2002年2月24日(日)「しんぶん赤旗」
【パリ22日山田俊英】四月二十一日に第一回投票が行われるフランス大統領選挙は、すでに全主要政党の候補が出馬宣言し、論戦が始まりました。政治の実権を握っている挑戦者のジョスパン左翼連立政権首相(社会党)が実績を強調し、逆に現職のシラク大統領(共和国連合)が左翼政権に代わる対案を迫られています。雇用拡大、治安対策などが争点になります。
世論調査で20%台の支持を得ているのはシラク、ジョスパン両氏だけ。一回目投票で主要政党がそれぞれ候補者を立て、過半数得票者がなければ上位二候補で決選投票を行うため、五月五日の二回目投票は両氏の対決になる可能性が大です。
ジョスパン首相は立候補宣言の中で、就任以来五年間で九十万人の失業を減らした実績を語り、雇用拡大を五つの公約の第一に掲げました。ほかに司法・警察の強化による犯罪対策、貧富の格差や男女差別をなくす公正な社会の建設を公約し、「政府と共に働く大統領になりたい」と述べました。
各紙は週三十五時間労働法の実現など「豊かな実績」(レゼコー紙)と評価し、ルモンドは社説で「ジョスパンの五つの公約が真の討論の枠組みを提供している」と述べました。
シラク大統領はいまのところまとまった公約を発表しておらず、左翼政党だけでなくマスコミからも政策が不鮮明だと批判されています。
立候補表明後、発表した政策は犯罪対策。治安省の創設、再犯を繰り返す未成年者の拘置所の設置などです。近年、犯罪が増え、政府に対応を求める声が高まっていることにこたえました。ただし社会党もほぼ同じ政策を発表しており、違いを明らかにする効果はあがっていません。
シラク大統領の過去七年の任期は、九五―九七年の保守内閣と九七年から今までの左翼連立内閣に分けられます。保守内閣のジュペ首相がうちだした緊縮政策に労組、国民から大きな反対運動が起き、信を問うためにシラク大統領が国民議会を解散。その結果の保守敗北でした。
それだけに最初の二年間と保革共存政権の五年間が比較されます。仏大統領には国会で可決した法律の再審議要求など強い権限がありますが、シラク氏はこれを発動せず、左翼内閣と本格的な対決を避けました。
「シラク大統領が選んだのはいやがらせ戦略だった。週三十五時間労働法には『無謀な実験』、青年失対事業には『いつわりの』解決策と攻撃した。しかしジョスパン首相が就任して失業が減り始めた」―保守系新聞のフィガロもこう論評しました。パリ市長時代の不正資金疑惑や過去に極右・国民戦線のルペン党首に選挙協力を依頼した疑惑もあります。
それにもかかわらず厚い保守支持層と個人的な人気に支えられ世論調査でトップを維持しています。ただし差は数%。支持政党を持たない有権者をひきつけることがかぎになりそうです。
この点で注目されるのが「共和主義者の結集」を呼びかけるシュべヌマン前内相(市民運動党首)です。世論調査で10―14%の支持を得、第三位です。欧州統合の中でフランスの役割強化を主張し、保革両方から支持者を集めています。
仏共産党の候補、ユ議長は二回目投票で左翼統一候補の勝利をめざしつつ、「左翼が国民の期待にこたえる政策を行うために私に投票してほしい」と訴えています。
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