2002年4月2日(火)「しんぶん赤旗」
三月三十一日投票の横浜市長選で、自民党、公明党、社民党、保守党などが相乗りした現職の高秀秀信氏が敗北し、前衆院議員の中田宏氏が当選したことに衝撃が走っています。(神奈川県・岡田政彦記者、南関東総局・羽室音矢記者)
「市政刷新求めた有権者」(「神奈川」)、「鈴木・加藤氏疑惑追い風」(「東京」)、「政府・与党に衝撃」(「読売」)―一日付の新聞各紙は、一面トップで選挙結果を大きく報じました。
「自民、敗北の連鎖恐れる」(「朝日」)とし、引き続く京都府知事選(七日投票)、衆院和歌山二区、参院新潟選挙区の補欠選挙(二十八日投票)に各紙が注目。
「特に京都府知事選は自民党などが相乗りする現職に疑惑追及の急先ぽうだった共産党が挑戦する構図。現職敗北なら、鈴木氏の後見役である京都選出の野中広務元自民党幹事長ら同党幹部には大きな打撃となる」(「毎日」)と指摘しています。
選挙戦で、高秀陣営は、自民党の山崎拓幹事長が、横浜市長選・京都府知事選は「厳しい選挙」と危機感を燃やし、党所属衆院議員らに横浜・京都に応援に入るよう文書(三月二十二日付)で檄(げき)を飛ばし、石原行革相ら現職閣僚、石原東京都知事らが相次いで応援。建設業協会も連日、総決起集会を開くなど、業界をあげて必死のテコ入れをはかりましたが、敗北を防ぎ止めることはできませんでした。
小泉首相は一日、「時代が大きく動いているんだなあ、と実感した。現状ではダメだという横浜市民の気持ちの表れだ。変化を求めているんだなあ(と感じた)」と首相官邸で記者団に語らざるをえませんでした。
鈴木宗男、加藤紘一両衆院議員の疑惑など自民党の腐敗政治、市民不在の相乗り政治への有権者のきびしい審判が、日本の政治全体を揺るがし始めています。
「横浜市は下水道料金が高いし、市民から税金は取る一方で、やることがなっていない。もう市長を新しい人に変えた方がいいと判断した。横浜も国も財政赤字で、みんなそのままにして許せないよ」(中田氏に投票した都筑区在住の男性、五十二歳)
「小泉首相は口先だけ。自民党は人気がないよ。巨額の市の借金を正してほしい。共産党も最近はよい。コツコツがんばってほしい」(中田氏に投票した港南区在住の七十歳男性)
開票から一夜明けた横浜駅西口では市民からこんな声が聞かれました。
市内を走るバスの車中(戸塚区)でも、「横浜市長も代わって、これで小泉首相がやめれば、景気もよくなるのでは…」(男性)と話題になっていました。
変化を求める有権者の大きなうねりが、投票率を39・35%と前回より5・24ポイント押し上げ、現職落選へとつながりました。
投票を終えた有権者を対象にしたマスコミ各社の出口調査では、無党派層の五〜六割が中田氏に投票。無党派層が多く、中田、高秀両氏の地元でもある青葉区では、投票率が10ポイントもアップし、中田氏が得票率67・95%を占め、高秀氏の21%の三倍以上に達しました。
こうした流れを生み出すうえで、日本共産党と広範な市民が推薦した松川康夫氏の論戦が大きな役割を果たしました。
松川氏は、中田氏が立候補を表明する前から、一貫して自民党の腐敗政治をきびしく告発。高秀自民党市政のもとで、福祉・教育などの行政サービスが、政令市のなかで最低水準になってしまったこと、その一方で「みなとみらい21」など浪費と環境破壊の巨大開発に熱中する市政の実態を批判。「巨大開発を抜本的に見直し、福祉の改善を」と力を込め、特別養護老人ホームの入所待ち解消、市立定時制高校の存続・充実など、具体的な政策を訴えぬきました。
その結果、選挙終盤には、高秀陣営も「福祉」「環境」を強調。中田氏は、「すぐに取り組む3つの速攻政策」を発表し、「環境対策」「子育て対策」「福祉対策」をあげ、「特養、デイケア施設の大幅拡充」や、「(保育所の)待機児童を早期に解消」と公約するに至りました。
中田氏は、昨年の首相指名選挙で小泉自民党総裁に投票。「小泉総理が、改革路線を進める限り、私は応援勢力として頑張っていきたい」(ホームページ)と、「不良債権の早期最終処理」でも「歴代内閣にはなかった決意を感じます」(同)とベタぼめしました。また、選挙前には首相官邸に小泉首相を訪ね、激励を受けていました。
松川候補と広範な市民、日本共産党が共同した果敢なたたかいのなかで、建設省事務次官から横浜市長に天下った高秀市長が敗退し、「福祉」「子育て対策」なども市民に公約した中田氏が当選。市民要求実現の運動で、これらの公約実行を迫っていくことが求められています。