日本共産党

2002年3月4日(月)「しんぶん赤旗」

どうなる空の安全、公共性

JAL・JAS合併 純粋持ち株会社に


 今年十月に経営統合する日本航空(JAL)と日本エアシステム(JAS)は、持ち株会社(注)名を「日本航空システム」と発表。〇三年秋には持ち株会社の下に国際、国内、貨物、関連事業の四会社をかかえる一方、今後五年間に五千人前後の人員削減(日航)を明らかにしています。全日空も三月中に持ち株会社案を発表します。航空運送事業は乗客の安全を第一に考えなければならない公益性を有していますが、運送事業に責任を負わない純粋持ち株会社が支配する航空会社の誕生で、空の安全や公共性、労働条件はどうなるのでしょうか。(米田 憲司記者)

 日航とエアシステムがめざす持ち株会社の形態は「純粋持ち株会社」です。純粋持ち株会社は運送事業を行わず、子会社の株式を所有することを主な業務として企業グループの戦略を練り、人事・財務を掌握します。

 日航とエアシステムの場合は、十月二日に純粋持ち株会社を設立して企業統合を経た後、その下で企業再編を行う二段階方式です。

 両社は四社を傘下に置く第二段階までの大筋の方向は明らかにしていますが、具体的方策については「今後、検討する」としています。ただ、リストラと不採算路線を切り捨てる方向は否定していません。

 事業を行わない純粋持ち株会社について、航空労組連絡会は(1)安全性と公益性等を目的にした「航空法」が適用されるのか(2)傘下の労組は団体交渉ができるのか(3)公共性の観点から地方・離島などの路線をどう考えるのか――を問題にしています。

 銀行など金融持ち株会社の場合、「銀行法」で「銀行持株会社」の章を新たに設けて規定。NTTの場合も「日本電信電話株式会社等に関する法律」の第三条(責務)で関連づけられました。

 しかし、航空事業については、国土交通省航空局は「事業に関与しない純粋持ち株会社が航空法の適用は受けるかどうかは実態を見ないことには判断できない」と口を濁しています。

 一方、労組との団体交渉について、同省は「何ともいえない。労使間でよく話し合ってほしい」というだけです。

 持ち株会社を解禁した九七年の独占禁止法改悪の際に、附帯決議で労使関係について労働組合法の改正を含めて二年をめどに必要な措置をとる、としていました。ところが、その後の労働省の専門家会議で否定的な方向が打ち出された経緯があります。

加速するリストラ

 航空労組連絡会の役員は「純粋持ち株会社の中心が利益優先主義と円滑・迅速なリストラにある以上、安全性と公益性が後退するのは疑いありません。持ち株会社が運送事業を行う子会社の経営や人事に関与する以上、当然、社会的責任が生じてきます。子会社に事故が起きるような環境をつくりながら、親会社たる持ち株会社の責任が問われないというのは、まったく道理に合いません」と指摘します。

 五日には航空労働者が都内で「企業再編を考えるシンポジウム」を開き、航空の安全と公益性、労働条件等について広く社会に訴えていくことにしています。

 (注)持ち株会社 他の会社の事業活動を支配するため、その会社の株式を保有する会社のこと。子会社にあたる傘下企業を統括し、事業展開の戦略を決め、資金・投資計画や人事を支配します。事業をおこなわない持ち株会社を純粋持ち株会社といいます。財界は子会社ごとに賃金や労働条件の格差がつけやすく、子会社の売却やリストラがやりやすくなるとしています。

 戦後、独禁法で禁止されましたが、九七年同法が改悪され、設立が解禁されました。ソニー、NTT、銀行に次いで多くの大企業が年内の設立をめざしています。

 


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