日本共産党

2002年3月24日(日)「しんぶん赤旗」

先進国と途上国

新たな協力関係確立提唱

国際開発金融会議が閉幕


ODAをGNP比0.7%に

 【モンテレー(メキシコ)22日菅原啓】当地で十八日から開かれていた国際開発金融会議は二十二日、国際社会が貧困削減と途上国開発のために共同でとりくむ方向を示した最終文書「モンテレー・コンセンサス」を採択して閉幕しました。途上国向けの政府開発援助(ODA)については、先進国にたいして国民総生産(GNP)比0・7%に引き上げる「具体的な努力」をはかるよう要請しています。

 会議は、二〇〇〇年の国連ミレニアム・サミットで決定された開発目標(二〇一五年までに世界の貧困人口の半減など)を達成するための資金のねん出を討議するために開かれたもの。首脳会合議長を務めたメキシコのフォックス大統領は、開発資金の問題解決に「大きな弾みをつけるものとなった」とのべ、会議の成功を強調しました。

 文書は、開発目標達成の資金が劇的に不足している現状に懸念を表明するとともに、目標達成のために、必要な資金を効果的に活用することを強化し、必要な国内・国際経済環境を実現することが、「二十一世紀をすべての人にとっての開発の世紀とするための第一歩となるであろう」とのべ、「先進国と開発途上国間の新たなパートナーシップ(協力関係)」確立をよびかけています。

 貿易自由化による地元企業の倒産など、途上国に対して、成長の機会だけでなく、深刻な困難をももたらしている経済のグローバル化について「十分に包括的かつ公平であるべきである」とのべ、問題に対処するために国内・国際レベルでの政策や手段が「強く求められている」と指摘しています。しかし、途上国側からは、グローバル化の転換の中身がないとして批判もあります。

 文書はこの他、持続可能な開発のために途上国国内の資金をふりむける方策、海外直接投資など民間資金の積極的導入、「開発のための原動力」としての国際貿易の拡大、重債務貧困国の救済、国際経済機関の共同の努力などを盛り込んでいます。


貧困解決の努力強調

各国首脳 “国際テロ根絶のため”

 【モンテレー(メキシコ)22日菅原啓】二十二日に閉幕した国際開発金融会議では、昨年九月の米同時多発テロ事件を糾弾しながら、会議の目的である貧困問題解決への努力をよびかける発言が相次ぎました。

 スペインのアスナール首相は、貧困とのたたかいとともに、「テロも国際的な醜い現象だ」と指摘、「人類にたいする犯罪」であるテロとたたかう決意を表明しました。ノルウェーのボンデビック首相は「私たちが国際テロとの長期にわたるたたかいに勝利するつもりなら、貧困問題や開発と社会正義の欠如という問題に真剣にとりくまなければならない」と改めて認識することになった、とのべました。

 ヨルダンのアブドラ国王は、世界的な反テロ連合の「任務が単純に軍事的であってはならない。テロに勝利するためには、経済的、外交的、開発上の努力が求められる」とのべ、パレスチナ問題などの公正な解決をよびかけました。

 米国のブッシュ大統領は、貧困対策に役立つ開発にとって「自由、法(制度)、機会こそが条件となる」とのべ、「だからこそ米国は(これらの価値を否定する)テロからの解放をめざすたたかいの先頭に立っている」として、軍事力行使の立場を明らかにしました。


解説

対立継続より合意達成を重視

 国際開発金融会議で二十二日採択された最終文書「モンテレー・コンセンサス」は、地球人口の五分の一が貧困状態(一日一ドル以下の収入)におかれ、途上国の開発資金が不足しているという状況のもとで、問題解決のために世界各国が共同で対処する必要性をあらためて強調するものとなりました。

 文書では、途上国自身が援助を無駄にする汚職問題を一掃するなど国内環境を整備し、外国資本を導入し、貿易を拡大して経済成長を軌道に乗せていくという基本戦略が描かれています。これまで途上国支援の中で有害な役割を果たしてきた問題の改善を指摘している部分もありますが、経済・金融の自由化など米国や国際金融機関が追求してきた新自由主義的「グローバル化」の方向を抜本的に切り換える方向は示されていません。

 非政府組織(NGO)の代表からは、途上国経済危機の引き金となる投機資本の規制が含まれていないとか、改善方向が明記されていても「実行される期限は明示されていない」などの批判の声が上がりました。

 準備会議の草案では政府開発援助(ODA)の倍増勧告や多国籍企業の規制など、途上国側から提案された多くの重要なポイントが盛り込まれていました。セネガルのNGO代表は、米国や世界銀行などが途上国に圧力をかけて、「要求をとりさげさせた。内容的には過去の国連文書よりもよくない」と語っていました。

 しかし、途上国の側も黙って引き下がったわけではありません。強硬な姿勢を貫いて会議を決裂させるよりは、先進国や国際金融機関も巻き込んだ合意文書をえることを重視。これを足がかりにさらに行動を強めようとしています。グループ77(国連加盟の途上国百三十三カ国が参加)を代表して発言したベネズエラのチャベス大統領は、モンテレー・コンセンサスが「絶対的なものではない」と指摘し、途上国側の要求を列挙しました。途上国の代表からは、ODA増額やひも付き援助をなくす課題など、文書に盛り込まれた先進国側の約束の履行に期待するとともに、実行状況をフォローする作業の重要性が共通して強調されたのも特徴の一つです。ここに途上国側の決意が表れていました。

 メキシコのフォックス大統領は、対立しあうのではなく、協力し合う「懸け橋」を築こうとよびかけました。この橋が本当にかかるのかどうか、貧困解決の方向に世界が前進するのかどうかは、文書に盛り込まれた内容の実行にかかっています。(モンテレーで菅原啓)

 


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