日本共産党

2002年2月8日(金)「しんぶん赤旗」

輝いてしなやかに

物語 男女差別裁判の40年(64)

終章 時代の流れ

ミセスのどこが悪いねん

住友生命ミセス差別裁判


写真
住友ミセス差別裁判の原告たち。(左から)石塚、川畑、蔭山、岩崎、平尾、浜田の各原告

 《ミセス差別は違法》

 ――二〇〇一年六月二十七日、大阪地裁が出したこの判決は、時代の流れをあざやかに示しました。

 「ミセスのどこが悪いねん」。前回、国際活動を紹介した住友生命ミセス差別裁判は、既婚女性社員にたいする退職強要やいやがらせ、昇給・昇格差別とたたかう十二人の原告の裁判です。

 結婚・出産を理由にした解雇は多くの判決で違法とされ、均等法で禁止されています。今回の判決はさらに進んで、《結婚していることを理由に人事考課面で低い査定をするのは違法》としたのです。男女差別裁判は、二十一世紀、また大きな一歩をすすめました。

 新聞・テレビは大きくとりあげ、「日経」社説はいいます。《結婚や出産が人事考課で不利となれば少子化のいっそうの進展となり、男女共同参画時代に逆行する》。原告たちには「見たよ。がんばるんやで」という男性職員など、喜びのメールや電話がじゃんじゃんきました。

 原告たちは同社の内勤女性(事務職)。岩崎光子さんは第一子を妊娠したとき上司にいわれました。「私の点数が悪くなるからやめてくれ」。やめずに働くと、妊娠七カ月で電話もトイレもない二階に移され、電話のたびに大きなおなかをかかえて階段を上り下り…。

 女性たちは労働省婦人少年室に調停申請しますが、「同じ雇用区分(一般職)に比較対象となる男性がいない」などの理由で救済されなかったため、九五年、会社とともに国も相手に提訴しました。

 会社は裁判で「既婚女性は仕事の質と量が低下、低査定は当然」。これにたいし原告は、ミセス差別は根源的な性差別だと主張。住生関係者三十数人(現職をふくむ)が実名で、差別やいやがらせの事実を陳述書にして提出するなど、職場の要求、仲間と連帯して運動を広げてきました。

 働くヤングミセスも多いいま、この裁判は「女性が安心して子どもを生み育てながら働く」ことを願う多くの女性には人ごとではありません。岩崎さんの話をきいた高校生が感想を書きました。《私は男女差別のことは気にもとめていなかった。でも人ごとではない。私も会社にいやがらせをされ、悲しい思いをするかもしれない。会社は今になって頭を下げるのはおかしいと思うかもしれないけれど、今だからこそ謝って、会社は今後どのようにしていくのか、話してほしい》

 「ミセス差別をなんとかしたいと始めた裁判でしたが、いまは働く女性共通の思いとして、大きく広がっています」と浜田浩子さん。画期的な判決にもかかわらず控訴した会社に、「判決にしたがって是正、解決を」の声が広がっています。

 一月二十四日大阪市内で開かれた決起集会「女も男も輝いてはたらきたい―ミセスのどこが悪いねん」には二百人をこす人が参加。地裁判決をうわまわる勝利解決をかちとろうと決意をかため、原告をささえる家族の発言が感動をよびました。「この裁判は不当な扱いに目をそむけないで真正面から立ち向かっていることがすごい!」(川畑千佳子さんの息子、望さん)。――不当なことに勇気をもってノーということ。人間らしい未来を開く男と女の歩みがつづきます。(つづく)

 


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