日本共産党

2002年3月10日(日)「しんぶん赤旗」

どうなってるの?――…

新学習指導要領


 四月から全国の小中学校で新しい学習指導要領が実施されます。ほぼ十年ぶりです。授業はどうなるのでしょうか。子どもたちの学力は保障されるのでしょうか。

何を決めたものなの

学習内容や指導方法の基準とされているものです

 文部科学省が作成する小、中、高の教育課程の基準で、教科の種類や授業時間、各学年ごとの教科の学習内容、指導方法を定めています。教科書の作成、検定の基準にもなっています。

 一九四七年(昭和二十二年)に作成された「学習指導要領一般編(試案)」が最初です。「試案」は戦後の新しい教育の出発にあたって、「教師の手引書」「参考書」の性格をもっていました。

 しかし五八年の改訂以降、政府は「試案」の文字をなくし、「法的拘束力がある」との解釈をとり、教育現場を縛る根拠にしています。

 同省が任命した委員でつくる教育課程審議会の審議を経ますが、審議過程は非公開です。いわば密室で作成されます。

なぜ「新…」というの

戦後、七回目の改定が行なわれ、四月から新たな内容で実施されます

 四月から実施される小中学校の学習指導要領は、九八年十二月に告示されました。四七年の最初の指導要領作成いらい、戦後七回目の改訂です(下に年表)。現行の学習指導要領が新しく改訂されたという意味で「新学習指導要領」とよばれています。

 現行の指導要領は、週六日制のときのもの。四月からは学校完全五日制になります。

 これまでの「つめこみ教育」に国民の批判は強いものがありました。新学習指導要領はこれを受け、「ゆとり」をうたい文句にしています。

 授業内容の「三割削減」をうたい、授業時間も小中学校で各学年年間七十時間(週二時間)をカットしました。また、小学校三年以上に「総合的な学習の時間」を新設し、中学校の選択教科の拡大などを盛り込んでいます。

どんな問題点あるの

学力は向上するのか、土曜日にどう対応するのかなど課題は山積です
図

 たとえば「つめこみ教育」の問題はどうか。

 全体の授業時間が減り、「総合的な学習の時間」の導入、中学での選択教科の拡大で教科の授業時間はいっそう窮屈になります。

 学習内容は「三割削減」というほど減っていないのが実態です。たとえば小学六年間で習う漢字は国語の授業時間が14%削られるのに千六字のままです。(別表参照

 さらに、削減で大切な事項や子どもたちの知的興味をかきたてるものが間引かれ、一つの理解からさらに理解を深めるという系統性を欠くと教師たちは指摘しています。

 新学習指導要領ではたとえば小学校一年で答えが二ケタになるひき算は扱わないため、「15−7」はいいが「15−2」はだめというぐあいです。小学校三年生でこれまで扱っていた「3ケタ×2ケタ」を扱わないとか、同じく割り算でたとえば「11÷3」は筆算ではやらないことになっています。

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 こうしたことが各教科で指摘されてきました。「これで子どもたちの学力が保障されるのか」と父母の不安が高まるなか、文部科学省はにわかに「学習指導要領は最低基準」だといい、いわゆる「できる子」に指導要領を超えて教えることを強調し始めています。

 新指導要領の原型をつくった教育課程審議会の三浦朱門元会長は『AERA』(三月十一日号)誌上で「落ちこぼれをなくすのに使ってきた労力と時間を『さまざまな才能をのばす』方に振り向ける」と語っています。

 子どもたちの選別・差別がいっそうすすむことが心配されています。

 「総合的な学習の時間」が創設されますが、「どんな授業をしたらいいのか」と現場教師の悩みが続いています。「特色ある学校づくり」の名で学校間競争をあおる心配も出されています。

 「完全五日制」で“土曜日のすごし方”が大きな問題です。全体として条件整備のないままのスタートとなりそうです。

“わかりたい”願いに

文部科学省による押し付けをやめさせ、父母・教師・地域の共同が大事です

 「すべての子どもに基礎的な学力をつけてほしい」というのが国民の切実なねがいであり、憲法と教育基本法が要請している学校教育の基本任務です。

 その願いにこたえようと各学校や地域での学力保障のとりくみが始まっています。学習内容を精選して基礎的な事項に十分な時間をかける、理解のおくれた子どもに手だてをとるなど多様なとりくみがあります。父母らの「算数教室」なども注目されています。

 文科省、教育委員会が学習指導要領で学校をがんじがらめにしていることが、こうしたとりくみの障害となってきました。新学習指導要領の見直しも急がれます。日本共産党は国が密室で決めるのではなく基礎的な学力の内容(試案)を国民の英知を集めて決めることを提案しています。

 「三十人学級」を求める声が全国で高まり、自治体独自の少人数学級の動きが広がっています。国の責任で「三十人学級」実施に踏み切るべきです。


図 図

 


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