日本共産党

2002年5月5日(日)「しんぶん赤旗」

人権擁護法案の問題点は?


 〈問い〉 いま国会で審議されている人権擁護法案は、反対も広がっているようですが、どんな問題があるのでしょうか。 (京都・一読者)

 〈答え〉 この間、国民に対する人権侵害を迅速・簡易に救済する新たな人権救済機関が多くの人から求められてきました。また一九九八年、国際人権規約委員会は、特に警察や出入国管理局の虐待から救済する政府から独立した機関の設置を日本に勧告しました。しかし政府が三月に提出した人権擁護法案は、▽人権救済機関の独立性の欠如▽報道機関や国民の言論・表現に介入▽職場の人権侵害は放置―など重大な問題をもつものです。

 今日最も重大で救済困難な、公権力の人権侵害に厳正に対処するには、独立した人権救済機関が必要です。ところが法案では、人権救済機関である人権委員会は法務省の外局で、事務局には法務省人権擁護局が横すべりし法務省と人事交流もします。地方事務所も法務省職員が兼務するなど、ほぼ一体です。

 法案では、報道機関の取材や報道が、私生活に関する事実を「みだりに報道」「過剰取材」などのあいまいな規定に触れると、人権委員会の「特別救済手続」の対象となります。とりわけ犯罪をおこなった政治家・公務員にかかわる報道や、被害者家族の取材で警察の怠慢・隠ぺいを暴いたストーカー事件のような報道が困難になります。表現の自由に介入し、国民の知る権利を奪うものです。

 また、広く国民の言論・表現活動も「差別助長行為」などの規定で規制対象とし、何が「差別的」かを委員会が判断します。言論・表現の自由や内心の自由への行政の介入です。

 さらに職場では、人権委員会の対象は「不当な差別的言動」などに限られ、雇用機会均等に反する場合などは不十分な調停などにゆだねます。雇用の場での人権救済が中心課題の欧州などと大きな違いです。大企業の女性差別や思想差別など深刻な人権侵害を放置し「人権擁護」とは名ばかりです。

)〔2002・5・5(日)〕

 


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