2002年5月9日(木)「しんぶん赤旗」
自由法曹団警察問題委員会(委員長・森卓爾弁護士)が情報公開条例で入手した神奈川県警の内部表彰リストで、「警備・公安情報の入手・収集」については、警察署・所属課・階級などの部分を黒塗りにしていることが分かりました。
公開を請求したのは二〇〇〇年と〇一年の県警本部長表彰の内容。各千七百七十三件、千八百三十八件で、毎年、同県警警察官の約一割が本部長表彰を受けていることになります。
表彰リストによると、刑事事件では「瀬谷署・生活安全課・巡査部長・暴力団員らによる覚せい剤所持事件・薬物対策課」など、警察署、担当課、担当警察官の階級、事件、主管課が分かる仕組み。
しかし、公安一課、同二課の警備関係の「功労内容」は「重要警備情報の収集・入手」と抽象的な上、警察署も黒く塗りつぶされていました。
公安一課は日本共産党関係、同二課は右翼団体を担当する部署。公安一課が主管の「重要警備情報の収集・入手」を対象とした「功労賞」は、二年間で計二百六十七件、表彰総数の7・3%を占めています。
また、警備活動の情報収集に関する表彰審査基準表の「イ」の項三行分が黒塗りで、開示されませんでした。
この部分は本紙が別途入手した審査基準表では「警察要視察対象団体の組織系統構成、人員、活動指針等の重要資料及び情報等を入手し、警備警察の運営に貢献したもの」となっています。
四月十八日付本紙既報のとおり、神奈川県警の表彰規程は、刑事事件で警官として身の危険にさらされながら捜査に当たるより、警備情報の収集・入手の評価が高くなっており、警備・公安偏重の体質を制度面からあらためて裏付けました。
神奈川県警では国庫から支給される捜査費約四億円のうち、四割強が警備・公安関係に充てられ、中でも公安一課は最も多い五千二百五十万円(二〇〇〇年度)となっています。
かねてから日本の警察には、日本共産党を中心に労働組合、民主団体を敵視し、不当な監視をしたり、スパイを内部に送り込むなど、秘密警察の体質があることが指摘されてきました。
一九八六年に発覚した東京・町田市にある日本共産党の緒方靖夫元国際部長(現参院議員)宅の電話を盗聴した実行犯は神奈川県警公安一課の警官でした。また、九六年に長野県内で労組・民主団体の事務所荒らしをして逮捕された公安警察官が、署長表彰を何度も受けていたことも裁判で明るみに出ており、警察が違法行為を組織的に推奨していることを裏書きしています。
今回情報公開された内部表彰リストで「警備情報」の項をほとんど塗りつぶしていることについて森卓爾弁護士は、「警察署・所属などを開示しなかったのは、共産党関係の情報収集を警察挙げて行っていることを隠すためとしか考えられない。こうした違法行為に国民の税金が使われていることを正すべきだ」と語っています。