日本共産党

2002年2月28日(木)「しんぶん赤旗」

小泉内閣の「デフレ対策」

危機打開どころか不況促進

公的資金再注入で不良債権処理を加速

国民の税金で失政の穴埋め


 相次ぐ企業倒産、最悪の失業率…日本経済は危機に直面しています。小泉内閣が二十七日打ち出した「デフレ対策」は、首相みずから「即効薬、万能薬はない」と認めるように、危機打開の有効打とならないばかりか、逆に不況促進策となっています。


実体経済に目もくれず、小手先政策…

 政府「デフレ対策」の焦点は、公的資金の再注入問題です。

 資本増強を含むあらゆる措置を講じるとしています。「資本増強」は、公的資金注入の別名。「銀行への金融庁検査で不良債権最終処理へ追い込み、銀行(の自己資本)に不足が出れば公的資金を入れる」(経団連事務局幹部)という企業の淘汰(とうた)・銀行支援のシナリオです。

 小泉内閣は、昨年四月の発足以来、「不良債権の早期最終処理」に突き進んできました。その結果、企業倒産が激発しています。早くも「二〇〇一年度は、二万件を超えて戦後最悪水準に迫る」(帝国データバンク)との予測さえ飛び出しています。

 あふれる失業者たち――。各地の職業安定所には、人、人、人の波です。“自分の生命保険で借金の返済を”と、自殺する中小業者もあとをたちません。新聞には、毎日のように大企業のリストラを伝える大見出し。「朝、新聞を見るのが怖い」という悲鳴が、ある県の産業対策課長からあがるほどです。

 ところが小泉首相は、中堅ゼネコンの青木建設が破たんしたとき「構造改革が順調に進んでいることのあらわれ」と言い放ち、最悪の失業率については「(構造改革をすすめれば)一時的に失業率はあがる」と、国民に痛みを押しつけるばかりです。

 実体経済が凍りつけば、金融機関に悪影響がでるのは当たり前です。「景気の減速が続き、不良債権の新規発生が高水準で発生しており、不良債権の残高がなかなか減少しない」と全国銀行協会の山本恵朗会長(富士銀行頭取)が嘆くほどです。

 不良債権(全国銀行のリスク管理債権)は昨年三月から半年間で三兆二千億円増え、三十五兆七千億円になっています。大手十五行の自己査定でも同時期に不良債権を二兆五千億円近く処理したものの、新たに三兆円も不良債権が発生しています。不良債権最終処理で実体経済が悪化し、実体経済が悪化するから不良債権が増える。まさに「小泉スパイラル」。今度は公的資金で失政の穴埋めをしようというのです。

 これまでも、大手銀行への公的資金注入は二度おこなわれてきました。実に九兆五千億円を超えています。中小企業対策費(二〇〇二年度、千八百六十一億円)の五十倍以上です。でも景気悪化は止まりません。

 公的資金再注入について「すべきでない」とする国民は半数です(「日経」の世論調査、二月十三日付)。三度目の暴挙は世論が許しません。

株価対策

 「デフレ対策」は、「市場対策」として、(1)銀行等保有株式取得機構の積極的活用(2)空売り規制の見直し――などをあげています。

 空売り規制の強化は当然のことです。一方、株式取得機構は、銀行保有の株式を公的資金で買い取り、最終的に損失が出れば税金で補てんするという内容です。昨年十一月二十一日に与党三党の賛成多数で成立させた株式買取法によるもので、補正後の今年度予算や、現在国会で審議中の来年度予算案に、それぞれ二兆円の公的資金枠(政府保証枠)が盛り込まれています。

 深刻な景気悪化を反映して下落が止まらない株価を、公的資金を使ってむりやり引き上げようということです。

 「株価は景気を映す鏡」といわれるように、景気悪化が最大の原因です。実体経済にはなんのテコ入れもしないこの対策は、“鏡”の方をゆがめるだけの愚策中の愚策です。

金融政策

 「デフレ対策」では、「金融対策」として「日銀に思い切った金融政策を行うよう要請する」としています。

 これに先立つ二十六日、塩川正十郎財務相は「日銀に月一兆円の国債買い取りを要求しようと思う」とのべました。

 日銀による国債の買い取り、つまり、国債の買い切りオペは、昨年八月十四日の日銀金融政策決定会合で、それまでの月四千億円ペースから月六千億円ペースに拡大。さらに、昨年十二月十九日の同会合で、月八千億円規模に拡大したばかりです。

 日銀の国債買い切りオペは、価値の裏付けのない通貨を大量に供給し、日本の国内通貨である日銀券(お札)の価値を減少させるという、露骨なインフレ政策です。

 現在の日本の物価下落は、個人消費の弱さや、生産性の向上、海外からの低価格の輸入品の急増など、複雑な要因が合わさった結果です。

 しかし、この要因の中には、国内通貨価値の増加はまったく存在しません。それにもかかわらず、物価を上昇に転じるためとして、国内通貨価値の減少策を持ち出すところに、政府の対策の混迷と無策が示されています。

 


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