日本共産党

2002年4月23日(火)「しんぶん赤旗」

仏大統領選第1回投票

シラク氏とルペン氏決選投票へ

「共存」政権に国民の不満


 【パリ21日山田俊英】十六人が立候補したフランス大統領選挙(二回投票制)の一回目投票が二十一日行われ、即日開票の結果、暫定集計で現職の保守ジャック・シラク候補(共和国連合)が一位、極右、国民戦線のジャンマリ・ルペン候補が二位になり、両候補の間で五月五日に決選投票が行われることになりました。首相のリオネル・ジョスパン候補(社会党)はルペン候補をわずかに下回り、一九六九年以来三十三年ぶりに社会党候補が大統領選の決選投票に進出できないことになりました。

 棄権は、大統領直接選挙制になった一九六二年以来、一回目投票としては最も多い27・6%。

 ジョスパン氏は同夜、パリ市内の選挙本部で敗北を認め、大統領選終了後、責任をとって政界から引退すると発表しました。極右候補の決選進出は大きな衝撃を与えています。

 得票を政党別に見ると、国会に議席を持つ保守、左翼とも後退しました。棄権の多さと共に、国会に議席のない極右と極左政党への支持増加という形で、大統領が保守、政府が左翼連合という「共存」政権の現状に対する有権者の強い批判が示されました。

 シラク氏は九五年の前回選挙(20・8%)を下回る19・7%。歴代大統領が一回目投票で得た支持としては最低です。ジョスパン候補は前回選挙の23%から16・1%に大きく後退。前回(15%)より支持を増やし17%得票したルペン候補に抜かれました。国民戦線から分かれた共和国民運動のメグレ候補と合わせると、極右候補の合計得票は約20%に達しました。

 極左の候補三人の得票合計は11・6%。前回の5・3%から倍増です。「資本主義反対」「整理解雇の禁止」などのスローガンを掲げるとともに、左翼連立政権を「資本家の政府」と批判し、失業や不安定雇用に悩む労働者から支持を集めました。

 フランス共産党のロベール・ユ候補の得票率3・4%は前回同氏自身の得た8・6%の半分以下。一九二〇年以来、同党が参加した主要選挙で最低。今回十六人の候補者中、十一番目でした。


移民排斥、死刑復活を主張

極右の国民戦線

反共主義唱えるルペン氏

 【パリ21日山田俊英】国民戦線(FN)はジャンマリ・ルペン氏(73)が一九七二年に創立した政党。一九七四年、大統領選挙に初立候補した時は0・74%しか得票できませんでしたが、「労働者の党」と売り込み、移民の排斥や欧州統合反対を主張して支持を伸ばし、八八年大統領選で14%、九五年同選挙で15%とそれぞれ四位に浮上しました。

 今回選挙でルペン候補は「雇用はフランス人優先」「最低賃金以下の移民労働の防止」など一見、労働者のことを考えるような政策を掲げる一方、犯罪取り締まりの強化を打ち出し、死刑復活といった欧州連合(EU)条約に反する主張もしました。

 フランス第一の立場から欧州統合に反対します。通貨統合を決めたマーストリヒト条約と、域内で国境を越えた人の自由な移動を定めたシェンゲン協定の廃棄、EUの執行機関である欧州委員会の解体を要求。経済、通商ではフランスの産業を守るため保護主義をとるべきだといいます。

 移民についてはこれ以上の受け入れを禁止し、パスポートを持たなかったり、滞在期限の切れた不法移民については即時追放すべしとしています。

 支持者の多くは非管理職の労働者です。国境近くで移民の多い南部アルプマリティム県(ニース市など)やブルーカラー労働者の多い北部カレー地方で今回18―20%を得票し、シラク氏を抑えて第一位に立ちました。

 ルペン氏は青年時代、フランスの植民地防衛のためベトナムやアルジェリア戦争に志願して従軍した経歴があり、強い国家主義と反共主義を主張しています。


若者ら極右進出に抗議

ユダヤ系、アラブ系住民に衝撃

 【パリ22日山田俊英】極右ルペン候補の大統領選決選投票進出が報じられると、二十一日深夜から、フランス各地で抗議行動が始まり、全国に広がりつつあります。

 パリではフランス革命の象徴的場所であるバスチーユ広場に「ルペンに反対」などと書いた即席のプラカードや布を持った若者が大勢判明直後から集まり始め、二十二日未明には約一万人が「FN(国民戦線)を倒せ」「われわれは移民の子だ」と声をあげながら、周辺を行進しました。

 トゥールーズでは七千人、ストラスブールとレンヌで四千人が市内の広場に集まり、マルセイユ、リヨンなどいくつかの都市での深夜から朝にかけて、抗議行動が展開されました。

 二十二日には、ランス市の高校で緊急の討論会が開かれ、六百人の生徒が抗議のため授業を放棄して街頭を行進しました。

 人権団体や警察官労組は、シラク候補らが行った犯罪対策強化の選挙宣伝が極右を利することになったと批判しています。

 人権同盟のミシェル・トゥビアナ会長はフランス通信(AFP)に「犯罪問題をとりあげた誇大宣伝の結果だ」と語りました。UNSA警察官労組のマサナ書記長は「多くの候補者が犯罪対策のことしかいわなかった。ほかにも失業対策など重要な課題があったはずだ」と述べました。

 仏ユダヤ人組織代表評議会のクキヤマン会長が「ショックだ」と語ったほか、アラブ系住民の団体も衝撃を表明しました。

 


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