2002年2月20日(水)「しんぶん赤旗」
実に異様な日米首脳会談、米大統領の訪日でした。十八日の記者会見と十九日の国会演説でブッシュ大統領は、何度も何度も繰り返しました。「総理を信頼する」「すばらしい改革者だ」「指導力に厚い信頼を抱いている」。深刻なリストラと失業、政治腐敗にき然とした態度をとれない小泉首相への日本の国民の怒りと不信が急増し、首相支持率が急落するなかでのこの礼賛。無神経なのか、それとも底意があってのことなのか。日米首脳会談と日本の国内政治、国民感情との溝の深さに驚きます。
ブッシュ大統領が今回のアジア三国、特に日本訪問にかけた最大の狙いは、一月末に米議会で明らかにした反テロ戦争拡大、イラク、イラン、北朝鮮の「悪の枢軸」三国との対決路線への支持のとりつけにあります。
「すべての選択肢はテーブルの上にあり、排除しない」。この言葉が武力行使、つまり新たな戦争の可能性を明らかにするのは常識ですが、重大なのは、それを米国内ではなく、日本の首相との会談、日本での記者会見で宣言したことです。
この危険な言動と一体で押し出されたのがいわば究極の一国主義(ユニラテラリズム)の思想です。国会演説で強調されたのが「共通の価値観」「共通の利益」でした。それは、「悪の枢軸」論を批判する他国の外務大臣の発言を「水蒸気」になぞらえ、わきあがる国際的な非難、懸念を歯牙にもかけず「(自分のことを)分かってくれる」「協力してくれる」といってのける一方的で独善的な「価値観」「利益」にほかなりません。
「文明とテロは共存できない」(国会演説)のは当然のことです。しかし、ブッシュ大統領の価値観の中には「異なった文明間の共存」という価値観は見当たりません。それがまさに、テロに反対する国々、人々からも報復戦争、戦争拡大に反対する声があがる理由であるのに、です。
ブッシュ大統領はいいました。「二十一世紀は太平洋の世紀だ」(国会演説)。いわく、「平和な地域」「政治紛争解決に軍事力が行使されない地域」。二十一世紀のアジア太平洋、いや世界そのものがそうあるべきです。しかし、ブッシュ大統領の考えるアジアはそういうアジアではないことがすぐに明らかになります。
ブッシュ大統領が「自由な太平洋諸国の共同体」として強調したのは、オーストラリア、フィリピン、タイの名をあげて「それらの国を支援する上での力と決意」、この地域への米軍の前進配備、そして「効果的なミサイル防衛計画の推進」でした。まさに、米国を軸にした軍事同盟と米軍をよりどころにするアジアです。
日本国民にとって重大なのは、こうしたブッシュ戦略が今回の小泉首相との会談によって、日米共同の路線として押し出されたことです。そして、日米同盟がまさに「悪の枢軸」との軍事的対決を掲げた覇権主義路線の中核的推進力として位置づけられたことです。
「悪の枢軸」論に対する小泉首相の見解は「日本の役割も重要だ。米国を今後とも支援してゆきたい」でした。自衛隊の派遣を高く評価され、ミサイル防衛計画での協力でも合意した上での、「今後とも支援」が何を意味するかは明白でしょう。
ブッシュ大統領が強調したもう一つのポイントは、小泉首相の「構造改革」への全面的な支持と「改革とリストラを大胆にすすめ」(国会演説)ることへの期待でした。そこには、アジア太平洋戦略、世界戦略をすすめる上で日本を利用しようとするブッシュ政権の思惑とこれに追随する小泉政権の姿が改めて浮き彫りになっています。それは、受身の「属国」からより積極的にブッシュ政権の戦争戦略に協力する日本、新たな日米軍事同盟の実像ではないでしょうか。
ブッシュ大統領の小泉首相礼賛の真意はそこにあるのではないか。
しかし、いまはっきりさせなければならないのは、「悪の枢軸」戦略の危険性と軍事同盟、軍事力信奉の思想から抜けきれないブッシュ大統領流の価値観、二十一世紀論の根本的あやまりです。
西欧の米同盟国や、もっともワシントンに近いといわれるカナダなどからさえ、目にあまるブッシュ政権の一国主義、独善主義への批判の声があがっている事実がそのことを物語っています。
ブッシュ政権にすりよるだけ、アジアの国々と世界の流れから遠ざかるという現実を小泉首相は知るべきです。
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