2002年2月10日(日)「しんぶん赤旗」
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小泉内閣は八日、アフガン復興支援会議への一部NGO(非政府組織)排除問題で、外務省が排除を決定する際「特定の議員に従ったことはない」と、自民党・鈴木宗男衆院議員の関与を否定する見解を発表しました。安倍晋三官房副長官が口頭で示した見解の問題点を検証します。
これまでの国会論戦のなかで、小泉首相が鈴木議員の関与を認めていたことは動かしがたい事実です。
一月三十日、参院予算委員会。日本共産党の筆坂秀世政策委員長の追及に、小泉首相は「一部の議員の発言によって、出てもらいたいNGOが(会議に)でることができなかったということを田中大臣は気付いた」と答弁。「一部の議員」という表現で、鈴木議員の関与を事実上認めました。
そして、二月一日の参院予算委員会。小池晃議員が「鈴木議員の影響によって出席拒否ということになった、そういう認識か」と追撃。ここでついに小泉首相は「簡単にいえば影響を受け過ぎた」と関与を認めざるをえませんでした。
ところが、外務省の重家俊範中東アフリカ局長は、首相が鈴木議員の関与を認めた以降も「(排除決定は)外務省自身の判断。特定の政治家の主張に従ったものではない」とする答弁を判で押したように繰り返したのです。
この答弁の矛盾を野党に追及され、小泉内閣が出してきたのが今回の見解です。しかし、その内容は、外務省の局長答弁の線に沿って首相答弁を修正するものでした。
小泉内閣は、見解を発表する際、外務省関係者から鈴木議員とのやりとりを聴取した「調査結果」を明らかにしました。政府は、この結果をもって鈴木議員の関与を否定したつもりのようですが、その内容は逆に外務省と鈴木議員との密接な関係を浮き彫りにしています。
国際会議を前にした一月七日、鈴木議員が排除されたNGO代表を批判すると、翌日には中東アフリカ局長が鈴木議員を訪ね、日本政府の考え方を説明する。同十九日、外務省が二団体の参加を不許可にする方針を決定すると、翌日には鈴木議員に不許可決定を説明する、といった具合です。(別項参照)
見解を報じた九日付各紙が「外務省幹部が頻繁に鈴木氏と連絡を取っていた実態が明らかにされた」(「毎日」)、「政府見解が(鈴木議員関与の)疑念をぬぐい去るものには程遠い」(「産経」)と指摘したのも当然です。
かりに首相答弁を完全に否定すれば、小泉首相本人に責任が及びかねません。このため見解は、関与を認めた首相答弁を「(経過の)全体から受けた印象だった」と苦しまぎれの説明で片付けようとしています。
しかし、小泉首相は、一日の小池議員の質問で自身の「認識」を問われて「影響を受け過ぎた」と答弁。四日の衆院予算委員会では、「私もよく事情を調べてみた」としたうえで、「鈴木議員の影響、発言を気にし過ぎた、私の判断なんです」と断言しているのです。
この答弁がたんなる「印象」だったということで、結論として関与を否定する軌道修正は、一国の首相が国会の場でウソの答弁をしていたことになり、首相の資格そのものが問われる重大問題です。
見解、「調査結果」ではNGO排除問題の真相は何も明らかになっていません。
当事者の一人である田中前外相は「参考人に呼ばれたら、いつでもどこでも申し上げることができる」(八日)と表明、鈴木議員も「(議運)委員長をやめた以上、国会のどんな場所でもでかけて話す。ご遠慮なく(喚問)要求を」(一月三十一日)と語っています。
小泉首相は、参考人招致について「国会の場で議論を」とげたを預ける無責任な態度をとりつづけ、与党は参考人招致に背を向けています。小泉首相・自民党総裁が、ここで参考人招致にさえ応じないならば、今度はみずからの責任を国民から問われることになるでしょう。
〈2001年〉
12月6日 自民党外交関係合同会議でアフガン復興NGO東京会議への「草の根無償資金協力」の適用が問題に。鈴木議員が資金は国内での活動に対する支援には使えないと指摘(外務省内で検討した結果、同資金で国内でのNGO活動の支援はできないとの結論に)
7日 前日の結論を、会議を主催するジャパン・プラットフォーム関係者と鈴木議員に説明
13日、18日 “外務省が自民党内の異論で東京会議への支援撤回”との一部報道について、鈴木議員が対外的にきちんと説明をと同省に指摘
<2002年>
1月7日
鈴木議員主催の夕食会で同議員が12月の国会議員のアフガン出張等に触れピースウインズ・ジャパン(PWJ)代表を批判
8日 重家中東アフリカ局長が鈴木議員を訪ねアフガン復興支援国際会議について政府の考え方を説明。鈴木議員からNGOと政府との連携の必要などについて意見
19日 重家局長からPWJ代表に電話で、会議への「参加の辞退を要請」。要請が拒否され、「参加を不許可にする方針を決定」
20日 中東第二課長から鈴木議員に電話で「不許可」決定を連絡
21日 アフガン復興支援国際会議本会議が開催。田中大臣から重家局長、野上次官に参加させるようにと指示
22日 重家局長に鈴木議員から電話。会議での各国のアフガン支援の貢献額の照会。鈴木議員から野上次官に、田中大臣の「政治家の関与」発言について質問の電話
24日 野上次官に鈴木議員から電話。田中大臣の国会答弁で鈴木議員の名前が出て不許可に関与したといわれていることについて質問
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