2002年3月11日(月)「しんぶん赤旗」
マスコミでも“疑惑の百貨店”といわれる自民党の鈴木宗男衆院議員。日本共産党の佐々木憲昭衆院議員の追及をきっかけに、ついに証人喚問まで追い詰めました。現段階で明らかになっているその疑惑は…。
|
米海兵隊演習を地元に押しつけ、それにともなう物資調達、施設建設を関連業者に受注させ献金を受けていた――これが防衛施設庁を舞台にした物資調達疑惑です。
米海兵隊の実弾砲撃演習は、沖縄で実施され多大な被害を与えていたもの。政府は、県民の中止要求に背をむけ、九五年のSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)合意で本土五カ所に分散・拡大。鈴木議員は、「自民党地域担当議員」として受け入れ反対を表明していた地元町長をどう喝し、演習移転を押しつけました。
防衛庁が認めた内部文書では、演習二年目の九八年九月、鈴木氏が施設庁職員が宿泊する「地元でのホテルの話」を持ち出し説明を要求。翌日、東京で鈴木氏本人に、釧路市で鈴木氏地元秘書にゴミ箱からスノコ、シート、トイレットペーパーまで調達業者を報告しました。うち三社は鈴木議員に九七年から九九年までで二百七万円の献金をおこなっていました。
また、米軍のために施設建設工事は、「ムネオ・ハウス」の受注企業でもある犬飼工務店が食堂厨房、渡辺建設工業が海兵隊隊舎工事を請け負いました。その他、SACO関連事業の受注企業では、鈴木議員への献金は、施設庁発注分、別海町発注分あわせて二十五社約三千八百万円にのぼっています。鈴木議員は、米軍演習まで食い物にしていました。
自民党候補が総選挙で落選した報復・みせしめに予算執行を凍結させたのが農地整備事業「凍結」の疑惑です。
日本共産党の児玉健次衆院議員が暴露した北海道開発庁(現国土交通省北海道局)の文書によると、九七年度予算案で計上された「野幌東地区農用地総合整備事業」(百十億円)について、鈴木議員=「S先生」は、「野幌東地域の予算を凍結すべき」だと圧力。開発局は「予算執行をS先生からの凍結解除まで見合わせる」措置をとりました。
その後、地元首長らが鈴木事務所を訪ねた後、鈴木議員は「凍結解除」を指示しました。公正であるべき予算執行まで票集めのためのみせしめに利用したのです。
国際条約にも反し、他国の大使人事に介入し、外交を私物化したのがコンゴをめぐる疑惑です。
二〇〇〇年六月、新しい駐日コンゴ臨時代理大使がIDカード(外交官身分証明票)発給を申請した際、前任者と意を通じていた鈴木議員のコンゴ人秘書・ムルアカ氏が妨害。鈴木議員も大使の「資質」まで問題にしました。
外交官の任命は、受け入れ国の同意は必要なく、一国会議員が圧力をかけ、一国の主権に介入する重大な問題です。
鈴木議員はその後、外務省がIDカード発給方針を固めた際にも「(鈴木氏の)誹謗(ひぼう)、中傷を行うような人物を臨時代理大使として受け入れることは適当ではない」と妨害。外務省は大使人事を白紙に戻す交渉のため、中近東アフリカ局審議官をコンゴに派遣するなど鈴木議員の言いなりになりました。
結局、IDカードは発給されないまま、臨時代理大使(ヌグウェイ氏)は本国から任を解かれました。
ケニアへの円借款によるソンドゥ・ミリウ水力発電計画の二期工事は、ケニアの債務や環境破壊が問題とされた結果、借款に必要な二国間の交換公文が交わされないまま、工事の入札、発注がされる異例の事態です。
鈴木氏は、官房副長官時代の九九年八月、ケニアを訪問し、「自分(鈴木氏)が帰国次第、関係省庁に連絡・指示を行い、本件プロジェクトへの円借款供与への迅速な検討を進める」と約束していました。
鈴木議員は鴻池組をはじめ受注企業から六年間で約七百万円の政治献金を受けています。
鈴木議員は外務省の人事にも介入していました。とくに、自らの外遊三十七回のうち十九回も同行した外務省の佐藤優・前国際情報局主任分析官は「鈴木議員との関連を説明しなければならない」(外務省・小町恭士官房長)存在でした。
鈴木議員は佐藤氏の異動(二月二十二日)にあたっても、外務省幹部に「絶対にそんなことはさせない」などと電話していたことも報道されました。
日本共産党の佐々木憲昭議員が火をつけ、一連の“ムネオ・外務省疑惑”の発端となったのが国後島に四億千七百万円で建設した「友好の家」、いわゆる「ムネオ・ハウス」の疑惑です。
四日の外務省報告書でも川口外相が「鈴木議員と外務省関係部局との間で、細部にわたるやりとりが行われていた」と明記。「細かいところまで話を外務省から受けた記憶はない」(二月二十日、衆院予算委の参考人質疑)などとのべていた鈴木氏のうそもばれました。
鈴木氏は、九九年五月には工事の入札参加資格を「根室管内」(根室市など一市四町、いずれも鈴木氏の選挙区)に限定するよう求めました。
鈴木氏の意向をうけた外務省側は、事実上、根室管内に限定。参加資格のない企業まで入札説明会に参加させる偽装工作をしていました。
入札公告前には、釧路市内の鈴木議員事務所で、設計・施工監理の日本工営と下請けに入った日揮が地元業者の紹介を依頼。工事を後に受注した渡辺建設工業、犬飼工務店と会合した情報漏えい疑惑もあります。
この契約では、発注元の支援委員会が、課税対象でないことを知りながら、消費税分千九百八十五万円を上乗せしていた問題もあります。
しかも、鈴木氏は、受注企業から八百七十万円の政治献金を受領。支援事業を食い物にし、税金を還流させていた構図がくっきりです。
鈴木議員は、国後島の桟橋改修工事でも、「ムネオ・ハウス」と同様の入札介入を行いました。
鈴木氏は九七年十二月、「こういう工事くらい地元企業に引き受けさせるくらいの配慮があっていいだろう」と声を荒らげ、地元業者を使うよう外務省に強く変更を迫りました。
この結果、「北海道東部周辺海域で海上工事の施工実績を十分有する者」と、入札参加資格がねじまげられ、鈴木氏も「わかった。結構である」と了承。鈴木氏の後援企業の共同企業体(三社のJV)が四億五千五百万円で受注しました。
うち一社の島田建設社長は、鈴木氏支援の政治団体、二十一世紀政策研究会オホーツク支部の代表。三社からは約三千三百万円もの政治献金が鈴木氏に渡っています。
国後島などのディーゼル発電施設で使う燃料支援は、鈴木議員が九九年七月、国後島を訪問した際に二千トンを供与すると表明。これも根室市内の業者が受注。
受注したヒシサンには支払う必要がない軽油税九百六十三万円が上乗せされ千九百六十四万円支払われました。同社も鈴木議員に政治献金しています。
国後島向け自航式はしけ「希望丸」、色丹島向け自航式はしけ「友好丸」建造にかかわる疑惑です。受注したのはいずれも根室市の根室造船。社長は鈴木議員に献金している二十一世紀政策研究会根室支部の代表でした。
鈴木氏は「希望丸」について「自分が説得してやっと実現したもの」と発言しています。
日本政府が二〇〇一年度までに五百九十一億円もの資金を拠出している「支援委員会」の私物化疑惑もあります。
同委員会は、九三年に旧ソ連諸国十二カ国と日本政府の協定で発足。十二カ国のうち、残っているのはロシアとベラルーシだけ。九七年九月以降、両政府代表もおらず実態を失っています。
ところが、例年数億円だった拠出金が、鈴木議員が内閣官房副長官となったあとの九八年度補正予算では百二十億円とはねあがりました。翌年も補正予算で五十五億円を拠出しています。
同委員会は、鈴木議員や外務省職員の「北方四島」への出張費まで負担するなど不透明な財政が問題になっています。
証人喚問は、議院証言法にもとづいておこなわれます。憲法六二条「両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる」という規定を具体化するものです。
最近では昨年二月、参院予算委員会がケーエスデー中小企業経営者福祉事業団(KSD)事件で、村上正邦参院議員(当時、元労相)を喚問しました。
証人喚問は、証人の宣誓、宣誓書への署名なつ印をおこない、その後、委員長が委員会を代表して尋問した後、各党委員が尋問します。
今回の尋問時間は、二時間十分で、委員長十分、自民党三十分、公明党、保守党が各十分、民主党四十分、自由党、日本共産党、社民党が各十分です。
宣誓拒否、偽証、証言拒否は刑罰の対象となり、虚偽の陳述には三月以上十年以下の懲役、正当な理由のない出頭や証言の拒否は一年以下の禁固または十万円以下の罰金などの厳しい罰則が規定されています。
証人喚問のテレビ中継は、リクルート事件をきっかけに静止画像になっていましたが、九八年十月の法改正で撮影が復活し、今回はNHK、民放各局が中継します。
機能しない場合は、ブラウザの「戻る」ボタンを利用してください。
著作権:日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp