2002年2月27日(水)「しんぶん赤旗」
パレスチナ情勢が緊迫するなか、サウジアラビアのアブドラ皇太子が和平提案を行い、国連のアナン事務総長が同皇太子に電話し「積極的で斬新な提案」だと評価するなど、注目されています。
提案は、イスラエルが一九六七年の第三次中東戦争で占領したガザ地区、ヨルダン川西岸、東エルサレムなどから全面的に撤退し、パレスチナ国家の建設を認めるなら、アラブ諸国はイスラエルと国交を全面的に樹立するというもの。従来の国連安保理決議や一九九三年にイスラエルとパレスチナとの間で結ばれた「オスロ合意」に比べて、踏み込んだ提案となっています。
こうした考えは、アラブ内部ですでに検討されてきましたが、今回は、アラブ諸国でも重要な位置を占めるサウジの提案です。これがアラブ全体で合意され、イスラエルが前向きに応じるなら、中東和平への打開策になりうるものです。
この提案を報じた米紙ニューヨーク・タイムズ十七日付によると、アブドラ皇太子は「そういう内容の演説を(三月下旬に開かれる)アラブ首脳会議に先だって行い、アラブ世界をこの案でとりまとめようと考えていた」と話しました。
しかし、同皇太子は「シャロン政権のかつてない暴力と弾圧を前に、(演説するとの)考えを変えた」(同紙)といいます。これまでのところ正式発表されていません。しかしパレスチナが日々暴力に見舞われるなかで、同提案は波紋を広げています。
外電によれば、イスラエルのシャロン首相自身はいまのところ同提案に正面からこたえるには至っていません。しかし、シャロン首相の側近であるサール内閣官房長は二十五日、「首相は(提案を)検討し始めた」と言明しました。
イスラエル大統領府も同日、「カツァブ大統領が和平案を前進させるため、(サウジの首都)リヤドに招かれれば、ファハド・サウジ国王と会う用意がある」と声明。また、ペレス外相、ベンエリエザー国防相が同案を評価・歓迎するなど、積極的に受け止める声が出ています。
ただ、六七年以前の段階に立ち戻ることには、イスラエル国内に根強い反対があります。
一方、米国のパウエル国務長官は二十五日、提案を「重要なステップだ」と指摘。同長官自身が二十四日にアブドラ皇太子と電話協議し「(皇太子の)イニシアチブに謝意を伝えた」といいます。
さらに、国務省のバウチャー報道官は、同案をめぐってパウエル長官が、イスラエルのシャロン首相、パレスチナ自治政府のアラファト議長、ヨルダンのアブドラ国王、エジプトのマヘル外相とも電話で意見交換したとしています。
ムバラク・エジプト大統領は来週にも訪米する予定で、同案が米側との会談の主要なテーマになるとみられます。
アブドラ皇太子の提案がこのように注目されていることは、強硬姿勢をとり続けているシャロン首相を孤立化し、和平の糸口を引き出す可能性をもっています。(浜谷浩司記者)
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