2002年5月2日(木)「しんぶん赤旗」
十五年前、兵庫県西宮市の朝日新聞阪神支局が散弾銃を持った目出し帽の男に襲撃され、居合わせた記者の一人が死亡、もう一人が重傷を負った事件が、あす三日の午前零時で時効となります。
新聞社支局に公然と押しかけ、問答無用の銃弾で記者の生命を奪った卑劣な殺人テロ事件です。その犯人の逮捕もできず、真相も明らかにできないまま時効を迎えたことは、法と正義にかかわる深刻な事態といわなくてはなりません。
阪神支局の事件をふくめ、一九八七年から八八年にかけて「赤報隊」を名乗る犯人による朝日新聞にたいする襲撃事件が相次ぎました。
事件のたびに「赤報隊」名の犯行声明が通信社など報道機関に送付され、「この日本を否定するものを許さない」「ほかのマスコミも同罪である」などという脅迫文を並べたてました。
犯行声明が実際に事件とどのような関係をもつのか、その動機、真相はいまだ明らかではありませんが、こうした脅迫が報道機関に相次いだこと自体がきわめて重大です。
私たちは、暴力と脅迫によって言論と言論機関にみずからの意思を押しつけ、言論・報道の自由を根底から否定する蛮行を満身の怒りを込めて糾弾します。同時に、暴力による言論威圧を二度と繰り返させないためにも、あらためてテロ・暴力に屈せず真実の報道を貫く決意を固めるものです。
こうした事件が、右翼・暴力団による日本共産党や民主的団体への日常的な妨害活動が事実上野放しにされるなど、日本の国家権力・警察の右翼に甘い体質のもとで助長されてきたことも見過ごせません。
それが右翼の乱暴ろうぜきをエスカレートさせることになりました。
九〇年一月には、昭和天皇について「天皇に戦争責任はある」と明言してきた本島長崎市長が、白昼、市役所玄関で右翼に銃撃され重傷を負いました。同年四月には、新天皇の即位儀礼に反対する声明を発表したフェリス女学院大学の弓削達学長宅に銃弾が撃ち込まれる事件が起きました。
暴力的な威圧による言論抑圧がまかり通るなら、言論・表現の自由は守られず、言論の自由を前提に成り立っている現代社会は根底から崩れ去ります。
暴力やテロだけではありません。今日、権力や経営に影響力をもつスポンサーなどメディアの強大な支配勢力に気兼ねして、筆を鈍らせるようなことも、相手の思うつぼにはまるものです。権力におもねた反共主義も同じです。
いま小泉内閣は、個人情報や人権の保護を口実に、政府が言論・報道の自由に介入し国民の知る権利を侵害するメディア規制の法案を国会に提出しています。また、有事を口実にNHKを首相の統制下におき、国民を動員する協力機関に組みこむことを盛り込んだ有事法制の成立も策しています。
言論・報道の自由を守るということは、これを敵視し規制しようというものとたたかうことであり、権力や暴力に屈せず真実の報道を貫くということです。
私たちは、どんなテロ・暴力にも屈せず、国家による最大のテロである侵略戦争反対を主張し続けた「赤旗」創刊以来の伝統を受け継ぎ、真実の報道に徹するとともに、言論への暴力や規制を許さぬ世論を広げるために力をつくします。