日本共産党

2002年4月8日(月)「しんぶん赤旗」

13都道府県十数業者

とまらない食肉偽装

「やり得」放置 政府の責任


 輸入牛肉を国産と偽装して国に買い取らせていた雪印食品。その後、輸入肉を「国産」などと偽るニセ表示は、スターゼン(ゼンチク)、全農チキンフーズなどつぎつぎ大手食肉会社にも飛び火し、長年にわたって偽装がおこなわれてきたことが明るみにでてきました。消費者、畜産農家の怒りは、ニセ表示が「やり得」ともいえる食品表示制度の欠陥を放置してきた政府にもきびしく向けられています。

大手から中小まで

 食肉表示の偽装が全国でぞくぞくと発覚しています。

 おもな食肉業者のニセ表示は、これまでに、十三都府県、十数業者にのぼっています。ひどいところでは、販売開始以来続いていたケースや、十年以上にわたって常態化しているところもありました。

 その種類も牛肉、豚肉、鶏肉。量はざっと千トン近くにのぼります。

 食肉業界大手から、地方の中小の食肉会社まで、業界全体にニセ表示が横行していたことをうかがわせます。

 その手口も組織的で、きわめて悪質です。

 たとえば、大手商社丸紅の子会社、丸紅畜産の仙台営業所(宮城県利府町)はブラジル産の輸入鶏肉をいったん宮城県内の加工業者に販売。その後、国産の表示を付けた袋に詰め替えて買い戻し、同県内のスーパーや量販店に販売していました。

 全農グループの全農チキンフーズ(埼玉県戸田市)は輸入鶏肉を国産と偽って計約六トン販売。また通常飼育のブロイラー(若鳥)を「無薬飼料飼育」として計約三百八十トン販売していました。

 食肉会社ヨコオ(佐賀県鳥栖市)は自社ブランド鶏肉四十九トンに別の鶏肉を混入。若鶏冷凍加工品三百五十五トンで国産肉を使用する契約に違反して外国産の鶏肉を使用していました。さらに九一年から賞味期限書き換えなどのニセ表示を行っていました。

企業名の公表なし

 日本消費者連盟の水原博子事務局長は、こう怒りをぶつけます。「ここまで業界に偽装表示がまん延しているとは、消費者は考えていなかった。ひどいですね。これを許した政府の対応も許せません。JAS法、公正取引委員会など、たしかに罰則や表示の規制がありますが、業界に甘い制度で、違反があっても企業名すら公表されません。これが温床になったと思います。消費者無視の、背信行為もいいとこです。どう安くするか、経済性・効率性ばかり工業製品のように優先して追求して、政府に消費者の安全を守るという姿勢が感じられない」

 JAS法にもとづく日本農林規格などの日本の表示制度は、違反があってもただちに罰則はかからないしくみ。ニセ表示「やり得」の温床にもなってきました。違反があっても、行政指導ベースの大臣指示に違反企業がしたがえば、企業名も公表すらされない制度です。

 ニセ表示をチェックする国の検査体制もきわめて貧弱で、事実上、内部告発だのみというのが実態です。

 雪印食品の偽装表示事件後、偽装表示の食品メーカーがぞくぞく明るみにでていますが、農水省品質課は「農水省としては、法律上、大臣指示段階までは企業名は公表しないことになっている。しかし、メーカーの了解をとった範囲で公表するようにしている」と釈明。企業がノーといえば、名前が公表されない業界に甘い態度をとっています。


雪印食品の食肉表示偽装以後明るみにでたおもなニセ表示


 〇食肉加工販売会社カワイ(香川県高松市)…同県産牛肉の詰め合わせ商品に米国産を使用

 ○食肉卸大手会社スターゼン…白豚を黒豚として販売。乳牛を佐賀白石牛と表示して販売

 ○食肉卸売業三河畜産工業(愛知県豊田市)…岐阜県産の豚肉を鹿児島県産黒豚と表示

 ○食肉加工・卸会社東伯新興(鳥取県東伯町)…同町産として販売した牛、豚肉に町外産を混入

 ○鹿児島くみあいチキンフーズ(鹿児島県)…外国産鶏肉を国内産として出荷。さらに外国産鶏

  肉約6トンで賞味期限などを偽装表示

 ○丸紅畜産仙台営業所(宮城県利府町)…輸入鶏肉を偽装表示して販売

 ○茨城玉川農協(茨城県玉里村)…県外産豚肉を入れたにもかかわらず「茨城産」として表示

 ○食肉卸会社ヒラタ(岡山市)…材料の産地を偽装した業務用カレー販売

 ○食肉会社ヨコオ(佐賀県鳥栖市)…佐賀県自社ブランド鶏肉に他県産鶏肉を混入し49トン販

  売、外国産鶏肉355トンを国産若鶏冷凍加工品といつわる

 ○JA中津下毛(大分県中津市)…交雑種を黒豚として偽装表示。

 ○川西食品・尼崎食肉組合(兵庫県尼崎市)…学校給食に豪牛肉を混入した国産牛肉を1025

  キロ納入

 ○全農チキンフーズ(埼玉県戸田市)…輸入鶏肉を国産と偽って計約6トン販売。通常飼育のブ

  ロイラーを「無薬飼料飼育」として計約380トン販売。冷凍鶏肉約45トンの賞味期限を改

  ざん。佐賀県産として販売した鶏肉加工品に他県産を使用


「食の安全」」抜本強化を

共産党の提言

 日本共産党は、悪質な食品の表示偽装などやBSE問題など食の安全を脅かす事件が相次いでいることにたいして、食品衛生法の改正案として、食の安全にたいする消費者の権利を明確にした「食の安全性確保等に関する法律」要綱を三月十五日に発表。食の安全行政の抜本的な強化を提起しています。


対象外牛肉

買い取り業者公表へ

農水省 検査方法を全箱開封に

 BSE(狂牛病)問題で、昨年十月の全頭検査前の食肉買い取り制度で、農水省生産局畜産部食肉鶏卵課は七日までに、対象外の牛肉を国に買い取らせていた業者名を今月末をめどに公表をすることを明らかにしました。

 これまでに、雪印食品の表示偽装のほか、新たに業界大手の日本ハムが、買い取り対象外の牛肉を国に買い取らせていたことがわかっています。

 同省の検査で、これまでに買い取りの対象外になる牛肉は計五トンにのぼりました。これら対象外の牛肉を申請した業者は十一社。金額は三百五十三万五千円になります。六都府県の九倉庫に保管されていました。雪印食品のほかに、日本ハム(申請約九百四十トンのうち約十キロ)が対象外の骨つき肉を国に買い取らせていました。

 同省は二月八日から検査を始め、二百五十九倉庫、二万二千三百六ロットの検査対象の牛肉のうち、三月二十四日時点で、六十九倉庫、三千二百三ロットを検査しました。

 検査のなかで、買い取り対象外の牛肉があいついで発見されたことから、同省は、検査方法を、抜き取り方式から、全箱を開封して調べることを明らかにしました。

 


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