日本共産党

2002年2月7日(木)「しんぶん赤旗」

「悪の枢軸」発言 米、孤立深める

欧州諸国は一線画す

独・仏・伊 イラク攻撃拡大に反対


 【ウィーン5日岡崎衆史】ブッシュ米大統領が一般教書演説でイラン、イラク、北朝鮮を「悪の枢軸」と名指しして敵視していることについて、欧州諸国はこれと一線を画すとともに、懸念や批判を強めています。

 欧州連合(EU)議長国スペインのピケ外相は五日、マドリード訪問中のアハニ・イラン外務副大臣との会談後、同地で記者会見し、「(イランの)改革プロセスと改革的部門を支持することは非常に重要である」と述べ、米国との対応の違いを強調しました。同外相は、EUはテロや大量破壊兵器拡散、イラン国内の人権問題に関して、イラン政府との「政治対話」を追求していくと語りました。

 EUの内閣に当たる欧州委員会のバイガント報道官も四日、ブリュッセルでの記者会見で、テロなどについての米国の懸念を共有すると述べる一方、「目的を達成するための政策は共有していない」と語りました。「協調ムードから急に対決ムードに移り困惑している」と述べ、国際テロとのたたかいで協力関係ができつつあった国への米国の突然の宣戦布告に驚きを示しました。

 米国のイラクへの脅しについては、ドイツのフォルメル外務副大臣が四日、ドイツ第二テレビ(ZDF)で、「欧州人はこれに警告を発する。イラクがテロにかかわっている証拠はなく、テロの論議は古い敵意を合法化するためには使用できない」と批判しました。

 リシャール仏国防相やマルティーノ伊国防相などがイラクへの攻撃拡大に反対を表明しています。

 一方、ストロー英外相は一日、ワシントンで、イラン政府との外交関係を維持することが、同国にイスラム過激派との関係を放棄させる圧力になると語り、ブッシュ演説を暗に批判。同時に米大統領の一般教書演説が有権者の関心をひくためのものだという見方を示しました。


「米とは平和の考え方違う」

仏国防相、テレビで明言

 【パリ6日山田俊英】米政権が過去二十年最高の13・5%増の来年度軍事予算を提案したことに対し、リシャール仏国防相は五日、「世界平和と危機対策について欧州の考え方は米国と違う」とテレビ番組で批判的考えを明言しました。

 同国防相は、米国が北朝鮮、イラン、イラクを「悪の枢軸」と呼び、巨額の軍事費を計上したことについて「だれも文句を言えない政治的支配につながる。米国は世界一巨大な船を意のままにしているからだ」と懸念を表明しました。

 六日付ルモンド紙は、すでに米国の軍事費が欧州連合(EU)十五カ国合計の二倍以上で、二〇〇〇年の国内総生産(GDP)比でもEU平均の1・4%に対し米2・8%と二倍になっていることを指摘。二〇〇三年度予算案で特に研究開発費がEUの四倍にのぼることをあげ、「第一に軍事技術の格差を欧州が追いつけないまでに広げ、第二にテロ支援国家を攻撃するために国際的な信認は不要と宣言した」と「二重の危機」を生みかねないと論評しました。「無条件の指導性を要求する米国に、欧州で不快感が広がっている」と報じました。

 EUは欧州独自の共通防衛をめざし、来年度、北大西洋条約機構(NATO)の指揮・通信機能を利用した緊急対応部隊を発足させる予定ですが、フランソワ・アイスブール仏戦略研究基金理事長はルモンドとのインタビューで「軍事技術で欧米間の格差が広がればインターオペラビリティ(軍隊の共同運用性)が低下し、米国の決定が重きをなし、結局欧州は米国に従うしかなくなる」と警告しました。


北との対話米に説得

韓国政府と与党が方針

 韓国政府と与党・新千年民主党(民主党)は六日、北朝鮮政策の協議会を開きました。

 丁世鉉・統一相と崔成泓・外交通商相ら関係閣僚と朴宗雨・民主党政策委員長などの出席者は、太陽政策を変えないことを確認。二十日の米韓首脳会談で、ブッシュ米大統領に対し、北朝鮮との対話に乗り出すよう説得する方針を固めました。

 また、米大統領の強硬発言を、北朝鮮に対話を促すメッセージとして活用する、との方針も確認しました。これは、北朝鮮に対しても米国との対話を働きかけることにより、韓国主導で緊張緩和をめざすものです。

 この席で党側は、ブッシュ大統領が韓国との協議なしに北朝鮮を「悪の枢軸」と非難したことにかんし、「北朝鮮政策で韓米両国が共同歩調をとるためには“対等な外交”を展開すべきだ」と政府に要請しました。


UAE、イランも強く批判

 【ローマ5日島田峰隆】ドバイからの報道によると、アラブ首長国連邦(UAE)のヌアイミ外相は五日、ブッシュ米大統領がイランなど三カ国を名指しして「悪の枢軸」と決めつけたことに対し、「そうした分類は筋違い」であり、いっそうの緊張を招くとして強く批判しました。

 同外相は「自分と違いがあるからというだけで、だれかを邪悪あるいは悪魔だと描くことはできない」「そのような分類は外交的礼儀と国と国の間に存在すべき協力を欠くものだ」と強調しました。

 イランのシャムハニ国防相も五日、イランは「政治的合法性」を持ち、「アフガニスタンやイラクとは違う」と指摘。ブッシュ大統領の発言は「国内問題から逃れるための方策にすぎない」と語りました。

 


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