2002年3月6日(水)「しんぶん赤旗」
【北京5日菊池敏也】中国の第九期全国人民代表大会(全人代)第五回会議が五日午前、北京の人民大会堂で開幕し、朱鎔基首相が政府活動報告をおこないました。今回は、第九期全人代の最終年であるとともに、中国の世界貿易機関(WTO)加盟後、初の全人代会議となります。
首相は、世界経済の減速のなかでも、内需拡大と積極的な財政政策により、昨年の国内総生産(GDP)が前年比7・3%増の九兆五千九百三十三億元(約百五十兆円)に達し、経済構造の調整でも「積極的進展があった」と評価しました。西部大開発のプロジェクトも順調にスタートし、財政収入や貿易も伸びており、国民経済が「持続的で速い健全な発展の軌道にそって前進している」と強調しました。
同時に、農民の収入の伸び悩み、一部地方での給料の遅配・欠配、雇用圧力の増大など、国民生活に直接かかわる分野での問題点をあげ、一部の地方や部門で、指導幹部による「形式主義、官僚主義」が横行し、ごまかしや浪費がひどく、腐敗現象も「かなり突出」していると批判。財政資金の違法な流用、多発する重大事故、一部地方での社会治安の悪化などとあわせ、「力強い措置をとり解決しなければならない」と訴えました。
WTO加盟がもたらす影響については、「全体としては改革・開放と経済発展にとって有利」と強調しつつも、「短期的には競争力の弱い業界、企業がかなり大きな衝撃を受けるだろう」との認識を示しました。
朱首相は、今年の政府活動について八つの柱で報告し、第一に、内需拡大により経済成長の促進をはかる課題を提起しました。とくに都市・農村の低所得層の収入を増やし、購買力を高めることによる内需の拡大を重視。また、今年も一千五百億元(約二兆四千億円)の長期建設国債を発行し、西部大開発プロジェクトや重点企業の技術改造などにあてるとしました。
第二に、農業と農村経済の発展を速め、農民の収入を増やす課題をあげ、「突出した任務」と強調しました。農民の負担を軽減するため、農民から徴収する各種費用を税金に改める「税費改革」の試行地域をいっそう広げるよう提起しました。
WTO加盟にあたって、中国の「国際競争力の強化」を中心課題に位置づけました。
「国家の安全と社会の安定を維持する」として、テロ勢力、民族分裂勢力、「法輪功」など「邪教」組織を厳しく取り締まる姿勢を示しました。
今回の全人代会議は十五日まで。最終日に政府活動報告をはじめ、諸議案の採決がおこなわれます。
【北京5日小寺松雄】中国の朱鎔基首相は五日の全人代政治活動報告で、台湾問題では「平和統一、一国二制度で」という原則的立場を表明するとともに、「台湾は中国の一部」という言い方でなく、「大陸と台湾はともに一つの中国に属する」という表現で、台湾住民の気持ちへの配慮をにじませました。一昨年来、台湾への呼びかけに使われてきましたが、昨年までの全人代報告にはありませんでした。
朱首相はその上に立って中国と台湾の交流拡大を改めて呼びかけ、中国・台湾の「三通(直接の通信、通航、通商)」実現を訴えました。
外交分野では、「独立自主の平和外交をひきつづき実行する」と表明。昨年の中ロ、中央アジアの計六カ国による「上海協力機構」の活動、東南アジア諸国連合(ASEAN)との連携強化などをあげ、米国、ロシア、欧州連合(EU)、日本との関係の「発展と改善」を指摘しました。
そのうえで、昨年の同時多発テロをふまえてテロリズムを糾弾するとともに、「覇権主義と強権主義に反対」「公正で合理的な国際政治・経済の新秩序」を強調しました。二月の中米首脳会談で中国は、アメリカの「悪の枢軸」構想、イラク攻撃の危険性について賛同しない姿勢を表明しており、名指しはしていないもののアメリカ流世界秩序に同意しない意思表示といえます。
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