2002年3月18日(月)「しんぶん赤旗」
巣立ちの季節です。毎朝足を運んだ白い校舎。永遠に続きそうだった友達との討論。ときにはしかり、ときには励ましてくれた先生たち――。千葉県流山市にある勤医会東葛看護専門学校(三上満校長)で、ナースのたまごたちの卒業式(9日)を取材しました。和田肇記者
テレビドラマにもなっている男性看護師、「ナースマン」。卒業生の中にも四人いました。
阿部努さん(22)は野球部のエースピッチャーも務めたスポーツマン。「二年間よくやってきたなあ、というのが感想です。お金がないから奨学金をもらって、土日はバイトしていましたから」。准看として働いてきた阿部さんは、看護学校で「患者の目線に立って看護すること」の大切さを学びました。つらかったのは実習で「女性の患者さんに『体をふかれるのはイヤ』って拒否されたこと」です。
同じような体験はほかの男性にもありました。永渕聡さん(22)は「産婦人科とか助産師の実習はつらかった」といいます。「男がいくと『なんなの?』って目で見られる。自分たちは患者さんのために真剣にやってるんですけどね」
解決策は「やっぱり、自分たちがどれだけ本気なのかを態度でわかってもらうことだ」といいます。実習では病状やリハビリの方法などをパンフにして説明したり、一週間に一回患者さんとその家族を招いての学習会をしたりしました。
つらかったよなあ、と顔を見合わせて笑う男性陣。困難はあっても「患者の立場に立った医療をしたい」という気持ちは同じです。頑張れ! ナースマン。
「入学してからはや三年。私たちはやっと巣立つ準備ができました。今、ここに五期生があるのは三年間の学生生活で実習をはじめとするさまざまな経験があったからだと思います」
純白のナース服に身を包んだ一科(三年コース)五期生と二科(二年コース、准看護師の資格がある人)六期生の七十五人。卒業生を代表して四人が決意を語りました。
その一人、一科の加藤学実(まなみ)さん(21)は「これまでにこんなクラスはなかった」と話します。一科は自他ともに認める「団結力」のあるクラスでした。
象徴的な“事件”が三年生の春にありました。ゼミの勉強で忙しいさなかに、担任の山田かおる先生(32)が結婚するというのです。
それを知った加藤さんは「私たちで結婚式をしてあげようよ」と提案。先生には内証で教室を教会風にしたてました。ステンドグラスに赤じゅうたん、十字架、もちろんウエディングドレスとケーキも用意しました。
手づくり結婚式はゼミ発表の直後にしました。「ゼミの反省会をやるから」と山田先生を誘いました。クラスに一人いる男子学生が牧師役を務めました。山田先生は涙ボロボロ。「ケーキを焼くにおいにもまったく気づかなかったんですよ。みんなばたばたしてるのはきっと、リポートで忙しいんだろうなって思ってましたから」
加藤さんは言います。「発表のリポート作りと並行して三日間、徹夜して準備しました。うちのクラスは無謀だと思えることでも『やっちゃお、やっちゃお』でやりきっちゃう。みんなで一つの目標に向かっていける。ホンネで話せる仲間がいるから」
卒業式のあと、山田先生に「卒業証書」を渡しました。「私達は山田先生のことが本当に本当に大好きです」
病院実習で出会った生と死のはざまにいる患者さんが、これから看護師になろうという学生たちを励ましてきました。高橋奈津子さん(22)もリポートに実習の経験をつづりました。
高橋さんは実習で初めて末期がんの女性患者Mさんに出会いました。
Mさんは大腸がんをわずらっていました。手術をしてみると、全身にがんが転移している可能性があり、手がつけられませんでした。五、六時間かかるはずの手術は切除しなかったことで三時間で終了。「ずいぶん早く終わったね」というMさんに、返す言葉が見つかりませんでした。
自分の状態についてはMさんもうすうす気づいていたらしく、一人でいるときは深刻そうな顔つきでした。高橋さんはMさんと話すことができませんでした。「私たちに何ができるのか、すごく苦しんだ」。そのころはよく泣いていたといいます。病状が悪いことをドクターが告知する日、Mさんに「私たちも勉強させてもらっているので、ぜひ一緒に聞かせてください」と頼みました。
Mさんは事実を冷静に受けとめていました。その姿を見て「一番つらいのはMさんなんだよ! なに逃げ腰になってんの」と自分をしかりました。
「優しい看護師ってただ優しいだけじゃなくて、その人に一番いい看護ができること、つまりときには厳しくってことも必要なんじゃないかな」
東葛看護学校では地域フィールドという授業があります。生徒が数人のグループに分かれて、地域の町工場や自営業者などを訪問し、いっしょに働く中で病院に来る人の生活状況や社会背景をなどを学びます。
佐藤江美さん(21)のグループは成田空港の整備員のところへ行きました。長時間労働で休むこともなかなかできませんでした。「仕事してると病気になりそうだって思いました。しかも病院にかかりづらい。労働に関して健康を守る制度をしっかりさせないと」と佐藤さん。一言ひとことをていねいに話します。
佐藤さんは看護学校に来るまで人前で話すのが苦手でした。リポートの発表では一人ひとりが自分の意見を発表することを求められました。
「最初は聞いてるばっかりだったんです。でも人が話しているのを聞いて、自分も発言しなきゃって…。発表してみると私の話をよく聞いてくれました。それで、聞いたり、聞かれたりができるようになったんです」
患者さんの気持ちをしっかり考えられるようにしたい、という佐藤さん。不安もあります。「医療費の負担が三割になったら、今までよりも重症になってから病院に来る人が増えてしまいます。新米の私たちは、現場でどれだけ力になれるのでしょう」
2000年度入学を境に、大学生の雰囲気が少し変わった――。こんな現象に、当の学生たちが当惑しています。
全日本学生自治会総連合(全学連)定期全国大会(3月8〜10日)の討論で女子学生が語りました。「00年度入学の後輩たちは、活動の中身には共感してくれても、その主体者になってくれない。どうしたらいいのか考え続けているんです」
00年度入学の学生たちが中学校に入ったとき、クラブや生徒会、ボランティア活動などが点数化され、高校受験の内申点を左右するようになりました。「先生に目をつけられたら損をしちゃう。だから、なるべく自己主張しないようにしているの」「内申点が決まるのは3年生の2学期。それまでは、みんな我慢して、いい子にしている」など、深刻な影を落としてきました。
大会では、希望ある大学づくりをめぐってシンポジウムが開かれ、講師も「この『内申重視路線』で友だち関係や先生との関係が壊れてきました。コミュニケーションスキルが身につきにくい」と指摘しました。
「ぼくも00年度入学。自分の意見を隠して、相手の意見が出てくるのを待っている学生がいっぱいいます。どうしたら本音で話せるようになるんでしょうか」という学生に対して、講師からこんなメッセージが。「ちょっとしたことでいいから、なにかをいっしょにやることです。そして、自分から、弱点やつらいことを話して、ゆっくり、あわてずに人間関係をつくってほしい。横へつながりながら生きていく、そういうことを大切にしてほしい」(み)
結婚する人と恋人とは別。恋人は楽しくて、いやしてくれればいいけど、結婚すれば毎日会うしね。私は早く結婚したいんだけど、結婚年齢が上がっているじゃないですか。昔と今とでは結婚観が変わってきているのかな? そもそも結婚ってなんだろう。一生いっしょにいるっていう契約かな? みんなの結婚体験談が聞きたい!
それと、仕事のことも聞きたい。お金のために働く、っていう人もいると思うし、仕事が生きがいだ、っていう人もいると思う。でもほんとうはみんな、やりたいことを仕事にしたいはず。希望の仕事につくためにフリーターを続けるのはわがままなのかなあ。
マスコミは二千人が応募しても採用は六人だったりで、人数が少なすぎる。採用の基準もあいまいですよね。どうやって就職活動をしたらいいかわからない。採用がみんなインターネットですすめられていて、しばらくホームページを見ないでいたら、説明会が終わっていたり。学生の立場を考えてやってくれないんです。
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全労連(全国労働組合総連合)は新しく社会人になる人に向けたパンフレット『未来にChallenge! 21世紀を自分らしく――社会人になるキミへ贈る権利手帳』=写真=をつくりました。
「給料の『未払い』は違法」、「一日八時間を超えたら残業代は当然」のほか、労働時間、有給休暇、解雇規制、社会保険・雇用保険、女性の権利、派遣・フリーター、労働組合、憲法の各項目について、法律上の根拠を示しながら解説しています。
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