日本共産党

2002年2月23日(土)「しんぶん赤旗」

雪印食品が4月解散

従業員は3月解雇


 牛肉偽装事件で経営が急速に悪化している雪印食品は二十二日午前の取締役会で、経営再建を断念し、四月末をめどに開催する臨時株主総会で会社を解散することを決めました。岩瀬弘士郎社長が同日正午から都内で記者会見し、発表しました。

 岩瀬社長は会見で、法的整理でなく解散を選んだ理由について、「債権者に負担を掛けないため」と説明しました。また従業員九百五十二人の大半を三月末でいったん解雇した上で、事業譲渡による雇用の継続や就職あっせんなどにあたる方針を示しました。

 同社は三月末をめどに、営業を順次縮小・廃止します。会見に同席した親会社、雪印乳業の岡田晴彦副社長は「雪印食品へは(解散に伴う損失への)資金援助二百五十億円を中心に万全の支援態勢を敷く」と強調。これを受け、雪印食品は、債権者向けの取引債務について「親会社の支援を受け、約定通り全額支払う」としています。

 雪印食品はこれまで、パートなど約千人の契約打ち切りをはじめ「コスト削減」を打ち出してきました。しかし、事件発覚直後からスーパーなど小売店の間で同社製品を撤去する動きが相次ぎ、現在ではほとんどの製品が返品されるなど、事実上の営業停止状態に陥っています。発端となった関西ミートセンター(兵庫県伊丹市)以外でも「産地偽装」が発覚するなど、事件が広がりを見せていました。


写真
質問する大森猛議員  =22日、衆院予算委員会

再雇用 政府は万全に

大森議員質問 厚労相が努力約束

 雪印食品が解散を決定した二十二日、衆院予算委員会で日本共産党の大森猛議員は、偽装牛肉事件になんの責任もない同社の二千人の労働者を「ただの一人も路頭に迷わせてはならない」と、退職金や再雇用など政府として万全の対策をとるよう求めました。

 武部勤農水相は、会社側に最大限の配慮を要請したとのべ、坂口力厚労相は、職業相談窓口を企業内に設置し、再就職援助計画に協力し、「積極的に再就職の支援をしたい」と約束しました。大森議員は、BSE(狂牛病)に便乗した不正行為をおこなった経営者の責任を問うとともに、パート、正規労働者への救済措置を要求。親会社の雪印乳業も活用し、再雇用や退職金の支払いをするよう求めました。

 先行して解雇がすすめられてきた一千人以上のパートには、退職金が支払われない問題をとりあげ、パートの大半が十年、十五年と長期に反復雇用されてきており、正規社員と同様の退職金支払いと再雇用をすべきだとただしました。坂口厚労相は「再雇用に努力する」と約束し、とくに母子家庭などは優先雇用したいと答えました。

 大森議員は、関東工場(埼玉県春日部市)についての調査では、業者数に比べ、雇用保険加入者がかなり少なかったとし、「失業保険ももらえない人がでてはならない」と質問。坂口厚労相は遡(そ)及適用も含めて調査すると答えました。


怒り、不信の声

酪農家

「当然の判断」意見相次ぐ

 雪印食品の解散が決まった二十二日午前、発祥の地、北海道の酪農畜産農家からは「当然の判断」と厳しい意見が相次ぎました。

 北見市で肉牛七百五十頭を飼い、焼き肉店も経営する小田一之(56)さんは「最低限のルールを守れなかったのだから、食品業に携わる権利はない。解散する前に消費者まで出回った商品を回収するべきでは」と厳しく批判。一昨年、雪印乳業による集団食中毒事件の原因工場があった十勝管内大樹町の畜産農家の女性(60)も「続けていても、また同じことをやったのでは」と語りました。

消費者

業界全体への不信感募った

 日本消費者連盟の水原博子事務局長は「雪印食品に対する消費者の信頼回復はもはや不可能。解散はやむを得ない」ときっぱり。「歴史あるブランドだけに、裏切られたという思いは強い」と厳しく批判しました。

 さらに、次々と明るみに出たほかの業者の不正にも触れ「業界全体への不信感が募った。企業はもうけ主義に走り、消費者は後回しにされた。国や業界団体は流通の透明性や食品表示の在り方を再点検し、信頼回復に努めるしかない」と指摘しました。

経営者

発表会見では頭下げたが…

 雪印食品の岩瀬弘士郎社長らは二十二日正午から、東京都江東区内のホテルで、同社の解散を発表。同社長は用意したペーパーを神妙な面持ちで約十分間、かみしめるように読み上げました。居並ぶ出席者は深く頭を下げたが、長年続けられた産地偽装の真相は明らかにされませんでした。

 岩瀬社長は、職を失う従業員に対しては「不祥事に関係のない従業員や家族を思うと、胸の張り裂けるような思いだ」というものの、「事実関係を解明しないで解散するのか」との質問に、出席者の一人は「捜査で資料を押収され、裏付けができない」と発言。自らの手による不正解明の放棄を表明しました。

 


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