日本共産党

2002年2月24日(日)「しんぶん赤旗」

共産党が追及

これがムネオ・外務省疑惑

列島に怒り 政権に衝撃


佐々木・木島質問

与党も「予想超えた事態」

 「共産党の追及で情勢が変わった」(自由党議員)。いま、官邸、国会内の共通した見方です。

 衆院予算委員会で日本共産党の佐々木憲昭、木島日出夫両議員は、「秘 無期限」扱いになっていた外務省内部文書を示し、鈴木宗男衆院議員が「北方四島」支援事業を食い物にしてきた実態を国民の前に明らかにしました。

 当初、NGO(非政府組織)排除問題で「鈴木氏の関与はなかった」と強弁し、幕引きに躍起になった政府・与党。ところが、佐々木、木島両議員の質問で“決定打”を示された鈴木氏を、守るにも守りきれなくなったのです。

 与党の予算委員会理事のなかからは「予想をこえた事態だけに、早く手を打たないと予算審議に大きく影響する」と焦りの声も出始めました。

 鈴木氏と同じ橋本派の若手議員は、二十日の衆院予算委員会の集中審議についていいました。「共産党はすごかった。独自調査でバックデータもしっかりしていた。その調査能力にはひさしぶりに野党らしさを感じた」

「ガンガン追い詰めて」

激励メール1000通超す

 NGO排除問題で、鈴木氏の関与があったことを明らかにした一月三十日の筆坂秀世参院議員の質問以来、日本共産党本部には、千通以上の激励のメールが寄せられています。

 「正直、ふだんは貴党を支持していないが、今回の鈴木宗男の件だけは許すわけにはいかない」「ガンガン追い詰めてやってください。国民は関心を持って見ています」…。日本共産党に初めて注目した人や自民党員・支持者などからも次々寄せられています。

 テレビ中継で、佐々木議員が「ムネオ・ハウス」の写真をパネルで示し、鈴木氏の外交私物化ぶりを示すと、「北海道の恥。議員を辞めさせるまでやってくれ」など鈴木氏の地元からもメールが。国会の佐々木議員事務所へは、ときには二、三十本の電話がかかり、二十三日午前までに約百五十通のメールが届いています。

 佐々木議員へのテレビへの出演をはじめ、新聞、雑誌のインタビューなどの依頼は「ムネオハウス」追及以来、四十件をこえました。

鈴木議員と外務省

入札、人事で異常な癒着

 鈴木氏と外務省との癒着は、目を覆うばかりです。

 「北方四島」支援事業をめぐる入札介入疑惑では、外務省が入札条件などで事前に鈴木氏に“相談”していた実態が明るみに出ています。

 しかも、同省は、この“相談”の詳細を記載した同省内部文書を「秘 無期限」扱いにし、国民の目から隠そうとしていました。

 また入札予定価格を知りうる立場にあったコンサルタント会社と落札した業者が、入札前に鈴木氏の地元事務所で同席していたことも明らかになっています。

 この問題では、発注者である外務省の関連団体「支援委員会」が調査しましたが、その会議に外務省の中堅幹部が出席していたことも判明。外務省は、こうした事実を把握し、会議内容を記載した文書まで保管しながら、なんら調査に乗り出しませんでした。鈴木氏と外務省の“共犯”関係を示すものです。

 田中真紀子前外相は、佐藤優前国際情報局主任分析官の人事をめぐり、同省幹部から鈴木氏の同意なしには異動できないと言われていたことを暴露しました。小町恭士官房長は「鈴木議員との関連を説明した」と認めています。この佐藤氏は、過去三十七回の鈴木議員の外遊のうち、十九回にわたって同行していました。

 さらに、NGO排除問題で、田中前外相が国会で鈴木氏の関与を言明した一月二十四日夜、都内の料理屋で、鈴木氏と小町官房長、重家俊範中東アフリカ局長、田中前外相の秘書官も務めた上村司南東アジア第二課長らが、深夜十二時すぎまで、宴席を持っていたことも明らかになっています。

NGO排除問題

「まちがった」のは小泉首相

 「結果的に(アフガン復興支援)会議が成功したんだからいいじゃないか」――。小泉首相はNGO排除問題で鈴木議員の関与を明言しながら、外務省の排除決定をただした田中前外相を更迭して、真相隠しをはかろうとしました。

 しかし、田中、鈴木両氏を参考人招致した二十日の衆院予算委員会集中審議では、鈴木氏がNGO排除だけでなく、「北方四島」人道支援、アフリカODA(政府開発援助)はじめあらゆる分野で外務省の事業に介入していたことが明るみに出ました。

 政府は、鈴木氏の関与はなかったとする「政府見解」を出していますが、NGO排除への関与だけはなかったという議論は通用しない事態になっています。しかも、二十日の集中審議で鈴木氏は、「NGOに対する自分の意見を忖度(そんたく)し、外務省が判断したとしたら申し訳ない」と述べざるをえませんでした。

 田中前外相が「事務次官と大臣が相打ちで辞めるという首相の判断は、間違っている」「小泉首相は古い体質をもっており、ご自身が抵抗勢力にふみきった」と発言したのも当然です。

 二十日、ヤフーと共同通信がインターネットを通じておこなった投票によると、「首相自身が抵抗勢力」との田中発言を支持する声が76%に達しました。


日本共産党の追及日誌

2月13日【衆院予算委員会】

佐々木憲昭議員が、「ムネオ・ハウス」と呼ばれる国後島の「友好の家」の写真を手に、鈴木宗男議員によるロシア「北方四島支援」事業の私物化の実態と、受注企業からの献金還流のしくみを暴露。小泉首相は調査を約束

 質問には反響が殺到。テレビのワイドショー番組やスポーツ紙などもいっせいに大きく取り上げる

20日【衆院予算委集中審議】

 佐々木氏が外務省の「秘」文書を示して鈴木氏を追及。「ムネオ・ハウス」の入札について鈴木氏が「いっそのこと地域を北海道内ではなく根室管内に限定してはどうか」と迫り、入札をねじ曲げていたことを明らかにする

 鈴木氏は「外務省から説明があったやの記憶はある」

21日【衆院予算委】

 木島日出夫議員が新たな外務省関連団体の「秘」文書を暴露。「ムネオ・ハウス」の入札予定価格を知り得るコンサルタント会社と、受注した2社が、入札公告前に鈴木事務所で会っていたことが判明

 川口外相「事実なら言語道断」

22日【衆院予算委】

 大森猛議員の質問に川口外相が一連の内部文書の存在を認める

 小泉首相「遅くとも10日以内、できればもっと早く報告を」と川口外相に指示


税金は鈴木氏に こう“還流”した

図

 日本共産党の調査と国会での追及の中で、自民党の鈴木宗男衆院議員が日本の外交を私物化してきた疑惑の構図が浮き彫りになってきました。

選挙地盤の業者に

 通常のODAは、相手国の要請に基づき調査・検討したうえで閣議決定し、相手国との交換公文に署名した後に入札を行います。

 ところが「北方四島支援」はこれらの手順をふまず、四島住民代表の要請を外務省ロシア支援室が検討、支援内容を決定し、外務省の関連団体である「支援委員会」が実行するというもの。特定の議員が関与する余地があります。

 そこにつけこんだのが鈴木議員です。例えば、国後島の「ムネオ・ハウス」の場合、左上の図の通りです。入札前に外務省側が鈴木氏を訪問。省庁が入札前に特定の議員に説明にいくこと自体、「通例行われていない」(竹内行夫外務事務次官)異常なことです。

 鈴木氏は、自身の選挙地盤の業者に受注させるレールを敷き、その意向に沿って入札参加資格が設定され、鈴木議員の後援業者が受注・落札しました。

北の宿からアフリカのダムまで

 「北方四島支援」関係で鈴木氏は、「ムネオ・ハウス」のほかにも桟橋改修、はしけなどを受注した後援会幹部が社長をつとめる企業など九社から、六年間で総額四千五百六十九万円の政治献金を受け取っています。

 アフリカODA事業関係でも、ケニアのソンドゥ・ミリウ水力発電事業を受注した鴻池組をはじめ十二社から六年間で七百二万円の政治献金が還流しています。(上の図)

 まさに“北の宿からアフリカのダムまで”利権の手を広げているわけです。

 鈴木氏は政治家個人向けの企業・団体献金が禁止される前年の一九九九年に、北海道から沖縄まで千五百社以上から約三億円を集めています。

職務権限、刑事責任は…

 鈴木氏は「ムネオ・ハウス」の計画段階から入札決定に至るまで、官房副長官という内閣の要職にありました。「幅広い職務権限を持っていると解するのが当然」(筆坂秀世書記局長代行)です。その立場から、自分の後援者が受注できるよう介入したことになります。

 「ムネオ・ハウス」を受注した渡辺建設工業の献金額は、九九年に二百五十万円と過去五年間で最大に増え、仕事をくれた“見返り”としての対価関係があれば、政治献金として届けていたとしてもワイロ性が問われます。

 法務省は、刑事事件になるかどうかは「一般論として職務との関連があるかの事実による」との見解を明らかにしています。

 また、釧路市の鈴木事務所で鈴木氏の秘書、渡辺建設工業、犬飼工務店の両社長、入札予定価格を知りうる立場にあった設計コンサルタント会社などが、入札の前に会っていたことも分かりました。

 このコンサルタント会社は「支援委員会」に対し「工事入札以前に関連情報を外部に漏らしたことに関し深くお詫(わ)び申し上げます」というわび状を提出しており、入札妨害にあたる疑いも浮上しています。


ゆがめられた入札 ムネオ・ハウス

99年1月 鈴木氏「地元企業を」

 外務省ロシア支援室がロシア「北方四島住民支援」として集会所兼宿泊施設を計画。「鈴木官房副長官より、地元企業を使うことが重要であるとの示唆」がある(99年1月「ロシア支援室」文書)

5月27日 鈴木氏「根室管内に」

 外務省側が鈴木官房副長官に入札について説明。鈴木氏「(入札参加業者を)根室管内に限定してはどうか」(99年5月28日、外務省「秘 無期限」文書)

6月3日 鈴木事務所で関係者が会合

 釧路市の鈴木議員事務所で、工事を受注する「渡辺建設工業」、「犬飼工務店」、設計を受注したコンサルタント会社「日本工営」、工事を丸投げされる大手エンジニアリング会社「日揮」、鈴木氏の秘書が会合(99年11月2日、「支援委員会事務局」文書)

6月13日 入札公告掲載

 入札の公告を新聞に掲載。「入札参加者の資格 (中略)(2)根室管内において施工実績を有する者」

7月7日 入札。直後に工事丸投げ

 入札の執行。参加は「渡辺建設工業」「犬飼工務店」の共同企業体(JV)一社。同JVが落札(4億1685万円)

 両社JVは「日揮」と下請け契約を締結(3億5000万円)

鈴木議員へ献金

 「渡辺建設工業」「犬飼工務店」は99年、鈴木議員側に262万円、95年から2000年まで870万円を献金

 


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