日本共産党

2002年4月2日(火)「しんぶん赤旗」

ここが重大 有事立法

「米軍有事」が「日本有事」に

周辺事態との関係


 政府は有事立法の四月上旬の国会提出をめざし、作業を急いでいます。平和憲法を真っ向からじゅうりんし、「戦争のできる国家体制づくり」をねらう有事立法。それが抱える矛盾と問題点をシリーズで見ていきます。

 政府・与党は、有事立法の発動対象を「武力攻撃事態」と説明します。“日本が攻撃を受ける、つまり「日本有事」のための法律だから、多少の権利制限も我慢してくれ”というわけです。この説明は、果たして本当でしょうか。

対米支援が引き金に…

 「わが国に(他国が)着上陸してくるような事態が予想される将来に起きるなんて、私だってそんなばかげたことを考えているわけではない」

 ある元自衛隊幹部は、そう言って一蹴(いっしゅう)します。

 「わが国が直接攻撃される事態があるとすれば、それは、わが国の米軍基地から出撃する米軍を周辺事態法(戦争法)にもとづき、後方支援する場合だ」

 元幹部の言葉は、有事立法の発動対象としている「武力攻撃事態」なるものが、実は「日本有事」などではなく、アジア太平洋地域で軍事介入する米国への支援が引き金となって起きる「米軍有事」であることを意味します。

 イラク、北朝鮮、イランを「悪の枢軸」と決めつけ、中国など七カ国を核攻撃対象にした計画を検討しているブッシュ米政権。この元幹部は、朝鮮半島と台湾をめぐる紛争の危険をあげ、「今の政治情勢の中で米軍が介入しないということは想像しにくい」と指摘します。

防衛出動の規定と同じ

 「日本有事」と「米軍有事」をつなぐ糸は、「武力攻撃事態における我が国の平和及び安全の確保に関する法制の整備について」と題する政府の説明資料からも浮かび上がってきます。

 資料などによれば、「武力攻撃事態」とは、自衛隊に防衛出動が命じられる事態を指したもの。しかし防衛出動を規定する自衛隊法七六条は、発動要件に、「外部からの武力攻撃」だけでなく、「武力攻撃のおそれのある場合」も含めています。

 一方、戦争法は「周辺事態」を、日本周辺での「平和及び安全に重要な影響を与える事態」と規定。その例として、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態」を明記しています。

 これは、自衛隊法の防衛出動の規定とそっくりです。戦争法の国会審議のとき、自民党議員からも「ほとんど同じのように読める。どこが違うのか」という質問が飛び出したほどです。

 ガイドライン自体も、「周辺事態」と「武力攻撃事態」を無関係と位置付けてはいません。

 日米でつくる共同軍事作戦計画が対応すべき事態として「周辺事態が日本に対する武力攻撃に波及する可能性」「両者が同時に生起する場合」を明記。

 中谷元・防衛庁長官も「周辺事態を放置していけば、悪いケースにおきましては日本有事に発展をしていく可能性は十分ある」(衆院安保委、二月二十八日)と明言するように、米軍がアジア太平洋地域で軍事介入する「周辺事態」と「武力攻撃事態」は重なり合うのです。

承認なしで前倒し発動

 説明資料は、防衛出動まで待てないとして、さらに“前倒し”の有事立法発動を検討していることを示しています。

 陣地構築のためには、防衛出動前から国民から土地をとりあげないと「間に合わない」。だから、防衛出動待機命令時から、土地がとりあげられるようにしたい――。これが防衛庁の要求です。

 防衛出動待機命令とは、防衛出動が命じられることが「予測される場合」に発動できる命令。国会承認も必要ありません。首相承認さえあれば、防衛庁長官が命じることができます。

 米国がアジア太平洋地域に軍事介入する「周辺事態」がおき、「武力攻撃を受けるおそれがあることが予測される場合」と政府が判断しさえすれば、およそ「日本有事」と関係ない事態にまで有事立法を発動し、罰則付きで戦争協力が強いられる――。これが政府・与党が描く有事立法の素顔です。

 


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