日本共産党

2002年2月28日(木)「しんぶん赤旗」

ヤマギシ、2審も敗訴

東京高裁

「脱会者に1億円返せ」


 ヤマギシ会を脱会した元村人の女性が、参画(入村)時に提出した財産の返還を求めた裁判の控訴審で東京高裁は二十七日、一審判決を減額し、ヤマギシ会に一億円の支払いを命じると判決。ヤマギシ会は一審につづく敗訴となりました。

 石井健吾裁判長は、(1)提出財産の「一切」を返却しないというのでは公序良俗に反する、(2)返還請求が出来ないとすれば脱会が困難になり、憲法の思想・良心・結社の自由に反すると判断。一審判決(二億四千万円)を減額した理由について、女性は財産がヤマギシ会の活動にも使用されることを承知で提出したことや、参画中に受けた利益の有無などを考慮する必要がある、としました。

 原告は神奈川県在住の主婦Kさん(53)で、被告はヤマギシズム生活実顕地調正機関(三重県津市)。Kさんは、夫の死去や長女の非行に悩み、勧められてヤマギシ会の“人間改造”セミナーの「特別講習研鑽(さん)会」を受講。一九八九年八月に長男と二女をつれて参画(入村)しました。そのさい、いわれるままに不動産権利書や預金通帳など全財産を提出、不動産はヤマギシ会が売却しました。その後Kさんは同会の実態に失望し、離村後の九六年、「善良な市民の人生と財産を違法なマインドコントロールで収奪」しているとして提訴。東京地裁は二〇〇一年一月、請求のほぼ全額の支払いを命じヤマギシ会が控訴していました。


全財産出させ組織を拡大

 「『所有』の観念は存在せず、財産は誰のものでもない」という特異な理念のもと、全財産を出させ、脱会(離村)時にはヤマギシ会がその「所有権」を主張して返さない。同会はそれを原資にして組織を拡大してきました。

 「無一文」で社会に出された元村人による財産返還訴訟は現在、東京、津両地裁でも進行中(原告十六人、請求総額約五億円)。原告の一人でもある松本繁世「ヤマギシを考える全国ネット」代表は高裁の減額判決について「具体的な説明もなしに参画契約にサインさせるというヤマギシ会の実態にたいする認識が一審とくらべあいまいではないか。今後とも司法の場でも追及していきたい」と語り、原告代理の藤森克美弁護士は「勝訴とはいえ、減額の根拠もあいまいで不満が残る。上告するかどうかは検討したい」と語りました。


 ヤマギシ会 ヤマギシズムにより「全人幸福社会」をつくるという運動体。山岸巳代蔵(一九〇一〜一九六一)が考案した養鶏理論を人間社会に適用して組み立てた理念で、山岸はこの運動を最終の革命の意味で「Z革命」と呼んだ。国内外に四十数カ所の「実顕地」(ヤマギシの村)がある。一九五三年設立。

 


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