日本共産党

2002年5月5日(日)「しんぶん赤旗」

どうなってるの?――…

 日本映画


 連休中に映画館に出かけましたか。この時期の大型連休をゴールデンウイーク(黄金週間)と呼び始めたのは、五〇年代初め。日本映画の隆盛期に映画界で用いられ、定着してきました。長く危機だといわれてきた日本の映画界ですが、昨年の観客増などで「活況」だという声もあります。実情はどうでしょうか。

映画界は活況なの

映画館入場者や興行収入は増えたけれど、その中身が問題です

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 「映画活況」「興行収入初の2000億円突破」―二月一日の新聞各紙には、こんな文字が躍りました。これは、その前日、日本映画製作者連盟(映連)が、記者会見で発表した、二〇〇一年度の「映画概況」を報道したものです。

 昨年、映画館への入場人員は、一億六千三百二十八万人となり、前年より二割の増加。八六年以来、十五年ぶりに一億六千万人台を回復し、数字だけを見れば活況です。

 また、興行収入も、前年より17・1%増えて二千一億五千四百万円となり、史上初めて二千億円台に乗りました。

 映画産業団体連合会の岡田茂会長(東映会長)は、「各社とも非常に良い調子でいっている。これは万々歳だ」と手放しの喜びようです。

 しかし、この映連の「映画概況」が示す数字には、安穏としてはいられない事実も含まれているのです。

 例えば、興行収入では、二千一億五千四百万円のうち三百億円以上を、日本映画空前の大ヒットとなった宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」の一作が占めています。邦画の興行収入でみれば38%以上です。邦画と洋画を含めた興行収入十位までは、「千と千尋〜」に続いて、「A・I・」「パール・ハーバー」「ジュラシック・パークIII」「ダイナソー」など、宣伝力を効かせたハリウッド映画がズラリと続き、日本映画で十位以内に入ったのは、「千と千尋〜」のほかは「劇場版 ポケットモンスター」のみです。

 さらに、「興行収入十億円以上番組」の日本映画十位までを見ると、「千と千尋〜」のほか、“ポケモン”“ドラえもん”“デジモン”“クレヨンしんちゃん”などのシリーズアニメが並び、十作品中六作品をアニメが占めています。日本の侵略戦争告発を斬新(ざんしん)に描いた「ホタル」(降旗康男監督)はあるものの、中高年のおとなのための作品をもっと、という声は切実です。

 四月には、文化庁に「映画振興に関する懇談会」が設置され、その「趣旨・目的」で、「長期的に日本映画の鑑賞人口や製作本数は減少傾向にあり、また、撮影所の閉鎖など映画製作を取り巻く状況も極めて厳しいことから、我が国文化から映画が消える日も遠くはない、と言われている」とのべています。「活況」と言うのは、早計でしょう。

製作現場の現状は

今、日本の撮影所は、いずれも存亡の危機にあります

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 日本の映画大手(松竹、大映、東映、東宝、日活など)が二〇〇〇年に封切りした邦画は、五十七本。一九六〇年に最高の五百四十五本を記録し、七〇年代、八〇年代と減って、九〇年代に百本以下に。映画大手は、映画製作から手を引き、製作の拠点の撮影所を放棄しだしています。

 松竹は、一昨年六月に大船撮影所を閉鎖。日活は、東京・調布市にある撮影所の横浜への強引な移転計画を発表。東映は、東京・練馬区にある大泉撮影所のオープンセット地五千二百八十七坪を三年前に売却したままです。

 松竹は、閉鎖反対運動の盛り上がりのなかで、二〇〇二年末までに、新しい撮影所をつくる、という協定を労組と結びました。

 ところが、松竹は、新木場に土地は買ったものの設計図も作らず、今年の一月になって、協定を白紙に戻すような提案をしてきました。これに対し、松竹闘争支援共闘会議が再発足。四月には、社会的に公約したことの破棄は許されないと会社の姿勢をただし、経営責任を追及しました。

 撮影所は、映画の製作基地であり、人材、職能を育成する“夢の工場”です。その撮影所をつぶすのは、映画づくりを放棄するに等しいこと。松竹の「釣りバカ日誌」(本木克英監督)や「たそがれ清兵衛」(山田洋次監督)は、他社の撮影所を借りてつくるという事態が生じています。

 映画大手は、シネマコンプレックス(複合映画館)の建設に熱中し、市場競争力の強いハリウッド映画で興行収入をあげようとしているのです。

復興へのとりくみ

映画人が支援策を掲げてがんばっています

 二〇〇〇年七月には、日本映画を活性化するために、日本俳優連合、映画演劇関連産業労組共闘会議など、映画の創造に携わる映画の職能や労働の九団体が、「日本映画振興基金案」をつくり、総合的な支援策を求めてきました。

 そのなかの一つ、映画演劇労働組合総連合は、この四月、日本映画の今日の危機の進行に急いで手が打たれるべきだと、「日本映画への緊急支援策」を打ち出しました。そこでは、撮影所への緊急支援、製作プロダクションへの支援、映画映像労働者の社会的地位の向上、国立フィルムセンターの拡充の四点を中心に要求しています。

 そして同じ四月には、「日本の撮影所を守る4・20映画人シンポジウム」が、東京・調布市の大映撮影所に百人以上の映画人が参加して開かれました。撮影所の機能を生かして新作をつくった経験や、撮影所を必死で守ってきた先輩映画人の労苦の継承、撮影所を事業として成り立たせている諸外国の教訓などが、活発に語り合われました。「国民や愛好者の声を生かす形での映画政策を国が率先してやらなければ」(俳優の玉川伊佐男さん)、「撮影所があれば良いものができるというわけではないが、レベルの高い優れた作品は、撮影所でつくられる」(神山征二郎監督)といった発言もありました。老朽化した設備の改修や職能の維持など、撮影所への緊急支援を求めるアピールを採択。国会議員やマスコミに届けられました。

日本共産党は…

映画政策を持ち、国会でも奮闘しています

 日本共産党は、「日本映画の民主的復興と発展のための提案」(76年)、「日本映画への公的助成の抜本的強化に向けて」(89年)など、折々に政策的方針を打ち出してきました。

 日本共産党の国会議員は、昨年施行された文化芸術振興基本法も活用しながら、映画人の要求を反映させようと、日本映画振興基金、後継者の育成、映画人の地位の向上など多岐にわたり、質問をくり広げています。

 この四月には、日本共産党国会議員団のなかに、「日本映画振興チーム」(責任者・西山登紀子議員)も発足させ、映画人の集いに参加したり、映画人との懇談を重ねたりしながら、要求の実現に尽力しています。


世界は民族映画を振興

日本映画復興会議代表委員 山田和夫さん

 「映画は民族の心に根ざす文化」をモットーに、世界の映画はハリウッドの圧倒的攻勢に抗して、民族映画の振興に力を入れています。フランスは、テレビ局の映画投資を含め、年間600億円以上の公的助成を映画製作に出して、昨年前半にはフランス映画がアメリカ映画を圧倒しました。

 おとなりの韓国では、アメリカ映画輸入自由化の要求に映画人、映画企業一体になって反対、同時に国の支援を受けて、ソウルに6ステージを持つ新撮影所をオープン。1999年には「シュリ」、2000年「JSA」、2001年「友へ」と人口の5分の1を動員、日本の「千と千尋の神隠し」級のメガヒットを毎年出す活況ぶりです。

 またオーストラリアでは、連邦と州の政府が民間企業と一体になって映画振興に力を入れ、新しい撮影所の建設を続々と進める一方、シドニーの国立映画・テレビ学校や各州立演劇学校で人材育成に尽力、メル・ギブソンやニコール・キッドマンらをハリウッドに送り出すまでになっているのです。

 ごく一部の実例ですが、撮影所の建設や人材育成など日本が学ぶべき点が多々あります。

 


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