問題点を明らかにすることこそ、国会の責務です。金権腐敗にはメスを入れず、平和、国民の命、暮らしにかかわる悪法は強行――与党の姿勢は本末転倒です。