2002年4月29日(月)「しんぶん赤旗」
【ベルリン27日坂本秀典】ドイツ旧東独部テューリンゲン州エアフルトのギムナジウム(中・高等学校)で二十六日に起きた銃乱射事件は、ドイツ社会に大きな衝撃を与えています。その社会的背景や、こうした問題をどう解決するかの議論が始まっています。
事件の社会的背景として、テレビ、ビデオなどの暴力・殺人場面が日常生活に入り込み、青少年に影響を与えているとの指摘が行われています。
日本のNHKに当たるARDやZDFといった公共テレビも、家族だんらんの時間帯に、過激な殺人や暴力、セックスシーンを流すこともあります。こうした感覚は、日本人にとって信じがたいものがあります。
「米国での同様な事件の映像や、映画、ビデオの際限のない暴力シーンが影響を与えているのは否定できない」(二十七日付ウェルト紙)「毎日のように暴力と武器を使った映像が流され、まひさせられてしまっている。そして、ある者はその武器を手にすると極端な暴力の道を突っ走ってしまう」(同日付フランクフルター・アルゲマイネ紙)
「青少年に危険な影響を与えるビデオや『殺人者ゲーム』をただちに禁止するべきだ」(シュトイバー・バイエルン州首相)といった主張も。
パレスチナでの青少年の自爆テロが「殉教の死」とたたえられる最近の風潮も、事件に影響を与えた可能性がある(精神分析学者)とされます。
今回、犯人は銃の所持登録をしていましたが、多数の銃が不法に国内に持ち込まれ、危険性が増しているとされます。
ドイツでは、学校での銃を用いた事件が続いています。二〇〇〇年三月にはバイエルン州ブランエンベルクで十六歳の私立学校生徒が五十六歳の教師を銃撃し、死亡させる事件がありました。今年二月にはバイエルン州ミュンヘン近郊で、退学させられた職業学校の生徒が校長を含む三人を射殺した後、自殺する事件も起きています。
報道によれば、登録された個人所有の銃は七百二十万丁。うちスポーツ用としては百六十万丁が使用されています。しかし、銃の不法持ち込みは二千万丁にも達しているとされます。警察官労組(GDP)のコンラート・フライベルク委員長は、「ドイツへの持ち込みは、南東・東欧の内戦直後から急増した」と述べています。
内務省では、犯人が銃所持許可証をもっていたことを重視し、新たな銃所持法を検討するとしています。
教育現場でも事件を考える動きが始まっています。教育学術労働組合(GEW)は二十七日、全国四万の学校に対し三十日の火曜日を「熟慮の日」として「暴力とその原因について生徒とともに考えよう」と呼びかけました。与党社会民主党(SPD)は、「学校におけるいっそうの社会教育的な対応が必要だ」との見解を表明しました。