日本共産党

2002年4月23日(火)「しんぶん赤旗」

市民が主役の「大どんでん返し」(地元紙)

秋田・湯沢 共産党員市長誕生

「公用車で飲み屋に…こんな市政変えて」

小泉「改革」への不信背景に


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コミュニティー放送「FMゆーとぴあ」の菅奈保美パーソナリティーのインタビューにこたえる鈴木俊夫新湯沢市長=22日

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 秋田県南部の湯沢市(人口三万五千人)に二十一日、全国で三人目の日本共産党員市長が誕生しました。市長選告示の三週間前に「ひらかれた市政をつくるみんなの会」から立候補を表明した鈴木俊夫氏(51)=前日本共産党県議=が一万一千七百三十二票を獲得、自民・公明両党の推薦を受け三期目をめざしていた現職の二坂信邦氏(55)に、二千票余の差をつけて当選したのです。一夜明けた二十二日、鈴木氏は地元テレビ三局、ラジオ一局に出演するなど、静かな街に興奮の余韻が続いています。(秋田県 桑高豊治記者)

無党派の市民が告示3週間前に擁立

「鈴木さんにためらいなかった」

 同市の商店街の一角にもうけられたみんなの会事務所。二十一日深夜、「鈴木当選」の知らせが届くと同時に「バンザイ」「すごい、すごい」の歓声が飛び交いました。激しかった選挙戦の健闘をたたえ、抱き合い、涙する光景もみられました。

 みんなの会の加藤忠一事務局長(元連合湯沢議長)は、「市長と土建業者との結びつきを市民はよく見ていた。業者の思いのままになってきた市政を変えなければ、が共通の声だった」と振り返ります。

 市発注工事の大部分を受注する数企業が相手陣営の後援会と選対の中枢を占めました。選挙戦最終盤には社長らが黒塗りの乗用車に乗り込んでローラー作戦を展開する姿もみられました。

 加藤事務局長は、「それでもひっくり返らなかった。これは市民の良識の勝利だ。市民を誇りに思う。信じてよかった」と話します。

 みんなの会の母体は、昨年十一月「七人の“個性集団”からスタート」(加藤事務局長)しました。うち六人は八年前(四年前は無投票)の選挙で二坂陣営の中軸となった人たちです。七人は「土建屋政治は終わらせるべきだ。なんとしても市政を変えようと思った。日本共産党の市議二期、県議二期をつとめた鈴木さんの擁立にはなんのためらいもなかった」といいます。

 日本共産党同市委員会の加藤忠三委員長は、「いっしょに選挙をたたかったことのない人たちだったから、初めはとまどいもあった。しかし、市民の期待にこたえるのが日本共産党だと、この一年間で迎えた約二十人の新入党者をふくめがんばった。民主主義を前進させる党の役割が実感できた選挙だった」と話します。

自公陣営の反共攻撃に市民反発 

 選挙戦で、鈴木氏とみんなの会は、市長の政治姿勢として▽市街地から山田地区に雄勝中央病院を移転し、福祉施設などを建設する「雄湯郷(ゆうとぴあ)事業」の再検討▽黒塗り公用車廃止、市長交際費半減、浮いた財源を雇用対策にまわす―を、政策としては具体的な介護保険料・利用料の減免や就学前乳幼児医療費無料制度の所得制限撤廃、などを訴えました。

 市民からは、「不況・リストラによる『痛み』で市民が大変なときに、飲み屋にまで公用車を乗り回すのか。こんな市政を変えてほしい」との怒りや「よく立候補してくれた。うれしい。くらしを応援する市政に期待する」などの声がたくさん寄せられました。

 市民の間には小泉政治への失望も広がっていました。

 同市関口の石材業者の男性(57)は、「自民党をつぶすといった小泉首相は、不況をひどくするばかりで従来の自民党政治そのもの。その自民党をよしとする二坂市長も許せない気持ち」と心情を語ります。そして「無党派の人びとにも推される鈴木さんを勝たせたかった」と話していました。

 ある商店主の妻(60)は、「(小泉)『改革』って、景気を良くすることでなく小さな商店をつぶすことなんだと思うようになった。こういう政治は変えなければ」と語っていました。

 二坂陣営は、「無所属で立っても鈴木は共産党」「甘い言葉にだまされるな」と攻撃してきました。

 これにたいし、みんなの会代表委員の岩井川皓二市議(無所属)は、「私たちがあえて鈴木氏に無所属で立候補してもらったものだ。相手陣営はきわめて古くさい。市民の意識がまちがいなく前進していることをわかっていない」と訴え、反撃しました。

 「甘い言葉…」を聞いたある男性も、「八年も市長をやって政策を語れないのか」と二坂陣営の宣伝にあきれはてていました。

 選挙結果について「秋田魁新報」は「まさかの大どんでん返し」と書きました。「鈴木氏が共産党の県議二期を務めたとはいえ住民の多数は保守系。不満はあるが結局は現市政の二坂氏に投票する人が大半ではないかとみられていたから」です。

 しかし「鈴木氏勝利の予兆はあった」と同紙は指摘します。「ただでさえ市経済の地盤沈下が続く中、昨年夏のIT不況が直撃。ハローワーク湯沢の有効求人倍率は〇・二一まで落ち込んでいる。やり場のない閉そく感が市民の中に充満していた」「中央政治で噴出する疑惑に対する嫌悪感、現市政への不信感も重なって、刷新を求め」たというのです。

 鈴木氏が「温和で飾らぬ行動派」で、「出稼ぎした経験もあり、不況に苦しみ、悩む市民を見る目は温かい」と、日本共産党議員としての人望を集めていたことも多数の支持を得た背景としてあげています。

地元FM番組に出演「注目ですね」

 市民は日本共産党員市長誕生をどう受けとめているのでしょうか。

 三十代のタクシー運転手の男性は、「鈴木さんでやり直そうというのがあったみたい。お客さんの間でもよく話題になっていて若い人はみんな鈴木さんに投票したんじゃないかな。共産党だからっていうのは関係なかったですよ。というより、反自民という気持ちが強かったんじゃないですか」と話しています。

 ブティックの女性店主(48)は、「俊夫さんに期待している。日本共産党員市長はいい。清潔だし平和のためにがんばるし、いまは市民が共産党をもり立てる時代だ」と話します。

 鈴木新市長は、湯沢市と雄勝郡(一部平鹿郡含む)をエリアとするコミュニティー放送「FMゆーとぴあ」の番組で、パーソナリティーの「日本共産党市長誕生が注目されています。これからの行方は」との質問に答えました。

 「市議二期、県議二期をつとめたが日本共産党だからスジを通せたと思っている。(自民党)政治の世界では業界との癒着などが横行していますが、日本共産党員だということは悪いことをしない保障だと思ってください」

 


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