日本共産党

2002年4月10日(水)「しんぶん赤旗」

けいざい そもそもワールド

株の空売りってなに?


 「博打(ばくち)の場になっている」(塩川正十郎財務相)といわれた株式市場。政府は「空売り」の規制を強化しました。日ごろあまりなじみのない株取引で登場する「空売り」とは、いったいどんなものなのでしょうか。(石井光次郎記者)

借りて株を売るの?

 株の売買といえば東京証券取引所(東証)。証券会社が軒を連ねる東京・日本橋兜町をたずねました。経営企画部の飯村修也広報課長に聞いてみると…。

 「『空売り』というのは、株を持っていない人が、借りて売ることです」とのこと。しかし、「持ってない株を売る」といわれても、そんなことができるのでしょうか? どこで株を借りるのかとたずねると、こんな答えが返ってきました。

 「一般の『空売り』は、機関投資家が貸株市場で株を借りて売ります。それから、個人が証券会社を通して証券金融会社から借りる信用売りも、借りて売るという意味では『空売り』と同じです」

 「空売り」をするのは機関投資家(保険会社や信託銀行など)と個人の二通りあることはわかりました。しかし、機関投資家は大量の株を所有しているのに、なぜ借りてまで売るのでしょう。

 「株価が下がるとき売って、値下がりした後で安く買い戻すことで、利ざやを取る」という「空売り」の説明でピンときました。

 確実にもうかりそうなら、自分の株だけでなく、借りられるだけ借りて売る方がもうけは大きいし、売りまくれば値下がり幅が大きくなって、利ざやまで大きくなるかもしれません。

だれが株を貸すの?

 ここまでくると、次に知りたいのは顧客に株を貸す貸株市場と証券金融会社です。東証のすぐ向かいにあるのが日本証券金融会社です。同社の企画部の説明を聞きました。

 「機関投資家の中にはすぐに売買しない株を貸し出して、手数料を手に入れたいところがあります。証券金融会社も、買い方の顧客から担保として預かった株があります。貸株市場では、機関投資家同士で貸し借りし、証券金融会社は個人顧客の注文を受けた証券会社の求めに応じて貸し出すのです」

今度の規制で効果は

 それでは、今度の規制強化はどんなものだったのでしょうか。東証の飯村さんは「機関投資家と個人の『空売り』それぞれに新しい規制がかかります」といいます。

 まず、機関投資家が株価が下がっているときに「空売り」する場合、直近の値段より高く売らなければいけないことです。安く売って、値崩れさせるような売り方を禁止したのです。

 昨年末から、ヘッジファンド(国際的投機集団)が「空売り」注文を出すことの多い外資系証券会社が、悪質な「空売り」利用を繰り返していたことがきっかけになりました。

 信用取引にたいしては、これまで一部の銘柄を除いて無料だった貸株の手数料を0・4%にすることにしました。日本証券金融会社は、「買い方と売り方のコスト負担のバランスをとる」ため、新たな貸株料を五月から実施すると説明しています。

 規制強化で株式取引にどんな効果があったのでしょうか。

 政府の発表直後から平均株価は一万一千円前後に回復しました。金融機関系の研究所のエコノミストは、「三月の決算対策の株価維持のきっかけにはなった」と分析します。

 しかし、「先回りしてもうけようといういやしいやつ」(塩川財務相)が利ざやをとる手段になった「空売り」そのものへの効果については、「もうけるための“技術”は次々に新しくなる。今度の規制だけで市場が安定するとは考えられない」と悲観的です。

 


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