日本共産党

2002年4月12日(金)「しんぶん赤旗」

「いじめ死」なくして! 娘を亡くした親が訴え

横浜の小森さん

言葉の暴力は凶器になる

伝えたい「優しい心が一番大切」


 「優しい心が一番大切だよ。その心を持っていない、あのコたちの方がかわいそう」――。横浜市の高校一年生だった小森香澄さん(15)は、こんな言葉を残して自らの命を絶ちました。一人娘を亡くした母親の美登里さん(45)は、「言葉の暴力が命を奪う凶器になることを知ってほしい」と、「いじめ死」をなくす運動を夫とともに続けています。

 一九九八年七月二十七日、高校入学四カ月で香澄さんは亡くなりました。

 音楽好きの両親のもとで育った香澄さんは、あこがれていた吹奏楽部に入部。生き生きとトロンボーンの練習を始めた直後の四月下旬には部活を休み始め、学校にも行けない日が多くなります。親には理由を話しませんでしたが、受診したメンタルクリニックの医師に「部活のメンバーの、きつい言葉に耐えられない」と打ち明けました。美登里さんは、担任や部活顧問などに何度も状況を伝え、改善を訴えました。

娘の言葉が今も

 「“そんなにつらいなら部活をやめたら”と、香澄に何度も言いました。“部活をやめたら学校へ行く意味がない”と答えるので、“学校をやめてもいいじゃない”と言ったら黙ってしまって…」。

 自死の数日前、母子で散歩したとき「優しい心が一番大切だよ」と話した香澄さんの言葉が、今も美登里さんの脳裏から離れません。「死を選んだのではなく、心をぼろぼろに傷つけられた結果だ、というのが実感です」

 「あの日」から四年近くがたちました。娘を亡くした悲しみは薄らぐことがありません。「いつも“今が一番つらい”と思います。これ以上落ち込むことはないだろうという“底”が見つかりません」

親たちと交流し

 美登里さんは、多くの人たちとのつながりのなかで生きる意欲を取り戻してきました。とりわけ、同じく子どもをいじめで亡くした親たちとの交流は大きな支えとなりました。

 香澄さんの五カ月後に、いじめと恐喝を受けて亡くなった福岡県の高校生、古賀洵作(しゅんさく)さん(16)のお母さんとは、二〇〇〇年十二月に「洵と香澄のハッピーバースデー」という展示会を横浜市で開き、五日間で千八百人が入場しました。「今日ここに来て、もう二度と集団でいじめるようなことはしないと思いました」「いじめている方は軽い気持ちでも、されている方はすごくつらい。いじめを受けている人がいたら絶対に止める」などたくさんの声が寄せられました。

メッセージ発信

 美登里さん夫妻は、展示会をはじめ、メッセージやイラストをちりばめた「手製のはがき」や香澄さんの詩に曲をつけたCD「窓の外には」の制作、手記『優しい心が一番大切だよ―ひとり娘をいじめで亡くして』(WAVE出版)の発刊など、さまざまな形で社会に発信。昨年夏には「いじめ死」の事実の究明と加害者からの謝罪を求めるために民事訴訟を起こしました。裁判を支援する「こいしの会」の会員は、三百人近くに広がっています。

 「優しい子が生きにくいのが今の社会です。“やられたらやりかえせ”と教えなければならないとしたら、あまりにも悲しすぎます。優しいだけでどうしていけないのでしょうか。一人ひとりの個性を認めず、自分たちと違うからと、いじめる社会の方がおかしい。“優しい心が一番大切だよ”という香澄のメッセージを、一人でも多くの人に伝えるのが、親であるわたしたちの務めです」

 


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