2002年2月23日(土)「しんぶん赤旗」
【マニラ22日北原俊文】フィリピン軍による武装組織アブサヤフの掃討作戦を米軍が支援し、南部のバシラン島を中心に実施されている米比合同軍事演習「バリカタン02―1」がしだいに本格化しています。これに参加する米軍特殊部隊先遣隊約三十人が十七日に現地入りして以来、十九日までに米兵八十四人が投入されました。
最終的には、在沖米軍からの米兵を含め米軍百六十人、比国軍約三千八百人が参加します。残りの米兵約八十人は数日中に投入され、アブサヤフ掃討の本格的作戦は三月第二週にも始まると伝えられます。
演習といいながら、武装組織との戦闘を予定し、事実上の対テロ軍事作戦です。比国内では、この演習を憂慮する声が高まっています。
すでに投入された米軍部隊は、四人から三十三人のグループに分かれ、比国軍の陸軍歩兵数個大隊や海兵大隊にそれぞれ配属されています。海兵大隊に配属された二十人のうち四人が、アブサヤフの活動地域であるバシラン州マルソ町の山間部にある国軍拠点に派遣されました。
現地司令部のあるミンダナオ島のサンボアンガなどからの報道によると、バシラン島西岸沖約七キロの小島、テンゴラン島で十九日、米軍の現地入り後初めて、比国軍とアブサヤフの交戦が起き、比国軍兵士二人が負傷しました。二十二日には、演習に参加している米軍ヘリコプターが墜落する事故も起きました。また、発着する米軍ヘリの騒音被害や、ローターの風圧で民家の屋根が吹き飛ばされるなどの被害が出ています。
一月三十一日に開始式が行われた今年の米比合同軍事演習「バリカタン」は、テロとのたたかいでの比国軍の能力向上がテーマとされます。全体は四部分からなり、その主要部分の「バリカタン02―1」が、アブサヤフの拠点のあるバシラン島を中心に実施されています。
比領土での外国軍の交戦は違憲とされます。しかし、演習の実施要綱では、演習は比国軍参謀総長の総指揮下で行われるというものの、両国軍は自国指揮官の下で行動するとして、米軍独自の判断で行動できる形になっています。
報道によると、米軍特殊部隊の現地指揮官マクスウェル中佐は十七日、「われわれは常に、自衛に必要なあらゆる措置をとる」と述べています。攻撃を受ければ、米軍も直ちに応戦することになります。参加米兵は「演習のためではない。軍事作戦で来た」とのべていると伝えられます。
演習に反対するロサレス下院議員(市民行動党)は十九日、「バリカタン」は性格を変えたと批判し、(1)戦闘地域で実施される(2)実弾を使用する(3)実際の敵が存在する(4)米軍が直接交戦する危険がある―ことを指摘しました。
ビアソン上院国防安全保障委員長(元国軍参謀総長)も二十一日、「今回の演習は全く新種の演習だ」とし、「それが、演習なのか実戦なのかの議論が起きているゆえんだ」と述べました。
ティグラオ大統領報道官は十八日の声明で、「『バリカタン02―1』合同訓練演習は、比米関係における新たな歴史的段階を画した。比米関係は、わが国が一九九一年にわが国領土の米軍基地の存在の終了を決定した後、冷却していた」と述べ、演習を「二十一世紀における米比関係のモデル」とまで形容しました。
ブッシュ米大統領も十九日、日本国会での演説で、「われわれは以前にも増して、この地域での前方展開に関与していく。フィリピンやオーストラリア、そしてタイを支持するため、米国の力と決意を示し続ける」と述べ、フィリピンでの演習が東南アジア地域での米軍プレゼンスの強化の一環であることを示しました。
米比合同軍事演習に反対する広範な勢力を結集した「平和の集い」は、十二日に発表した声明の中で、「フィリピンは今や、いわゆる米国の反テロ戦争でアフガニスタンに次ぐ第二の戦線となり、『訪問米軍地位協定』はフィリピンでの米軍の『トロイの木馬』に使われている」と非難しました。また、米比両国が起草中といわれる「相互兵たん支援協定」も含めて、米軍プレゼンスの永続化への懸念を表明しました。
機能しない場合は、ブラウザの「戻る」ボタンを利用してください。
著作権:日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp