2002年5月15日(水)「しんぶん赤旗」
東京地検特捜部は十四日、二〇〇〇年春にイスラエルで開かれた国際会議への派遣費用など約三千三百万円を外務省関連の国際機関「支援委員会」から不正に支出させ、支援委に損害を与えた背任容疑で外務省の前国際情報局主任分析官佐藤優容疑者(42)と元ロシア支援室課長補佐前島陽容疑者(37)を逮捕しました。
佐藤容疑者は鈴木宗男衆院議員(自民党離党)に重用され、外務省内の“分身”といわれたロシア専門家。ムネオハウス(国後島「友好の家」)をめぐる偽計業務妨害事件で公設秘書が逮捕された鈴木氏の一連の疑惑解明は、今回の側近逮捕で、新たな局面を迎え、国会での追及がますます重要になってきました。
調べによると、佐藤容疑者らは、イスラエルの研究員夫妻が国際会議の事前打ち合わせで来日した際の旅費や滞在費約三百三十万円と、イスラエルのテルアビブ大で開かれたロシア外交関係の国際会議に出席した同省職員ら十七人の参加費用約三千二十万円を、支援委から支出させ、損害を与えた疑い。
佐藤容疑者らは支出させた資金の一部を個人的に流用、観光旅費にも充てていました。
外務省内では、職員の参加費用などへの支出は「支援委の設置に関する協定」に反するとの異論が出ましたが、佐藤容疑者が押し切る形で要請。最終的に、当時の東郷和彦欧亜局長=免職=がロシア支援室に指示して支出させました。特捜部は東郷元欧亜局長についても海外から帰国後、聴取する方針です。佐藤容疑者は容疑を否認、前島容疑者は認めているといいます。
特捜部は外務省の両容疑者の机や、自宅など関係先を家宅捜索しました。
日本共産党の市田忠義書記局長は十四日、外務省の佐藤優・前国際情報局主任分析官が背任容疑で逮捕された問題で記者団の求めに応じ、見解を述べました。
市田氏は、佐藤容疑者の逮捕について「税金の私物化の最たるもので逮捕は当然」としたうえで、「(事件は)佐藤氏だけの問題でなくて、東郷(和彦)元欧亜局長の直接の指示であり、鈴木宗男氏が『おれの金をなぜ使えないのか』といったと伝えられているように、鈴木氏の疑惑もますます深まっている」と指摘。「鈴木議員の再喚問、外務省の責任追及が必要だ」と述べました。
また、今後の国会運営について、「国会には道義的、政治的追及の責任があり、こういう問題をあいまいにしたままの議論は成り立たない。これを優先課題として国会でも明らかにしていくべきだ」と述べました。