日本共産党

2002年2月7日(木)「しんぶん赤旗」

狂牛病問題の被害

武部農水相これでも資格あるの


 日本共産党、民主党、自由党、社民党の野党四党がBSE(狂牛病)問題で提出した武部勤農水相の不信任決議案は、五日の衆院本会議で与党の反対多数で否決されました。小泉首相、与党三党はかばいますが、武部農水相には、その資格も当事者能力もありません。


肉骨粉禁止は行政指導だけ

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「牛肉を大いに食べる会」で牛肉を食べる武部農水相(右)と坂口厚労相(左)=昨年10月2日、東京・千代田区の憲政記念館
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武部農水相の不信任決議案を衆院議長あてに提出する農水委員会の野党理事・委員ら。左から3人目は日本共産党の中林よし子衆院議員=4日、国会内

 一九九六年四月、WHO(世界保健機関)は肉骨粉使用禁止の勧告を出しました。このとき農水省は、法律による禁止を求めた専門家の意見を無視して、行政指導にとどめました。

 日本共産党の中林よし子衆院議員は、昨年末の臨時国会でWHO勧告の問題をとりあげ、武部農水相に防止対策が企業まかせであったことを認めさせました。

 さらに、今国会で宮本岳志参院議員は被害額が推計で二千億円を上回ることを明らかにし、武部農水相自身の責任を追及。肉骨粉の輸入禁止を行政指導にとどめた点について、武部農水相は、昨年八月、農水省飼料課長が「不都合がある」と不備を認めていた事実をつきつけられても、「組織のすみずみのことまで私が一部始終知りうることは、困難だ」(参院予算委員会、一月三十一日)と開き直る始末でした。

 また、武部農水相は、WHO勧告の問題に直接かかわった熊沢英昭事務次官(当時)を罷免するどころか、退職金を受け取って今年一月に退官するまでかばい続けました。この点を野党側に追及されると、「これは不祥事とか刑事事件とかではない」(衆院予算委員会、四日)と平然と答弁。真相究明とは程遠い姿勢をとりつづけています。

危険性指摘のEU評価拒否

 農水省は、EU(欧州連合)委員会に日本のBSE発生の評価を依頼してきました。

 ところが、小泉内閣発足後の二〇〇一年五月八日、EU委員会から武部農水相あてに、日本でのBSE発生の危険性を指摘する書簡が送られてきたにもかかわらず、農水省は六月十五日付の書簡で、日本に対する危険性の評価作業をやめるよう拒否回答したのです。

 「『日本でBSE感染の危険性は増大し続けている』というEU側の指摘は図星だった。それなのに同省はこの指摘に従って対策強化を急ぐどころか、EU側の口を封じてしまった」(「日経」六日付)など、批判の声があがるのも当然です。

小泉首相 どこまでもかばう

自民・公明 党略を国会の上におく

 「感染源の究明がそんなに大きな問題か」「行政指導を知らないのを、恥ずかしいと思わないか」――。BSEの発生と政府の不手際による牛の価格暴落で、自殺者や離農も相次いでいるのに、武部農水相は農民を前に平然といってのけました。

 武部農水相の暴言(別項)は枚挙にいとまがありません。このどこに農水相としての資質、資格があるのでしょうか。

 「不信任決議案が否決され、立法府から信任が得られた。今後とも職責を果たし、国民に安心してもらうよう全力を尽くしてもらいたい」。小泉首相は六日の衆院本会議での答弁で、武部農水相の続投を強調しました。任命権者としての責任はまったくなし。小泉内閣が、農政不信回復の能力をもたない内閣であることを示したものです。

 「政治家は出処進退を早く決めた方がいい」(自民党・野中広務元幹事長)、「否決されたからそれでいいということではない」(公明党・冬柴鉄三幹事長)。不信任決議案を否決した後、当の与党内から武部農水相“辞任”をほのめかす発言も出始めましたが、これほど無責任な態度はありません。

 昨年三月、野党四党が森内閣不信任決議案を提出したとき、与党は否決しながら“あれは信任でない”と失政続きの森政権に注文をつけ、国民的不人気の政権延命にきゅうきゅうとしました。今回もまったく同じ構図です。

 国会の表決は、政党、政治家にとって最も責任ある態度表明のはずです。国会で否決、つまり信任しておいてあとで党略的な思惑で引きずりおろすというのはまったく矛盾した態度で、党略を国会の上に置くものです。

 数の力で否決できても、農水相の資質、能力、資格がないことを補うことはできません。


まだ出るから驚かないで/発生源は大きな問題でない

武部農水相の暴言の数々

2001年
9・10

千葉県で国内初の狂牛病感染を確認◆「(欧州以外で初の狂牛病確定を発表した記者会見に副大臣や局長が不在だったことについて)私どもがいないことのどこが問題なのか…対応は担当課長で十分だ」(9・22、仙台市内での記者会見で)

10・18
食肉牛全頭を対象とした検査始まる◆「二転三転、後手後手と対応を批判されるばかり。あなたたちは牛肉が安全だとは大きく扱ってくれない」(10・19、閣議後の記者会見で)◆「(千葉県で発生した)狂牛病の牛は私の選挙区から出ている。対応を間違えれば、次の選挙に出てこられないだろうというぐらいの状況にあります」(11・16、衆院厚生労働・農水・経済産業連合審査会で)

11・21
北海道で国内二頭目を確認

12・2
群馬県で国内三頭目を確認
「まだまだ出るから驚かないでください」(12・4、国会内の廊下で民主党の横路孝弘氏に)
◆「(肉骨粉を牛に与えてはいけないという)行政指導を(酪農家は)知らなかったという。私なら恥ずかしいと思う。感染源や感染ルートは(牛肉の)安全性の問題にとって、そんなに大きな問題なんでしょうか。安全性と感染源の問題は別だ」(12・26、北海道中標津町での酪農関係者との意見交換会で)
◆「(肉骨粉を牛に与えてはいけないという行政指導が酪農家に十分行き届かなかったことについて)みんなの責任だと思っている」「『何もかも国に求め、国に従うということではなく、自分自身が自立して、情報もみずから集める自立自尊の生き方を農業者は持たないといけない』との話をよく聞く」(12・28、閣議後の記者会見で)

2002年
◆「(欧州委員会によるステータス評価の)中身を詳しく知らなかったのは、深く反省しなければならない。当時の説明は、かなり専門的だったので…」(1・24、衆院予算委員会)

 


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